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連載『大学インタビュー』 CBT円滑運営の秘訣を探る(1) 〜プレイスメントテスト採択のポイント〜

こんにちは。ELPAの岡田健志です。
ELPAでは多数の学校(大学・高専・高校)でテストを採択していただいています。教育現場で使われているテストはさまざまな種類があります。皆さんも実際に受けてこられたと思いますが、授業の内容を理解しているかどうかを確認するための「確認テスト」や「定期テスト」、受験校の出題傾向とレベルに則して受験者内での位置を測る「模擬テスト」などです。


インタビューの前に・・・

プレイスメントテストによる「クラス分け」は入試の多様化の中で採択が進んでいる

ELPAは『プレイスメントテスト』を多く提供しています。
大学入学時に受験することを想定したテストで、「クラス分け」に利用されます。もちろん、ELPAのテストは英語の能力測定全般に使っていただけるように設計していますので、達成度を測る「アチーブメントテスト」としてもご利用いただけますが、昨今は入試形態の多様化に伴い、プレイスメントテストの利用を希望される大学が増えてきています。入試科目に英語がない場合もあります。それでも学生のレベルにあった授業は提供されるべきで、そのためにクラス分けが授業開始前に行われる必要があります。

クラス分けをスムーズに行うには大学側の運営が鍵になる

今回から数回に渡り、ベストプラクティスの紹介として、東京都内にある中規模大学(X大学)の取り組みを取り上げます。担当者SさまへのELPAのインタビュー場面をなるべく読みやすいようにまとめました。

ただ、その前に、そもそもなぜX大学を取り上げようと思ったのかという意図を共有するべきでしょう。

一言で言うと、「学生を預かる大学側が、主体的に運営の段取りを見通し、ELPAをはじめとするパートナー企業・組織との連携を図っている」となるでしょうか。具体的なポイントはインタビューの中で触れるとして、もう少しプレイスメントテストの運営についてイメージを持っていただいた方が良いと思いますので、ELPA目線で解説いたします。

プレイスメントテストの運営で求められることと実施ハードル

プレイスメントテストに求められることとしては、以下の点があります。

(A)受験者の英語運用能力の序列が正しく出せること
(B)受験結果が数日で返却されること

Aについては、改めてnoteで記事にしたいと思います。
本日のテーマはBに関わるところです。

入試による合否判定→入学者確定→【プレイスメントテスト受験→結果提出】→結果によるクラス分け→学生への連絡→授業初日

このようなタイトなスケジュールの中で、大学の業務がスムーズに運ぶように、【プレイスメントテストの受験から結果提出】のELPAでの作業を最短化する必要があります。

しかし、ご存知の方も多くおられると思いますが、「採点」を行うにはいくつものハードルがあります。細かいことも書き出すとキリがないのですが、CBT(コンピュータベーステスティング)の場合、以下のようなものがあります。

・ELPAのテストシステムに準拠した受験番号の振り分け(大学)・・・桁数などシステムに応じた受験番号を、学生ごとに振り分けていただきます
・受験番号と受験者のリストのELPAへの提出(大学)・・・ELPAのフォーマットがあります
・受験番号リストのシステムへの登録(ELPA)
・受験すべき学生がちゃんと期日内に受けること(大学)
・受験者/未受験者の確定(ELPA)
・・・システムを閉じた後、未受験者を削除した受験者データだけを取り出します
・○×採点(ELPA)
・IRTに基づいたスコア算出(ELPA)
・個々の受験者のスコア速報値の提出(ELPA)
・大学ごとに指導者用スコアレポートの提出(ELPA)
・各大学のクラス設定の基準に基づいた「クラス分け」(大学)
・クラス分けに基づいた「履修登録」(大学)
・学生へのクラス通知(大学)

これらに一つでも不備があると、その後の作業が実施できず、遅延することになります。この点、X大学の運営には遅延が全くありませんでした。その点について、ELPAスタッフがインタビューをしていますので、ご覧ください。


X大学・S様へのインタビュー(1)

(1)ELPAのプレイスメントテストの採択の決め手は?

ELPAスタッフ

貴学では、およそ8年前から、ELPAのプレイスメントテストを実施していただいています。その採択に際しての決め手というものはありましたか?

X大学・Sさま

私の前任者の時代から、ずっとELPAのテストを使い、クラス分けにも利用しています。
「学生の経年変化を測ることができる」というところがメリットだと思っています。当時の担当者がプレイスメントテストを比較してELPAさんにお願いすることになったと引き継いでいます。
TOEICだと、本学の学生のレベルでは、そこまでバラつきが出ないので、ELPAのテストがフィットしているという点もあると思います。

ELPAスタッフ

TOEICでは測れないような、細やかなクラス分けができるという理由でELPAのテストを採択いただいている他大学さんもありますので、S様に同じご意見を聞かせていただいて嬉しいです。


(2)コロナ禍も終息した中、PBTに戻る可能性

ここでELPAの担当者から別の視点の質問をします。コロナ禍でPBT(紙のテスト)による一斉受験をやめてCBT(オンラインのコンピュータテスト)に移行がトレンド化しました。しかし、運用の簡便さということではPBTの一斉受験にも大きなメリットがあり、コロナ禍終息後はCBTからPBTへの移行を検討されている大学も多くあります。そのような事情を踏まえての質問です。


ELPAスタッフ

X大学様は、もともとはPBTでご実施いただいていました。コロナ禍を機にCBTに変更していただきました。今は逆にコロナが落ち着いてPBTに戻るような大学もあります。X大学の学内でそのような意見は出ていませんか?

X大学・Sさま

そのような意見は出てきていません。

日程的に行事が多くタイトなスケジュールの中で自宅に居る時間でも受験できることは大きなメリットだと考えています。今までPBTでやっていた時は受験者が大規模になるので、試験監督を他部署からも動員していました。そのようなことをしなくても、CBTで今のところ問題なく運営できていますので、PBTに戻そうという話はありませんね。


【インタビューの途中ですが「まとめ」です。】

ここまで、2つの質問についてのご返答を見ていただきました。いくつかのポイントがあったと思います。

受験者のレンジに合わせたプレイスメントテストが望ましい

測定する能力のレンジの幅が大きいテストは一見すると便利ですが、あらゆるレベルに対応するため、受験生の学力レベルが重なっている大学などでクラス分けに利用することは妥当ではない場合があります。

ELPAのように『プレイスメントテスト』だけでもいくつものバリエーションがあると、その大学の学生のレンジに応じたクラス分けに利用がしやすい場合もあります。

ELPAのテストは「経年変化」が可視化されやすい

ELPAのテストはIRT(項目反応理論)に基づいて尺度化されているので、「経年変化」を分析しやすいという特徴があります。これは、例えば2017年度から2024年度の入学者のスコアを比較するという意味での経年変化でもありますし、個々の学生が入学時点から毎年卒業するまでにどれだけ成長しているかを観るという意味での経年変化でもあります。ELPAの『プレイスメントテスト』は名称こそクラス分けテストのように見えますが、一般的な「評価テスト」であり、アチーブメントテストとしても使えます。

PBTが良いか、CBTが良いかという選択ではなく、実施・運営に合わせて選択する方がいい

X大学では、PBTのメリットを理解した上で、CBT運用について現時点で円滑に行えているということもわかりました。円滑な運営ができている場合、自然にできているので、アッサリと容易くできているように見えてしまいます。しかし、その裏では緻密な配慮やデザインがあると思います。

連載の第2回目では、その「運営」にどのようなポイントがあるのかについて聞いてみました。いよいよ、核心に迫っていきます。【連載・第1回 終】

→第2回noteはこちら https://note.com/elpa2003/n/n2ceca685b5fc