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今年も訪れつつある、玄関の呼び鈴を怖れる日々

 予告もなく玄関の呼び鈴がなった。

 「チリリン」、と短い呼び鈴ではあるが、心臓の動悸を速めるには十分である。その晩は来客の予定はなく、最近何かを注文した覚えもない。

 私は足音を忍ばせながら玄関に近付いた。のぞき窓から訪問者を確認するためである。

 果してドアの外には、10人程度のサッカーのユニフォームを身に纏った少年達が屯っている。

 私は当惑し、ドアのチェーンが掛かっていることを確認した。

 息を殺しながら数分待った。再び覗き穴からドアの外の様子を確認すると、彼らの姿は忽然と消えている。

 かなり時間が経ってから、ようやく謎が解けた。

 ハロウィンである。

 この季節、子供達は、各戸を廻り、お菓子、あるいはお金を求めている。

 ドアを開けなくて正解であった。生憎、お菓子の買い置きが無かったからである。通常は現金も置いていない。

 一軒家に住んでいた知り合いは、訪問をした子供達にお菓子をあげなかったために、外壁に卵を投げつけられた。そのため、その染み抜き工事に大枚をはたいたと、非常に憤慨していた。

 この季節には、街中にドラキュラ、骸骨、モンスターあるいはゴーストが溢れかえる。

 近所の小学校の木に白いテルテル坊主が多く吊るされていた。そう言えば最近雨が多いな、などと一人で納得していたが、近くに寄って観察すると、テルテル坊主は流血していた、すなわちこちらのテルテル坊主はゴーストを模倣しているものであった。

 昨晩は22時に、「チリリン」と呼び鈴が鳴った。22時にドアを開けて「Bus eller Godis (お菓子をくれなかったらいたずらするよ)」、という子供がドアの外に立って居たら、親切な大人でも不機嫌になる可能性もある。

 このように、迷惑な騒ぎが多いことも否めないが、この静かな国において、多少スリルを体験出来る季節でもある。

 何よりもハロウィンは、冬の到来を感じさせられる晩秋の行事でもある。

 念のためにお菓子を買いに行った。


目抜き通りの夜空にこのゴーストを見掛けたら、この季節の到来を感じる


仮装、パーティー専門ショップもショーウィンドウの装いを変える


全く関係ないが、ここ最近、日本でも歩きやすそうな靴を探している。ハイヒールにて満員電車で一時間以上も立っているのは難儀であるはずなので。ウェスタンブーツは流行廃りが無いので無難であるはず。結局、チェルシーブーツを購入したが私が履くと何故か雨靴にしか見えない


ストックホルムのほぼ中心


この日は、新しく出来た日本食レストランを物色するために中心まで出掛けた。鮪のタタキというものを注文したらこちらが提供された。黒い糯米の上にタタキが少しだけ、チリマヨネーズ、キャビア、何かの花で覆われていた。ストックホルムの寿司屋は、一人当たりの数が世界一と言われ、レベルもかなり高いのであるが、チリマヨネーズではなくオーセンティックな寿司を所望している人も居るはずなのであるが


ストックホルム中央駅から、私の住む島に帰る際は、数本ある橋のいずれかを渡らなければいけない。この晩はこの橋を通った


橋の下にはビリヤード・レストランが佇んでいる。数年間の夏、このレストランのテラス席に座って、友人の不倫に関わる悩み相談を受けていたことを想起した


運河をクルーズするボートも見えない、テラス席も閉まっている。冬と共に到来するものは静寂である。今日から冬時間に変更になった


ご訪問有難う御座いました。
ハロウィンは、スリリングであり、お菓子も値下げされるので、楽しい行事であるはずなのですが、その性格により諸処の問題点も掲げられております。ドアを開ける側、知らない戸を訪問する側、リスクは両方にあります。

こちらの日常を少しだけ紹介させて頂きました。夜間の写真が多くなってしまっておりますが、最近は残業も多く、外に出掛けられる時には日が暮れてしまっております。ちなみにこちらの今晩の気温は既に2度ですが、日本には過ごしやすい季節が到来したのではないでしょうか。

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