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おすすめ絵本

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古典的なロングセラー絵本が中心となりますが、これはと思う絵本だけをおすすめします。
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わたしのピンクをさがしに

わたしのピンクをさがしに

月刊『たくさんのふしぎ』は子どもたちが定期購読していた頃からのファン。
今月号は初めて自分のために買った。【以下、ネタバレあり】

幼かった頃、私のクレヨンは「ピンク色」ではなく「桃色」だったし、ピンクのランドセルや車はなかった。でもこの本によれば、明治27年にはすでに「ピンク」が「桃色」の意味で和英英和辞書に表記されているし、その3年後には絵の具に'pink' 表記が使われていたとわかる。

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きっと明日は

きっと明日は

被災地に想いをよせるイベントに先立ち、各自、届けたい絵本をアンケートで回答したのだが、私が手元からまず選んだのは、鈴木まもる『だんろのまえで』(教育画劇、2008年)だった。集計結果発表でこれが回答が多かった絵本の1冊として紹介された時は、「やっぱりそうでしょ、そうでしょ」と握手したい気分になった。最も多かったのは荒井良二さんの『あさになったので まどをあけますよ』で、この絵本は実際に被災地で活用

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祝10周年かもしれない🍎

祝10周年かもしれない🍎

りんごといえば、やはりこちらヨシタケシンスケさんの衝撃の絵本デビュー作🎉

哲学的な考察を想像力を駆使してユーモラスに展開してみせたこの絵本は、いまや世界各国で翻訳され愛されている。出版からもう10年?まだ10年? ヨシタケさんの絵本がない本棚なんて!(大昔こんなCMがありましたね…「○○○○を入れないコーヒーなんて」☕️😆)

大学の英語の教科書に、片足を引きずる鳩を見た場合に母が子に「かわ

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ねずみくんの場合

ねずみくんの場合

サルカニ気分を味わったあとに、このねずみくんを読むと心穏やかになります☺️

りんごの木を見上げている ねずみくん。【以下ネタバレあり】

ねずみくんは、木を脅すどころか、鳥に実を1つ取ってほしいと頼むことすらしません。たぶんできないのでしょう。ただ地面の上で、鳥のように飛べないか両手をバタつかせているだけです。

さるくん、ぞうくん、きりんくん、カンガルーさん、さいくんがやって来ても、ねずみくん

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さるかに再考

さるかに再考

絵本『かにむかし』の表紙はカラー刷りだが、本文と見返しは黒と朱の墨絵によるシンプルな色彩で描かれている。それにもかかわらず、迫力満点のダイナミックな筆致により、大人でも十分読み応えがある1冊だ。今回この昔話を🦀カニの気分で読み直してみた。(サルの気分はこちら🐵)

「早く芽を出せ 柿の種、出さぬと ハサミで ちょん切るぞ」は記憶していたが、何度も繰り返していたことに、まず驚いた🦀

このカニ

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各地でお祭りが再開して賑わっているので、久しぶりに「月刊たくさんのふしぎ」(福音館書店、2018年7月号)の『絵で読む子どもと祭り』を引っ張り出してみた。この絵本では、こどもが活躍するお祭りが取り上げられている。私の住む地域でも、お囃子は小学生を募って練習を重ねて本番に臨む。今年はとりわけ山車とともに練り歩く大人が多く、皆さん嬉しそうだった。(録音は今秋の祭囃子)

夏色絵本

夏色絵本

夏休みも残りわずか。この夏、こどもたちはどんな思い出を心に刻んだのだろう。

見返し一杯に広がる青空と入道雲。本文は虫取り網を持つ少年の「いってきまーす」で始まる。お目当ての虫を捕まえに谷まで走っていく少年の姿を追う構図が巧みで、そのダイナミックさに惹き込まれる。蝉の声、碧い海、カモメの白、黄緑色の田園、緑のカエル、牛小屋のにおい、神社の階段、蜻蛉、カワセミ、夕立 …… ゆたかな夏色とともに、その

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心象風景

心象風景

絵本との再会は、学生時代に友人と一緒に至光社・丸善共催の世界絵本作家原画展に出かけたことがきっかけだった。そこで買い求めたポスターを自室に貼って眺めているうちに、いつしかこれが自分の心象風景となっていった。

やがて家を出て数十年を経たとき、ふと、この自室の風景が頭をよぎった。そうだ、たしか谷内こうたさんの絵本だと思い出して探したところ、すぐに原作の絵本に辿り着いた。ポスターは絵本『なつのあさ』の

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戦争のあと

戦争のあと

第二次大戦後、ポーランドからカナダに移り住んだ祖母と「ぼく」との交流を描いた絵本。ジョーダン・スコットとシドニー・スミスによる絵本だけに、大きな期待とともに発売と同時に入手した。【以下ネタバレあり】

ところが、この冒頭の一文を読んだ途端、私はしばらくページをめくることができなくなった。

それは戦後の引き揚げにより、頼った親戚宅の納屋で暮らすことを余儀なくされた母の体験談を想起させた。幼い頃、母

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お化けとの遭遇

お化けとの遭遇

例年、夫の読経でおうち法要を営む我が家はお盆渋滞とは無縁 …… のはずが、うっかり野菜を切らして車を走らせ、いつもと異なる混雑に慌てて判断力を失った。渋滞を回避するつもりで咄嗟にハンドルを切った先が、よりによって霊園通り。田舎道でお盆渋滞にハマるとは!

怖がりだから恐い話は聞きたくないのに、子どもの頃、母に尋ねては何度も聞いた話を、ふと思い出した。それは曽祖母の体験談で、山の中で狸に化かされた

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花火の記憶

花火の記憶

蚊が苦手なので、夏よりも冬の花火のほうが落ち着いて眺められる。でも英国のそれは爆発地点が低すぎて、腰を抜かした幼い三男坊を支えながら見上げたので、腰が痛くなった。こんな自分が進んで花火大会に出向くことはまずないだけに、めずらしく出かけた多摩川の花火大会は、鮮明に記憶に残っている。それは教育実習で再会した同期に誘われてのプチ同窓会みたいなノリだった。同行者のひとりは鉄道オタクが高じてJRに就職し、中

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日本の夏  私の夏

日本の夏 私の夏

とにかく蚊に好かれている。若かりし頃、夏に木陰を生足で歩いたら、自分は30カ所近く刺されたのに、連れは1カ所しか刺されず涼しい顔をしていた。若い血ならともかく、今に至るも狙われるのは迷惑千万。昨今、飛蚊症により本物と偽物の区別もつかず、仕留められずに悔しいことこの上ない。いまや電撃ラケットを手にする暇もなく逃げられている始末だ。

鈴木のりたけさんの絵本『カ どこいった』は、巧妙に逃げまくる蚊との

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暑中お見舞い申し上げます

暑中お見舞い申し上げます

毎日、暑いですね… こちら、暑さ全開の絵本です☀️

【以下、ネタバレあり】
涼しさを求めて日陰に入るペンギン。でも、それはアザラシの影。アザラシだって暑いので、もっと大きな日陰を探してペンギンとアザラシが涼んでいると、それはカバの影。カバも暑いので、もっと大きな日陰を探してペンギン、アザラシ、カバが涼んでいると、それはゾウの影。ゾウも暑いので、みんなして涼しい場所を探し求め、海へと向かうお話。(

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海の日に

海の日に

Susy Lee の絵本 Wave の韓国語版は、英語版の翌年に出版されている。

字のない絵本だからどこの版でもよいのだけれど、作者の母国語版が手元にあるのは嬉しい。とはいえ、知人からこの絵本を贈られた当時、私はこのタイトルを読めず、ましてやハングルで入力することなど到底できなかった。コロナ禍を機にNHKラジオ講座でハングルをゆる~く学び始め、ようやく『波よ 遊ぼう』だと解読できるようになって感

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