見出し画像

読書記録:経験済みなキミと、 経験ゼロなオレが、 お付き合いする話。その5 (ファンタジア文庫) 著 長岡 マキ子

【伝えられない想いに、やきもきしながらも大人の階段を踏み出す】


【あらすじ】

手を繋いで、二人で歩いていく。
それだけで、胸がいっぱいになる。
この『道』がどこまでも続けばいいのに。
今回は高校生活のビッグなお楽しみ、修学旅行のシーズンが描かれる。

思い通りにならない人間関係、切ない思い。
そしてたくさんの笑顔を通り過ぎながら、自分の歩む『道』を見つけ始める愛すべき「#キミゼロ」キャラたち。

みんなちょっとずつ大人になっていく。
龍斗は、育ててくれた父と母に感謝しながら、月愛と大人の階段を登っていく。

あらすじ要約
ヒロイン、白河月愛のファッションコーデ

修学旅行を迎えて三者三様の恋模様を送る龍斗達は悩みながらも大人の階段を駆け上がる物語。


言ってしまえば、下世話な話になるのかもしれないが。
恋人同士というのは、付き合い始めてから、最後に行き着く先は、性行為という、二人の愛を形にする証に行き着く物である。
ありきたりで、なんの捻りもないかもしれないが。
最終的に行き着く場所はそこにしかない。
しかし、そのゴールに早く辿り着ければ良いという話ではない。

心が早熟したままで、そういった行為を経て、不幸なエンディングを迎えるカップルだっているし。
かといって、相手を大切にしすぎて、そういう衝動を抑え込んでいると。
相手からすると、そんなに自分は魅力がないのかと勘違いさせてしまう要因にもなる。

だから、そのゴールに辿り着くスピードも歩幅も、カップルの数だけ、皆それぞれがバラバラで。
きっと、正解という物がない。
ただ、相手とそういう行為がしたいと強く願う事は、何にも代えがたい、分かりやすい愛情表現でもある。

恋人になる上で切っても切り離せない性の問題が浮上してギクシャクする龍斗と月愛。
相手を大切にしたいと思う程に恋に臆病になる。
そんな悩みを抱えているのは彼らだけでは無かった。
祐輔に複雑な想いが燻る朱璃。
柊吾への気持ちが蟠る笑流。
笑流に横恋慕する蓮。
各々が一筋縄では行かぬ恋の障壁に煩悶とする。
ただ好き合って、一緒にいたいだけなのに、付き合うとは、こんなに手順を踏まなければならなくて面倒臭い物なのか。

青春真っ只中で告げられる柊吾の二浪。
今後、二人の関係をどうするかを問われる笑流。
そうやって思い悩む彼女を、なんとか自分の物にしたいと近付く蓮。

 柊吾と笑流を引き合わせる為に、笑流の代わりとして女子部屋に泊まる事になる龍斗。
そこで、月愛と情熱的なキスを交わし合う。
自分を抑えていた理性のタガがついに外れる。
高校生活最後が間近である事や、京都や奈良への修学旅行によって、想いを近付ける事を躊躇わなくなった龍斗。
皆で集まって、姦しくてんやわんやしながら、観光地を巡りながら。
龍斗と月愛の周りは、幾つもの恋が新しく芽吹いていき。
その華やかな裏側で一つの恋が、始まる事さえも叶わずに散っていく。

自らの17歳の誕生日をきっかけに、群青劇が大きく動き出す。
それぞれの恋模様も、十人十色な輝きを宿す。
イッチーと谷山さんは、谷山さんの自覚的なツンデレが激しすぎて距離は縮まなかった。
ニッシーと笑流は、柊吾が受験に失敗したけれど、笑流が修学旅行の一件もあってよりくっついた事で、ニッシーは告げる間もなく失恋した形になる。

龍斗を意識し過ぎて目も合わせられない月愛。
心が裏返って素直になれない朱璃。
その天の邪鬼な行動を嫌悪するイッチー。
笑流と柊吾がイチャイチャするのが、面白くないニッシー。

どう足掻いても、自分が二人の間に割って入る事など出来るはずがない。
しかし、その辛い失恋が、少年の向こう見ずな心を、苦みの伴った大人の心へと成長させていく。

そして、メインの龍斗と月愛は修学旅行の夜や、誕生日の事を通じて、より関係性が増していく。
これまでは、付き合うまでの過程が描かれてきた。
これからは、付き合ってからその先が本番である。
競う合うように前進しながら、大切な人と共に生きた果てに、性愛という男女関係を語る上で、切っては切り離せない難題が立ち塞がる。

カップリングが成立した時点で、相手と性行為をするか、しないのかは相手との将来を見越した上で、刹那的な快楽で終わらない物にしたい。
健全な思春期時代を送る身の上として、性欲に対する漠然とした興味と、それをさらけ出してしまう事を恥じる葛藤がまざまざと描かれる。

男子だけではない、女子も当然ムラムラする時はある。
しかし、そのリアルな心情を、包み隠さずにパートナーに伝えてみる事が何よりも大切であり。
きっとそれが恋するという事である。
この先に、何が待ってるのか。どんな景色が見えるのか。
今はそれが分からない。
だからこそ、それを知りたいから、その壁をよじ登るしかない。
よじ登って苦しみながらも、それが恋をするという一つの形であるから。

恋は自分の思うようには動かせない。
パートナーの気持ちをちゃんと汲んで、二人で歩幅を合わせて進むしかないから。
その龍斗の吐き出した気持ちに応えた月愛。
周りがどんどんと夢を叶えていく中で、自分が何になりたいか分からなかった彼女だったが。
ようやく、自分の未来の方向性を見つめられるようになった。
見方によっては、万華鏡のように色を変える恋が交わりながら、生まれてしまった熱を大切なパートナーと深め合っていく。
龍斗の誕生日を祝う為に、バイトで得たお金で、きちんとプレゼントを準備した月愛。
そして、二人の関係性を加速度的に上げていく、とっておきの贈り物を準備していた。
龍斗と月愛は大人への階段を登って、一線を越えてしまった暁に。
そこからどんな未来設計図を伴って、先行きの見えない道を歩いていくのか。

恋愛に対してそれぞれの理想を掲げる彼らは、想いを深める中で、どのように磨かれていくのだろうか?








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?