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読書記録:経験済みなキミと、 経験ゼロなオレが、 お付き合いする話。 (ファンタジア文庫) 著 長岡 マキ子

【経験豊富な君の裏の顔は、純粋無垢な優しい心】


【あらすじ】
「す、好きです!」
「えっ? ススキです!?」

陰キャ気味な高校生、加島龍斗は、スクールカースト最上位であり、憧れの陽キャ美少女、白河月愛に罰ゲームきっかけで告白する事になった。

玉砕覚悟で挑んだものの、予想に反して、「え、だって今、わたしフリーだし」という理由で付き合う事になった二人。
二人の恋愛は普通とどこかズレていた。
龍斗はイケメンサッカー部員に告白される月愛をストーカーして、盗み聞きしてみたり。
月愛は付き合ったばかりの龍斗を当たり前のように自室に連れ込んでみたり。
付き合う友達も遊びも、何もかも違う2人だが、日々そのギャップに驚いて、お互いの価値観を受け入れ合って、心を通わせ始める。

あらすじ要約

自称陰キャな少年がスクールカースト上位のギャルに告白する事で心を通わして行く物語。 


昨今のラブコメのヒロインは、どれだけ奇抜な性格をしていても、男性経験は皆無な事がほとんどである。
憧れのヒロインには、清廉潔白でいて欲しいファンの無意識な願望が投影されている。
しかし、この物語のヒロイン、月愛は男性をとっかえひっかえ付き合って、簡単に身体を許す、魔性のヒロインとして描かれる。

誰にでも優しくて健気な月愛は、その見た目に反して、男子諸君を引き寄せる魅惑があった。
様々な男子達を、取っ換え引っ返えて、色っぽい噂が後を絶たない彼女だったが、龍斗にとっては太陽のような存在だった。
羨望と憧憬の眼差しで遠くから見つめる日々だったが、友人達の罰ゲームによって告白する事になる。太陽が明るく輝く程に、影は色濃く暗くなる事を自覚させながらも。
ギャルの常識と陰キャの持つ常識の隔たりを越えた、根っこの部分で互いの持つ優しい人間性に惹かれていく二人。
付き合う友達も興じる遊びも何もかも違う二人だったが、その違いこそが、ありきたりな日常に刺激を与える清涼剤となっていく。

月愛はけして軽い女ではなかった。
男性関係がコロコロと変わったのも、月愛のお目に叶う、見た目だけではなく、中身がちゃんとした男がいなかっただけ。
彼女の献身的な性格が災いとなって、悪い男が引き寄せられただけであった。
彼女を都合の良い女として利用する、クズな男達が近付いてきただけだった。
肉体的な経験は豊富であれど、心からの恋愛をした事がない彼女は、純粋無垢でウブな女の子だった。
龍斗は、素敵な月愛に見合う男になろうと、彼女の趣味嗜好を徹底的にリサーチして。
自分の守備範囲を広げる努力をしていく。
好きな人が好きな物を自分も理解したいから。
月愛を裏切ってきた今までの元カレのようには、自分は絶対にならない。
月愛の事が大切だからこそ、簡単には手を出さないし。
彼女に対して誠実であろうと、自分を真っ直ぐに変えていく。
経験豊富だけど、恋愛は最終的に行き着く果ては、肉体関係だと勘違いしている月愛の価値観をやんわりと指摘して、恋愛における、好きという感情の意味を教えていく。
龍斗は、月愛に肉体的に誘われても、頑なに断って貞操を守った後で、あとでもったいなかったと悶々と後悔するさまは、年相応の男子高校生らしい欲望も垣間見られて、そういった未成熟な弱さも好感が持てる。
そういった行為は、お互いをもっとよく知ってからするべきであるからこそ。
彼女の名誉と誇りを守る為なら、他人に何を言われても、何を思われても、絶対に月愛を守ってみせると覚悟を決める龍斗。
そうやって、駄目で情けない自分が相手と繋がっていく為に、オーバーラップして、愛を積み上げていく姿こそが、何よりも尊いのだろう。

上辺だけの色恋しか知らない少女と、まともな恋愛などした事もない少年が些細なきっかけを通じて、「愛する事、愛される事」とは何かを少しずつ知っていく。
月愛には、人として大切な事を思い出して欲しいし、自分をもっと大切にして欲しいから。 
今までのろくでもない恋愛経験は、僕が忘れさせてあげるからと。
未経験の自分のバイタリティを使って、月愛にたくさんの初めてを与えてあげる。
お互いの違う日常を一つに重ね合わせ、学校や私生活から、相手を深く知る事で、いつの間にか傷付いてしまっていた心を癒やしていく。

徐々に月愛の心からの素朴な笑顔を取り戻す中で、彼女の姉妹であり、龍斗の過去にトラウマを植え付けた海愛が、良からぬ企みを抱えながら、龍斗に近付いてくる。
龍斗は、復讐を果たそうとする海愛から、初心で優しい心を持つ月愛を守れるのか?   

そして、月愛と龍斗は純粋無垢な心から如何にして、本物の男女関係を築いてゆけるのだろうか?









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