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君と僕の、終わりから始まった物語
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2023年8月の記事一覧

そのピンク色の花弁が崩れ落ちるまで

そのピンク色の花弁が崩れ落ちるまで

君が立ち止まった
花屋の店頭には
あふれるように
ライラックの切り花

欲しいの?

僕の問いかけに
微笑んで首をふる

綺麗と思っただけ

冬のさなか
僕たちは
春を探し求めるように
歩き続けた

積もる雪を避けて
南に南に

そして雪を求めて
また北へ

巨大なクリスマスツリー

電飾で飾られた可愛い家

淡い影のようなクラゲのいる水族館

年末の人混みに隠れて
僕たちは束の間の
旅を楽しんで

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暗緑色の夜はすべてを飲みこみ朝を迎える

暗緑色の夜はすべてを飲みこみ朝を迎える

もう冬がくる

君は白のダッフルコートを着て
僕の隣に寄り添って歩く

似合うね

僕の言葉に
はにかむように
頬を染めた

白いコートに
白いスカート

君がこの旅路で
僕にねだったものは
そのふたつだけ

あの夜

なにもかも
つるばみで
染められた
そんな夜

抱き合う僕たちに
向けられた
まぶしい光

あんたたち
そこで、なにをしてるの

季節外れの萌葱色を
纏った女が呆然と
僕たちを見て

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墨色に染まった夜の果て

墨色に染まった夜の果て

闇に沈んだ
公園の水道で
僕はずっと手を洗う

母のかおりが残っている
母の血の色が離れない

錆びたにおいの水で
袖口が濡れることなど
気にせずに洗い続けた

ここにいたんですね

背後から囁かれ
僕は文字通り
飛び上がった

墨色の夜に白いワンピース
そこだけ火を灯したようだ

どうしたんですか?

君はまっすぐ僕に近づいてくる

来てはだめだ

僕は口早に言う

君は戸惑ったように
僕を見つ

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終わらない階段は狂気をおびた紫色に染まる

終わらない階段は狂気をおびた紫色に染まる

寝たの?

母はいきなり切り出した

電話もLINEも無視し続ける
一人息子に業を煮やして
弁護士と一緒
会社に乗り込まれた
僕はその日実家に帰った

紫紺の着物姿の母は
僕の生涯見た中で
一番醜い顔をしていた

あんな子供を引き取って

母は吐き捨てる

貧乏人の人殺しの
娘を弄んで
それでお前の気が晴れるのかしら

僕はくちびるを噛みしめた

母の口から君を語られるのは
君に泥を塗り込まれてい

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黄色のカナリヤが金色の空に羽ばたいていく

黄色のカナリヤが金色の空に羽ばたいていく

きのう、納骨をすませました

紺サージの制服の君は
感情のこもらない声で言った

膝の上に置いた
生成り色のハンカチに
目を落としてから
僕を見た

ありがとうございました

拘置所で亡くなった
君のおとうさんを
迎えに行った時の
ことをいっているのだろうか

みんなに責められて辛かった

そんな言い訳をした
君のおかあさんが
戻ってきた時
すでに君のお父さんは
荼毘にふされていた

父の形見なん

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