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‟人生上がっちゃった男”を落とすノウハウ映画『Two Weeks Notice』を“頑固で不器用な曲げられない女たち”に観て欲しい。

“Old money”という言葉をご存じだろうか。

家系何代にも続くお金持ちで、家柄が良く、
子息は英才教育で育てられ、いわゆる御曹司として育つ。

一代で成り上がった"New money"と違う点は、往々にしてお金の使い方の品の良さ、
遊んでいるが落ち着いていて、浮世離れしているが素直で良い奴が多いところだ。

ギスギス感がない。

10代に葛藤があったにせよ、社会に出てからは自分のルーツには歯向かわず、生来背負っているものと上手に付き合っている。 

社会的な地位は絶対的に与えられ、話してみると意外に普通で気さくでスマートな彼らは、世間的にも勝ち組で人気者。

結婚したい女子に相当モテる。

東京で暮らしていると偶然にそういう男と出会うが、20代後半の彼らは今が遊び盛りであるため、そろそろ結婚して子どもを持ちたい同年代女子とは人生のタイミングが圧倒的に合わない。

彼らはどんな人を選び、惹かれるのか?
いつ結婚したいと思うのか?

それを見せてくれる映画が2002年公開、

サンドラ・ブロックとヒュー・グラント共演のロマンティック・コメディ
Two weeks notice』だ。

あらすじ
ハーバード卒の社会派弁護士ルーシーは、幼いころから頑固で正義感が強く、法律家の両親に恥じないよう信念と理想を掲げて社会奉仕活動に専念してきた。

伝統的建造物を破壊して新しく高層ビルを開発する大手不動産企業やデベロッパーに抗議文を送り付け、解体現場にヨガマットを敷いて作業を妨害する。

お金や名声に興味はなく、慈善活動に同じく関心のある彼氏とはお互い戦友のように張り合い、すれ違う。

そんな中、業界最大手の不動産会社ウェイド社の社長、ジョージに公民館の取り壊しへの反対を直談判に行くと、顧問弁護士にスカウトされ、ルーシーはウェイド社で働き始める。

潤沢な資金とコネクションを使えるこれ以上ない環境でビジネスパートナーとして才能を発揮するルーシーは、ウェイド社の慈善事業に、そしてジョージにとっても欠かせない存在になっていく。
 
・適役すぎるキャスティング
堅物で正義感が強くて感情を伝えるには不器用な役柄やらせたらサンドラ・ブロックの右に出る者はいない。

彼女の堅い表情や歩き方、目線の送り方が役柄に面白さと説得力を与えている。

そして、優柔不断でGQマガジンの表紙を飾るほどの色男で、美女を見れば新入社員だろうが自分のアシスタントだろうが口説かずにはいられないダメ男をやらせたら、ヒュー・グラントに勝る俳優はいない。

ほぼ本人役。

おそらく実生活ではお互いの利害が一致しなくて絶対に仲悪いと思います。
 
・展開の速さ!キレが良くてテンポが良い。
ハリウッド映画で好きなのは「3週間後」とか「6か月後」とか、時間の経過をテロップひとつで片付けるあの無責任さと軽快さ。

時間と共に変化するふたりの関係性と、上場企業の顧問弁護士をして収入も増え容姿も生活環境も変わっていくルーシーの姿が、『プラダを着た悪魔』さながらの変貌ぶりで、ロマンティック・コメディ特有のメイク・オーバーシーンが存分に楽しめる。
 
・音楽
ハーバード卒弁護士と不動産会社の社長。

ジョージに至っては幼少期ニクソン元大統領と一緒に野球観戦をするようなセレブぶり。

ニューヨークの中でもかなりハイソな階級の話なのだが、それを感じさせないのは音楽の力だと思う。

喧嘩しててもシリアスさが緩和されるようなブルースが流れ、スタイリッシュにまとまる。

各シーンにピッタリの小気味よい音楽が『オーシャンズ11』的だ。

ラブコメでよく使われるださいポップソングが使われていないってだけで音楽を担当したジョン・パウエルのセンスがうかがえる。
 
・セリフ
これは観てもらうしかない。

ひとつ言えるのは『山猫風プレッツェル🥨』

脱帽である。
 
 ・信念を死んでも曲げるな
信条を守り徹底的に戦うルースと、それを叶える権力を持つジョージはあくまでも利害関係が一致したビジネスパートナーなのだ。

全てに答えを持っている女と、全部決めて欲しい男。結婚で失敗しているジョージは、自分の好みの女性は恋愛感情はあってもそれ以上にはないと気付く。

ルーシーは“頑固で不器用な曲げられない女”なのだが、対立することを恐れず、はっきりと自分の望みを表現できる(恋愛においては別として)。

周りと良い関係を築くため、あらゆる人の期待や要望に応えてきたジョージにとって信念を貫くのは最も難しいことだ(恋愛においては別として)。

このまま彼の金や権力目当てで寄って来る女と適度な距離を保ちながら遊び続けるのか。

それとも自分を高め鼓舞してくれる芯のある女性と人生を築くのか。

40代を目前としたジョージは節目を迎えている。
 
優れた政治家には優れたパートナーがいるということは欧米では当然だ。

ミシェル・オバマやエレノア・ルーズベルトがその代表である。

競争に勝ち権力を持つことが目的と化し、個人的な信念を曲げてまでも成果を求められるような世界では、ルーシーのような女性は目を覚ましてくれる稀な存在なのだから。

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