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【Playlist/エッセイ】真夏のカフェ作業をイケイケに

作業用プレイリスト第二弾ということで、今回はイケイケなチルアウトナンバーを集めてお届け。エッセイは、こないだのホカンスで読んだ本と、夏の人間観察について。よろよろ〜

イチオシナンバーはこれなのよ

Luv U - V. Cartier

間奏のサックスがとんでもなくかっこいい!ついノッてしまうちょうど良いリズム感。これは夏の夕暮れなどにアイス片手に聴きたいですな

Sun Moon - Cabu, Young Franco

Young Francoの"Don't you want me"という曲がすごく好きで夏になると毎年聴いてるんですが、彼のfeat.が入るとなんでもかっこよく、爽やかに仕上がるのが不思議。今年もお世話になりますフランコ様!

ちなみに作業用プレイリスト第一弾はこちらからどうぞ▼

真夏のカフェ作業をイケイケに

本嫌いが本好きになる

大学で英文学科に所属していながら、本が嫌いで一切本を読まずに論文を書き上げ卒業した私。本を読まなくても論文は書ける、という良い例となったことだろう。思い返すと、実家のすぐそばに立派な図書館があって、幼い頃は図書館に入り浸っていたはずなのだが。

社会人になっても忙しさにかまけて読書など全く興味はなかったのだが、デジタルの仕事をするようになってから、本に対する考え方が大きく変わった。重いから良い。ページを捲れるから良い。そして何より作家の思いを物理的に保有できるから良い。本は、ロマンチックなのだ。デジタルで溢れる時代に、あえてアナログに戻って紙の本を楽しむ時間が、私に良いバランスを与えてくれている。

カフェのざわつきは、読書に適している。コロナのせいか大きな声でお喋りする客はいなくなり、さりげなく流れる音楽と、注文をとる声、各席で繰り広げられるひそひそ話がカフェをちょうどよくざわつかせている。注意して聞く必要のない音だからこそ、本の内容に集中できるのだ。

さてここからは、先日の弾丸集中泊で読んだ本を感想とともにご紹介。興味があるかどうかは別として、参考までに:
鬼の計画編はこちら▼

数々の受難を乗り越えた弾丸集中泊の記録はこちら▼

ダニと蚊に感動する夏

集英社のナツイチキャンペーンは、ちょっと手に取ってみようかしらと思える短編小説やエッセイが多い。そして、内容が濃くて面白いのだ。ぜひ若い世代、特に学生諸君に読んでもらいたい。

世界を、こんなふうに見てごらん - 日高敏隆

今年購入して良かった本(私基準)でダントツ一位となった日高先生のこちらの本。表紙もまた可愛いんだわあ。動物行動学者でありながら、当時タブー視されていた生き物の「なぜ」にこだわった変わった先生なのだが、だからこそ彼の視点が面白い。世界を、物事を、こんな風に見れるのかという発見を、章を追うたびにくれた本は初めてだ。

特にダニや蚊など節足動物に対するお話が非常に面白かった。彼らは身体の構造上、食道が頭の中を通るため、固形物を餌として生きることができない。固形物を食べると脳が圧迫されてしまうからだ。結果的に彼らは液体を餌とし、液体の中でも栄養価の高い血液や体液に辿り着いたのだという。蚊に刺されるたびにイラッとしていたが、そういう理由ならば少しは良かろうぞという不思議な気持ちになってくる。

ダニはもっと面白く、彼らには目がない。皮膚に備わった光の感覚で枝に登り、温血動物の酢酸の香りを嗅ぎつけて落下する。温かいと分かったら、体毛が少ない箇所を見つけて体液を吸うのだ。だから彼らの世界は光・温度・香り・触感だけでできている。環境というのは彼らの持つ世界の重なりでできているという考え方が、とても新鮮だった。洒落たカフェで、ダニと蚊にたいそう感動しながらコーヒーを啜るという、なんともアンバランスな体験をした。

先生の面白いところは、学者でありながら、データでは説明できない事象についてかなり前から気付いていた点である。進化論の中においても、全く繋がらない爆発的な誕生というものがあって、これらをどうロジカルに説明しようにも難しい。唯物論に傾向しがちな学者が、こういった視点をあの時代に持つこと自体、かなり異端なように思う。先生は、それぞれの生物が感覚知覚で作り出した世界のことを「イリュージョン(幻想)」とし、我々人間の生きる世界や人間自体にもいい加減な部分があって当然だと言う。個々が持つ世界の多様性と複雑性に、いい加減という感覚が加わることで、正しいと信じられている物事の考え方に、余白と余裕が生まれる気がする。先生はその余白と余裕を楽しみ、その中に可能性を感じていたのではないだろうか。

学者の書いた本を面白いと思って読んだことはあまりなかったが、この本は老若男女問わず誰が読んでも、こういう物の見方があるのねという気付きを与えてくれる。信じる信じないは読者次第だが、視野を広げるという意味でこういった本は非常に役立つと私は思う。自分と異なる意見にぶち当たった時の受け入れ体制は、自分の中の視野の広さにかかっているからだ。先生の顔写真を見て、やけに幸が薄そうな顔だなと思ってしまったことを、心から反省したい。

集英社の星

集英社の星は、紛れもなくさくらももこ先生である。ナツイチキャンペーンで彼女を取り上げていなかったら文句を言っていただろう。

さるのこしかけ - さくらももこ

さくら先生の洞察力はピカイチだと、学生の頃から思っていた。特にエッセイでは、大したことのない日常のやり取りを独特の視点で取り上げ、美化せず語ることで結果的に大変面白い話に仕上がっている。エッセイを読んで声を上げて笑ったのは、後にも先にもさくら先生だけであろう。

「さるのこしかけ」には、こう言ったら失礼だが、先生のエッセイの中でも割と真面目な話がいくつか入っている。「いさお君がいた日々」は先生の心の大切な部分を突いた、特殊学級生いさお君の話である。小学生だった先生に、大きな衝撃と感動を与えたいさお君。先生はきっと、彼の唯一無二の絶対的存在感に魅せられていたのだと思う。いさお君の描いた絵を見て、その尊さを愛しく思い、わんわん泣く先生を思って私も泣きそうになった。そういえば昔、特殊学級にいた彼は、今何をして何を見ているだろうか。読み終えて私は思った。色眼鏡をかけずに、純粋に美しいものに感動して、強く生きていってほしいと。

「実家に帰る」は嫁いだ女性ならではの、娘として帰る家が無くなる感覚を描いた話である。結婚式でも泣かなかった母が、久々に帰省した娘を見送る時に泣く場面を読んで、込み上げるものがあった。実家がもう自分の帰る場所ではないという淋しさは、一生拭えないものなのかもしれない。先生の母親描写は笑いだけではなく、どこかやはり慕う気持ちをうかがわせる。短いが、笑いあり涙ありで、心から読んで良かったと思える話であった。

夏の人間観察

ここからは、前回の弾丸集中泊にて観察した人間たちについて、簡単にお話ししたいと思う。人間観察は意図的に行うものではないが、前から歩いてくる人を見て、あれ意外とO脚だななどと思ってしまうのだから、観察癖は割とある方なのだろう。

パピーと呼ばれた男

カフェで読書をするときは、イヤフォンをせず、カフェの雑多な音を楽しむ。重要な音は何一つ無い。だからこそ読書に集中できる。が、さすがに隣で繰り広げられる会話は聞こえるのだ。

子連れの若い夫婦であった。外から来たのだろう、夫は汗を拭いながらソファ席に座る。子はまだ言葉を話せず、妻の腕の中でフゴフゴ言っている。そのフゴフゴが徐々に大きくなり、カフェに響き始める。ここで妻が子をなだめようと話しかける。「パピーが美味しいの買ってきますよー」

パピーと呼ばれた男、すなわち夫は、子を通して受けた間接的なオーダーに気付かず、フゥフゥ言いながら相変わらず汗を拭っている。パピーは恐ろしく気が利かない。妻が鋭い視線を向け、「注文お願いできる?」と聞く。パピーは「おぉ」という鈍い返事と共に立ち上がる。ずんぐりむっくりの身体に、パピーというあだ名が非常に似合わない。だが彼の行動を観察してみると、なるほどパピーだなと納得できる部分が多い。注文もたどたどしく、後ろを振り返って妻の合図を確認したりなど、立ち上がる前に確認しておけという内容を今更?というタイミングで確認したりするのだ。妻のため息が聞こえ、奥さんファイト…と心の中で呟く。なかなか成長が遅そうだが、パピーが成犬となる日は来るのだろうか。

女王蜂

韓国料理屋で隣のBOX席に座った家族は、少し様子がおかしかった。18時と夕食にはやや早い時間帯に、双子の女の子を連れたカップルが入店した。母親の子どもであることは会話からすぐ分かった。男性は母親の腰に手を回したりと、スキンシップが多い。子どもの前でも躊躇うことなく行われる愛情表現。しかし男性と子どもの間に会話は無い。

子どもは18時というのに既に夕食を済ませたようで、絶えずお菓子をせがんでいる。母親は仕方なくお菓子を与え、iPadでアニメを観させる。ここでカップルは酒を頼み、子どもの前で飲み会を始める。「私ね、すごい出会えて良かったなって思ってるの、ほんとだよ」という母親の発言でなんとなく状況が読めた。男性はちょっと気まずそうに「次ってありますかね」などと答える。

そういうことなのだ。夫ではない。デートの相手。しかも次があるか分からない不確定な相手。母親は仕事の愚痴などを挟めながら、男性がいてよかったことを何度も伝える。男性は表情こそ見えないが、さして喜んでいるような明るい返答はない。ただ母親の愚痴に対して、ありとあらゆる知識を動員して解決策を提案している。その姿は、女王蜂に使える僕のようで、少し痛々しかった。子どもの記憶には、彼とアニメのどちらが残るのだろうか。

カフェ×音楽×宿泊

カフェで何を聴くか。私のようにカフェの音そのものを楽しむ人間もいれば、音楽を聴く人もいるだろう。今回のプレイリストはカフェ用であり、作業用でもある。実際このプレイリストは自分の作業用に作ったものでもあるから、間違いなく作業向きなのである。カフェの穏やかなBGMでは眠くて作業にならん、という方はぜひこのプレイリストを試していただきたい。なぜなら眠くならないように組んでいるからである。

弾丸集中泊は続く。既に秋の予定が決まっているが、その前にまた一人で出かけるのも良さそうだ。諭吉が悲鳴を上げているが、そういう困難な時期を経て、関係性を深めていくものであろう。何を言っているのか分からなくなってきたので、終わりたいと思う。次回の弾丸集中泊にも期待をしていただきたい。では。

DropStudio.

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