愛繕夢久

好きな事を好きに書いてきます。😊🍀

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最近の記事

セツ子の日記 7月22日

「雨女」#文披31題  「そんなん、めいしんやんか。きにせんとおいでぇなぁ。てんきよほうもはれやってゆうてるから、だいじょうぶや」  今夜と明日の夜は、この町内の盆踊りでセツ子が一緒に行こうと誘っているのは友達の恵子ちゃん。小学生は保護者同伴なのでお母さんと一緒に行かなければならないのだが、そのお母さんが行かないと言っている。訳を聞くと恵子ちゃんのお母さんは『雨女』なのだそうだ。  家に帰って母にその話をすると、恵子ちゃんだけ誘って行こうという。恵子ちゃんも私らと一緒にいれ

    • セツ子の日記 7月21日

      「自由研究」#文披31題  「ケンちゃん、げんきかー。チャコちゃんもげんきかー。ほーら、ごはんだよ。おいしいかい? そーかそーか、いっぱいおたべ」  夏休みの宿題『メダカのかんさつ日記』の為に夏休み前から買いだしたメダカ二匹。小学校に上がる前は何でも直ぐに飽きて放り出してしまっていたが小学生になったからか、それとも相手が命あるメダカだからなのか。セツ子は一日も欠かさず餌をやり汚れてきたら水を替えている。  買ってきた直ぐに一匹は死んでしまった。セツ子が学校から帰る前に母は新

      • セツ子の日記 7月20日

        「摩天楼」 #文披31題  「わーい。おまつりや、おまつりや、えんにちやー。うれしーなっ、たのしーなっ、はよこんかな、あした」  明日は京都の東寺に父が仕事で出かける。その付添いで母とセツ子も一緒に行く。公私混同とも取れなくないが昔はそれほどうるさくなかったし上司も認めている同行なので、ここは平に、お許しを。  ということなので、交通費を請求しないと決めた父はマイカーでお爺さんとお婆さんも連れて行く。まぁ、ちょっとした家族サービスである。普段は何かと忙しい父が家族を連れて何

        • セツ子の日記 7月19日

          「トマト」#文披31題  「……ハァー……」  いつも始まりはセツ子の台詞からなのですが今日は『……ハァー……』としか、言わなかったのです。これは手抜きではありません、それしか言わなかったのです。  なぜ、「……ハァー……」なのかと言いますと、セツ子の目の前にはトマトが一切れおいてあります。時間を少し戻しますので、ご覧ください。  いつもの夕食を親子三人でテレビを見ながら食べておりました。なんやかんやと話ながら食べておりましたがふと、話が今日のおかずのトマトの事になりました

        セツ子の日記 7月22日

          セツ子の日記 7月18日

          「蚊取り線香」 #文披31題  「ほんま、ほんま、ほんまにでけたん。うっ、うっ、うれしぃ。うれしぃ。うっ、うっ、うれしぃのになんでなくんやろ」  その後、セツ子は泣きながら喜んで遅くまでほたえながら寝た。父母もお婆さんもセツ子の喜びの大きさを知っているので誰も叱る事はしなかった。喜び回って疲れはててセツ子は眠ってしまった。こんなに騒いだんは生まれて初めてではないかと思うくらいセツ子は騒いだ。今は寝息を立てて寝ている。父も嬉しくて晩酌が長くなっている。後から来たお爺さんとまだ

          セツ子の日記 7月18日

          セツ子の日記 7月17日

          「半年」#文披31題  「えーっお母ちゃん、ぐあいわるいん。おなかいたいんか? きもちわるいんか?」  セツ子が学校から帰ってきたら家で待っていたんはお婆ちゃんやった。お母ちゃんはお医者さんへ行ったという。どこのお医者さんへ行ったのかセツ子はお婆ちゃんに聞いたが、お婆ちゃんは知らんと言う。だが、大したこと無いから心配せんでいいとも言った。  セツ子はそんなこと言われても心配で心配でしょうがない。おやつも食べんと宿題もせんと黙って待っとった。  しばらくして、ただいまとお母ち

          セツ子の日記 7月17日

          セツ子の日記 7月16日

          「窓越しの」 #文披31題  「あんなぁ、お母ちゃん。セツ子な、アイスクリームがたべたいねん」  セツ子が熱を出して寝込んだ。琵琶湖に遊びに行って帰った晩から熱が出た。はしゃぎすぎて疲れが出たのと宴会場が思いのほか冷房が効いていたのが原因であろう。医者に行ったら風邪だと言われた。普通、風邪だと暖かくして寝るものだが今は夏で普通に暑い。布団を掛ければ暑いしなにも掛けないと寒いらしい。父母は考えた挙げ句に自分達の寝室にセツ子を寝かせ、エアコンで部屋を冷やし、布団を掛けた。セツ子

          セツ子の日記 7月16日

          セツ子の日記 7月15日

          「岬」#文披31題  「わーっ、やっぱりおっきいなぁ。びわこはにっぽんいちおっきいみずうみなんやろ。たかいとこからやと、ようみえるわー」  展望台からの景色は格別です。今日は『びわ湖タワー』に家族でやって来ました。琵琶湖大橋のたもとで観覧車もジェットコースターもあります。セツ子はジェットコースターは怖くて乗れませんが、遊園地にはこれがないと遊園地とはいえないなんて拘りがあるようです。だから、乗らないけど見るのは大好きなんだそうです。  コーヒーカップなんかの高さの無い乗り物

          セツ子の日記 7月15日

          セツ子の日記 7月14日

          「さやかな」 #文披31題  「なぁなぁ、お婆ちゃん。おぶつだんて、ほとけさまがいてはるんか? ほかにもだれかいてるんか?」  近所の父の実家に来ているセツ子はお婆さんがお祈りを終えた仏壇の中を覗き込んでそう言った。この家の仏壇の中には正面に仏様、両脇にお坊さんの絵が掛けてある。そして板に字の書いてある物が幾つか置いてある。  お婆さんは難しい事を言ってもセツ子にはまだ分からないだろうと思い、この中には仏様とお坊さんとご先祖様がいてはるんよ。ご先祖様ってわかるか。お爺ちゃん

          セツ子の日記 7月14日

          セツ子の日記 7月13日

          「定規」#文披31題  「お母ちゃん、こうこくどこにあるん? うらにえぇかきたいねん。うらにかけるやつあるぅ?」  セツ子は絵を描くのが好きだ。クレヨンでそこいらじゅう描いて母になんども怒られたから広告の裏に描くようになったが最近は色鉛筆を使い出して小さく細かい絵を描く様になった。まあ、なんとかの横好きではないが飽きもせずに書いているのは静かでいいと母はなにも言わずにほっといてる。すると、セツ子が母の所に来て物差しは何処かと聞いてきた。何をするのと聞くと、この前行った百貨店

          セツ子の日記 7月13日

          セツ子の日記 7月12日

          「チョコミント」#文披31題

          セツ子の日記 7月12日

          セツ子の日記 7月11日

          「錬金術」#文披31題  「なぁなぁ、爺ちゃん。なんでポチはコバンのあるとこわかったん? なんでハイでサクラがさいたん? 」  父と母がお通夜に出掛けたので近所にいる父の父、つまり爺さんとその妻、婆さんが留守とセツ子の面倒を見に来ている。セツ子は爺ちゃんに昔話をせがんだ。以前は一緒に住んでいたので、よくこうやってお話をしてもらいながら寝たのだ。だが、以前は聞きながら寝れたお話が今日は何だかおかしいと思った。ポチが掘れと言ったなんて変だ。犬は喋ったりしないと父も母も先生も言っ

          セツ子の日記 7月11日

          セツ子の日記 7月10日

          「散った」#文披31題  「まださいてるでぇーっ、お父ちゃん。はよきてみてーや、はよぅ、はよぅ。アジサイさん、おはようさん」  梅雨も終わってしまってから咲いた近所の紫陽花をセツ子は毎朝見に行っている。近所といっても小学一年の女の子を一人で行かすわけにもいかないから父が母に言われて付いてきている。最もこの父は表向きは素知らぬ顔を装っているが、娘の事は人一倍心配している。だから母に言われなくても、しゃーないなぁーとでも言いながらセツ子の後を付いて行くはずだ。母に言われて、しゃ

          セツ子の日記 7月10日

          セツ子の日記 7月9日

          「ぱちぱち」 「なぁなぁ、お母ちゃん。どっちがえーとおもう?マリちゃんかなぁ、メグミちゃんかなぁ。セツ子はどっちもすきやさかい、まようわぁ」  地域の盆踊りで「チビッ子のど自慢大会」を開催するそうで、セツ子もそれに出たいと歌を覚えようとするのだが、その前に何を歌うか決めなければならない。今、流行っている歌で一番は「マリちゃん」で次が「メグミちゃん」であろう。セツ子もその二人に絞ってはみたが、そこからの選択が進まない。  一向に進まない歌選びに父が要らんことを言う。セツ子は音痴

          セツ子の日記 7月9日

          セツ子の日記 7月8日

          「雷雨」#文披31題  「なぁなぁ、お父ちゃんはカミナリさんコワないの。セツ子はカミナリさんキライや。おへそとられたらどないしょ。お父ちゃん、セツ子のことまもってな」  雷の雷鳴を怖がって父のあぐらの上にセツ子が避難してきた。タオルケットを被って震えていたがどうやら寝てしまったらしい。父も脚の痛さと暑さもピークになって来たのでそっとセツ子を持ち上げ畳の上に寝かし腹にタオルケットを掛けてやる。  父は髪を汗で濡らしてスースーと寝ている我が娘を見て小学生ぐらいまでが一番可愛い時

          セツ子の日記 7月8日

          セツ子の日記 7月7日

          「ラブレター」#文披31題  「なぁなぁお母ちゃん、あんなぁ。タカシくんからおてがみ、もろてん。こんどなぁ、タカシくんちでおたんじょうかいするからきてっていうんや。いったほうがええやろか」  いつになく元気のないセツ子の声に母は振反った。セツ子は手に持った封筒を見つめている。母は珍しく行きたいと言わないセツ子に何でそう思うのと聞いてみた。  セツ子によると、そのタカシ君の誕生会にセツ子以外誰も呼ばれてないらしい。プレゼントをどうするのと聞いた友だち全員がそんな手紙もらってな

          セツ子の日記 7月7日