セツ子の日記 7月21日
「自由研究」
「ケンちゃん、げんきかー。チャコちゃんもげんきかー。ほーら、ごはんだよ。おいしいかい? そーかそーか、いっぱいおたべ」
夏休みの宿題『メダカのかんさつ日記』の為に夏休み前から買いだしたメダカ二匹。小学校に上がる前は何でも直ぐに飽きて放り出してしまっていたが小学生になったからか、それとも相手が命あるメダカだからなのか。セツ子は一日も欠かさず餌をやり汚れてきたら水を替えている。
買ってきた直ぐに一匹は死んでしまった。セツ子が学校から帰る前に母は新しいメダカを買い求め何食わぬ顔で微笑んでいた。メダカの違いなど大人でも分からぬからセツ子には黙っていた。
今日から待望の夏休み。ラジオ体操に遅れぬように家を出て近所の神社の境内に行く。体操をし、近所の同級生やお姉さん達とお喋りをしてセツ子は確かにしっかりしてきた。どこがというわけでは無いが、受け答えの確かさや意思の主張を伝える速さなど母でも、こんな事も出来るようになったんやと感心する女子になってきた。メダカを見つめるセツ子。セツ子を見つめる父と母。うん、一生の観察日記やねと母はひとり頷いて娘の後ろ姿を見つめていた。
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