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セツ子の日記 7月22日

「雨女」

#文披31題

 「そんなん、めいしんやんか。きにせんとおいでぇなぁ。てんきよほうもはれやってゆうてるから、だいじょうぶや」
 今夜と明日の夜は、この町内の盆踊りでセツ子が一緒に行こうと誘っているのは友達の恵子ちゃん。小学生は保護者同伴なのでお母さんと一緒に行かなければならないのだが、そのお母さんが行かないと言っている。訳を聞くと恵子ちゃんのお母さんは『雨女』なのだそうだ。
 家に帰って母にその話をすると、恵子ちゃんだけ誘って行こうという。恵子ちゃんも私らと一緒にいれば保護者同伴になるからという。なんで恵子ちゃんのお母さんも誘わへんのとセツ子が聞くと母は小さな声で言った。恵子ちゃんのお母さんはホンマモンの雨女やというのだ。
 今まで何回も大丈夫な時に連れ出してみたが、そのタンビに雨が降ったそうだ。雲ひとつ無い天気が土砂降りになったときも有ったそうだ。それで恵子ちゃんのお母さんは行事に参加しなくなったというのだ。
 セツ子は恵子ちゃんと恵子ちゃんのお母さんが可哀想だと思った。お母さんとの思い出が無いなんて、そしたらお母さんと一緒に写っている写真も無いのだ。
 セツ子が恵子ちゃんのお母さんに、その話をしたら恵子ちゃんのお母さんは笑ってありがとうと言った。そして恵子ちゃんと一緒に行った博物館やら温泉やらで撮った写真を見せてくれて、ちゃんと一緒に写っている写真は有るから大丈夫よと言った。
 セツ子はそれで安心した。

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