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どうやら免疫力を上げる悪玉菌がいるらしいので調べてみた

こんにちは😊
消化器専門医 Dr. Sです.
今日は免疫力を上げる悪玉菌がいるらしいと聞き付けて、早速調べてみました✏️

クロストリジウム属、それは一部では有名な常在菌

子育てをされたことのある方や、医療関係者ならご存知の方もおられるのではないでしょうか?

クロストリジウム属は誰の大腸内にも存在する常在菌で、芽胞を形成するグラム陽性桿菌です。
100種類前後の菌種が確認されていますが、そのうち一部には健康被害を及ぼすことが確認されています。

・クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile): 抗生物質に抵抗性があり、抗生物質投与時に過剰に増殖する偽膜性腸炎の原因菌
・ウェルシュ菌(C. perfringens): 食中毒やガス壊疽の原因菌
・ボツリヌス菌(C. botulinum): 致死率の非常に高い毒素を産生し,乳児ボツリヌス症(生後一歳未満の乳児へのハチミツ投与)の原因菌
・破傷風菌 (C. tetani): 破傷風の原因菌で、土壌内に存在
などなど。

このようにクロストリジウム属は健康への悪影響を有する一方で、
腸免疫を強化する作用がある
ことが最近の研究で明らかになりました。

クロストリジウム属は制御性T細胞を強力に誘導する

制御性T細胞とは免疫調節作用を持ったT細胞(リンパ球)の一種で、
自己免疫疾患や癌免疫などにも関与する、とても重要な免疫細胞です。

東京大学の本田賢也先生率いる研究チームは,
クロストリジウム属がこの制御性T細胞を強く誘導することを発見しました。
(Atarashi K, et al. Induction of colonic regulatory T cells by indigenous Clostridium species. Science 2011)

余談ですが、Science誌というとインパクトファクター (IF 2018-19) 41.845という、我々からすると神のような雑誌です((((;゚Д゚)))))))

近年,制御性T細胞には,腸の炎症を制御する重要な役割があることが
明らかになりつつあります。
例えば,潰瘍性大腸炎やクローン病で有名な自己免疫性腸炎において、
活動性の高い自己免疫性腸炎患者においては、血中の制御性T細胞が減少しているという報告など。

まだまだ研究途中の分野ではありますが、
大変興味深い結果です。
自己免疫性腸炎は原因不明の疾患で、完治が望めない難しい病態を有します。
これらの新しい発見が、少しでもこの疾患で悩まれている方々の助けになれば良いな
と考える次第です。

善玉菌、悪玉菌という区別はもう古い?大切なのは腸内フローラのバランス

善玉菌が宿主の健康に良い効果を生み、悪玉菌が悪い効果を生むことは事実です。
しかし、悪玉菌と言われてきた菌種にも、
研究が進むにつれて健康にとって良い側面がある
ことが明らかとなりつつあります。

善玉菌が良い、悪玉菌が悪いという一方的な考え方はせず
バランスの良い腸内環境作り
を心がけることが、健康的な腸内環境につながる秘訣かも知れませんね。

本日は以上です。
最後までご一読頂き、ありがとうございました😊

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