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【意味がわかると怖い話・14】折り紙

折り紙。
日本発祥の遊びは今や世界も認めるアートであり、宇宙開発にも技術転用される科学でもある。

男は折り紙を愛していた。
それ以上に折り紙に取り憑かれているとも言えるほどであった。
暇さえあれば作品を折り始めているしあらゆる物を紙一枚から生み出すことが出来た。

彼に折れないものはない。
世界中から称賛され作品を求めるファンも多い。
しかし男はそんな状況に満足していなかった。
折ろうと思えば何でも折れる生み出すことが出来る。
最早、彼に出来ないことはない。
だからこそ不可能なものを形にしたいと願った。

そして男は最後の作品と呼べる大作を世に残すことにした。
世界屈指の美術館、その広いブースの中央で彼の最後と呼べる作品は展示されることとなる。

彼が最後の作品と呼ぶだけあって、製作にはかなりの集中力と時間をかける必要があった。
公開日の一週間前、すでに他の作品は展示準備を終えていたのだが、肝心の中央のブースにはなにも置かれても準備もされていない。

さすがに関係者たちも心配をしたが男だけは違った。
男は今から一人で製作に没頭するという。
その間、集中するため関係者も含め、公開日当日まで誰も入ってこないように伝えた。
男の鬼気迫る説明に皆、頷くことしかできなかった。

公開日前日の夜、男の作業は続いていた。
額には汗がにじみ顔も歪んでいる。
しかし口元には笑みがこぼれ作品がもうすぐ完成するであろう様子が伺えた。
明日は伝説的な1日になるだろうと男は確信し震える指先を使い最後の一折に力を込める。

翌朝、美術館に悲鳴が響き渡った。

【ネタバレ】
確かに男に折れぬ作品はなかった。
それでも折れぬものを折りたいと願った男が最後に折ったのは、自身の身体であった。
男は器用にそして美しくも不気味に自身の身体を折りたたんでいったのである。

彼の遺作となった作品名それは
「折りたむ私と畳まれた私」である。

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