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サブスクという蜘蛛の糸

 先日、部屋を掃除した時にVintage troubleというイギリスのロックバンドのCDが出て来ました。私が学生の頃に、どうしても彼らのCDが欲しかったのですが、当時は日本国内での取り扱いが無く、あの手この手で個人輸入をして手にした1枚だったのも思い出して懐かしい気持ちになりました。

 今でも活動しているのだろうかと思い、加入している音楽配信サブスクリプションサービスであるSpotifyで確かめる事にしました。

 今でもしっかりと活動をしているよう嬉しかったです。

 余談ですが、このVintage troubleというバンドのCDを個人輸入して、関税を乗せに乗せられて何とか手元に来た翌月に日本国内でも正規取り扱いになり、辛酸を嘗める思いをさせられたのも久しい記憶です。


 そう言えば皆さんは、どういったサブスクを利用されていますか?

 私の場合、音楽はSpotifyとYouTube Musicを、雑誌は楽天マガジンを利用しています。他にもゲームサービス等にもサブスクを利用しています。

 今でこそサブスクリプション(通称:サブスク)という料金体系が一般的になって久しい世の中です。出がけの頃こそ『どうして1回の支払いで済むプランが無いのか』とモヤモヤしながら何かしらのサブスクを利用していましたが、1ヶ月につき1000円以下の出費だと“まぁ外食を1回控えれば良いか”程度の感覚で次から次へと加入するようになりました。

 それらの月額料金を合わせても1ヶ月あたり2000円程度ですが、もう10年近く利用しているので塵も積もればの話になってしまい、改めて計算するとゾッとするのでやらないでおきましょう。

 私が加入している音楽サブスクで“お気に入り”に入れている曲は、300曲を超えていますし、雑誌サブスクで最新号が出たら通知が来るようにしているのは5タイトルあります。
 と、考えるとこの塵も積もれば山となる料金体系も、かえって良心的にも思えます。

 音楽サブスクのお気に入り曲300曲をCDで揃えると一体いくらになるのでしょうか?CD1枚アルバムなら3000円前後なので、1曲につきCD1枚だと仮定すれば90万円にも上ります。

 雑誌サブスクも5タイトルお気に入り登録をしているので、1冊1000円だと仮定しても本屋さんでまともに1冊1冊を買えば月5000円になります。1年なら6万円ですね。

 それが年間トータルで24000円程度で楽しめるので、結局サブスク業者様様なのが実情です。


 しかし、ある日突然サブスクがサービス終了したらどうなるのだろうと、先日ふと思いました。特に音楽サブスクです。

 雑誌のサブスクに関しては、本屋さんで買いに行く事が出来ますがバックナンバーに関しては難しいです。更に、音楽に関してはより難易度が増すと私は思うのです。お気に入りの曲全てのCDを仮に揃えようにも私のように“ひねくれた”人はおおよそ日本で入手の難しいアーティストの曲やインディーズバンドの楽曲も多いので困難を極めます。CDを保管する場所も必要になりますし、古い曲はLP盤を置くスペースとそれを再生する機材も必要になります。とにかく媒体に投資が必要になってしまうからです。

 また、自分にとって“推し”のアーティストの作品をサブスクのみで楽しむというのは、ある日そのサービスが突然終了し気軽に聴く事が出来なくなる、楽しめなくなるというリスクも伴います。


 そもそも、“音楽”や“映像作品”や“書籍”をサブスクのみで楽しむのも如何なものなのでしょう。

 こういったコンテンツは作者や作曲者の方が心血を注いで生み出した作品達です。サブスクという提供体系はそういった作品達を気軽に検索して好きな部分だけを楽しめるようにしたサービスです。しかし、気軽に楽しめる、コンテンツに触れられる反面、例えば曲のイントロ部分を聴いただけや、文章の頭を読んだだけで自分の好みに合う合わないを判断してしまってはいないでしょうか?

 作者や作曲者が心血を注いでようやく世に放った作品をサブスクという形だけで楽しむというのは失礼に値する部分も私はあると思うのです。

 どうにか頭を捻って個人輸入をして入手したVintage TroubleのCDを手に入れたあの頃の私は収録曲全てを何周も何周も聴いていました。音楽といったコンテンツは、それくらいの熱を持って作品に向かい合って楽しむべきだとは思わないでしょうか?

 ただ、先述した通りサブスクでお気楽にお気に入り登録をした楽曲全てが収録されているCDやレコードを今から収集するのは途方も無い道のりです。ならばせめて、“推し”のアーティストの楽曲だけはサブスクのみならず、CDやレコード盤で手元に置いておくべきだと気付かされました。

 サブスクというサービスは実は蜘蛛の糸のような存在です。サブスクを提供している企業は、私のように"ひねくれた"趣味嗜好の方々に世界中の様々な作品をお手軽に楽しませてくれるある種"神様的存在"です。

 そして、私たちはその糸に“お気に入り”の作品タイトルを次から次へとぶら下げています。しかし、その糸は実はどれ程の強度なのかもわかりません。明日にはサブスクという蜘蛛の糸が切られてしまった時に、ぶら下げた作品が多ければ多いほどダメージは大きくなります。実は脆いこのサービス形式。最低限自分の中で抑えておく作品はしっかり手元に形で残しておきたいなと、Spotifyで音楽を楽しみながらnoteに打ち込んだのでした。

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