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【自分用】観た映画・アニメの備忘録と軽い感想

溜めてた映画リストを全て消化できた記念に、これまで観た映画の備忘録的なものを書き留めておく場所としてこの記事を作成した。
作品は筆者の判断で大まかなジャンルごとに分け、覚えている作品については簡単な感想を付け足す。リストは随時更新。
思考、ユーモア、教養、閃きなど、今後の生き方のヒントにできればと思う。

ドラマ・ヒューマン

ショーシャンクの空に
言わずと知れた不朽の名作。諦めない事、折れない事。生きる力、人間の希望と意志の持つ力。名作なばかりに、好きな映画を聞かれてこれを答える人が多すぎるらしいが、観たあとならその理由がよく分かる。「とある刑務所の受刑者が勝ち取り、分け与えた開放と救い。誰の心にも静かに、爽やかな感動が訪れる。」このあらすじだけで全てが伝わる。
どうせ皆観てると思うのでネタバレすると、アンディは脱獄するのだが、この時の青空が本当に美しい。単純な色合いとしての美しさではなくて、それを掴み取って自分のものにした、アンディへの僕の憧れや人としての強さがそう見せたのだと思う。
登場人物の力強さと魅力はそのままに、ジョジョ6部「ストーンオーシャン」からスタンド要素を取り除くとこの映画になる。希望が持つ可能性を説く素晴らしい作品。ちなみにこの作品は、アメリカ合衆国の「国立フィルム保存委員会」が半永久的な保存を推奨する映画作品のリスト「アメリカ国立フィルム登録簿」に選ばれている。受け取れるメッセージはそれほどのものということだ。

グリーンブック
黒人ピアニスト、ドクター・シャーリー。彼の用心棒として、生き方も性格も正反対な陽気な白人・トニーがタッグを組む話。ホワイトハウスで演奏した彼ほどの人間が、差別の色濃いアメリカ南部地域でのツアーを試みるのはなぜか。黒人用旅行ガイドグリーンブックを頼りに出発する。
真逆のタイプの人間がコンビ組むシリーズ。これ楽しめたら「最強のふたり」も楽しめると思う。この手の映画は実際の歴史背景を並行して頭に入れながら観るとより一層味わい深い。シャーリーの気高さと信念を垣間見ることができる。

最強のふたり
グリーンブックが逆になったコンビ。品行方正な全身麻痺の老人の付き人として選ばれたのは、粗暴で下品で喧嘩っ早い黒人の青年。彼が真反対の荒くれ者を傍に置いたのはなぜだろうか。
変化とか新しい発想をもたらしてくれるのは、意外とこういう「相容れない者同士の出会い」だったりする。始めは分かり合えなかった二人が、誰も敵わない「最強のふたり」になるまで。これで互いにリスペクトし合ってるのがまた良い。

フォレスト・ガンプ
これかなり良かった。誠実で純粋、俊足。そして知的障害を持つ主人公フォレスト・ガンプの幼少期から青年期までを、本人の独白によって振り返っていく作品。裏表のない彼の人間性が、人生の至るところで機転を利かせていく。生きる上での出会いが色々な方向に可能性を広げていく。ちょっとした閃きが意外なドラマを生み出す。だからなおの事、一期一会を大切に。「人生とはチョコレートの箱と同じ―開けてみるまで分からない」。全くもってその通り。

グリーン・マイル
死刑囚が収監される刑務所が舞台。収監された黒人の大男・ジョンは繊細で心優しく、更に不思議な治癒能力を持っていた。彼の存在が、刑務官や死刑囚たちに変化をもたらしていく。刑罰のための電気椅子に続く緑色の廊下グリーン・マイルを彼も歩かなければならないのだろうか……?
刑務官や死刑囚たちのキャラクターが一人一人たっていて、よく比較される「ショーシャンクの空に」とは異なった人間模様の描かれ方をしている。特殊能力を持つがゆえのジョンの心痛、感受、苦悩などが刑務官と同じくこちらにも深く刺さる。考えさせられる不朽の名作。

ウルフ・オブ・ウォールストリート
1980年代のウォール街。証券マンの主人公は26歳で会社を設立し、瞬く間に大企業へと成長させる。不正、ドラッグ、金、権力、富、名声。欲望が渦巻く街での彼の隆盛と凋落を描く。
完結明瞭なアメリカンドリームと、ぎらついた競争社会。ディカプリオの勝鬨にこちらまで昂ってしまうほど。男の野心、自己顕示欲をこれほどかとまで映しており、アドレナリンがドバドバ出てくる。「トップガン」とはまた違った男の世界。

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
16歳の青年フランク・アバグネイルjr.は、両親の離婚にショックを受け、単身ニューヨークへ。お金に困って小切手詐欺を思いつき、パイロットや医師になりすます。やがてFBI捜査官カールが彼の逮捕に乗り出し、世界を股に掛けた二人の追いかけっこが始まる……。
ルパンと銭形警部、言えば分かりやすいか。これは実話らしい。痛快な追走劇が見ていてとても心躍る。口上手、二枚目の顔に明るくユーモラスなフランクだが、孤独を抱えているという人間味。ちょっと記憶薄れちゃったけどもう一回見ようと思う。アクション・冒険寄りなイメージ。これ系楽しめたら「キングスマン」とかも。

ミリオンダラー・ベイビー
ボクシングジムを営むトレーナー・フランキーのもとに、31歳の女性、マギーが弟子入りする。彼女は素質と才能によって、みるみる名を上げていくのだが……。
タイトルからは全く予想のつかない衝撃作。アメリカで社会問題になったらしいが、これは頷ける。ただの成り上がり話かと思ったら大間違いである。最終的には、彼女の尊厳や生き方といった部分に踏み込んでいく。ゆえにこの映画の主軸はスポーツではなくドラマ・ヒューマン。観ればその理由が分かる。最初はコーチを拒んでいたフランキーが、彼女に「MO CHUISLE」のマントを捧げたシーンが印象的。

マイ・インターン
ニューヨークのファッション業界に身を置き、公私ともに成功を収めるジュールズ。彼女の部下に、40歳上のシニアインターン・ベンが雇われる。最初はいらつきながらも次第に頼りにするようになっていく。やがてジュールズに思わぬ危機が訪れ、大きな選択を迫られる。
とにかく元気が出る。ベンの誠実で真心のこもった、的確な仕事っぷりもそうだが、彼のインターン応募の際の自己PRに心を打たれた。働くこと、人の為に生きることの素晴らしさ。仕事を頑張ろうと思える。

プラダを着た悪魔
ジャーナリストを目指してニューヨークにやって来たアンディ。一流ファッション誌の編集長・ミランダのアシスタントの仕事を手に入れることとなるが、それは何人もの退職者を出してきた恐怖のポストだった……。
かなり前に観たのでうろ覚え。ただこれもマイインターンなどと同じく非常に面白い。と言うかセットでオススメしたい。仕事のハチャメチャを通じた成長、自己肯定。自分を見つめ直す良い時間をくれる。最後は前向きに。

それでも夜は明ける
ニューヨークで暮らす音楽家の黒人が主人公。妻子と共に幸せな生活を送っていたが、拉致され奴隷市場で売られる。家族は散り散りになり、名前も尊厳も奪われてしまう。有能であった彼は、温厚な農園主に気に入られるが……。
実話。奴隷であった著者による原作「Twelve Years a Slave」は1853年のアメリカでベストセラーとなった。魂の気高さ、力強さ、家族の愛。
アメリカの歴史家曰く、「(黒人の)奴隷たちは重武装の権力者に直面するよりも、夜の闇に紛れ北極星に導かれて寓話の自由の土地を目指す方が容易である……」。奴隷制の悪逆無道を説く。ひたすらに惨たらしい。

アメリカン・ヒストリーX
舞台はアメリカ。白人至上主義・ネオナチを掲げる白人の兄弟が主人公。黒人を殺し、刑務所送りになった兄・デレク。投獄前後にわたった彼の精神、思想の移り変わりを描く。真人間となったデレクを待ち受ける現実。
アメリカの人種差別は多様性がどうのこうの言われ出した現代でもなお色濃く、それをテーマにした作品も昔っから非常に多いが、この作品はとりわけ鮮烈なメッセージ性を持つ。非常に後味が悪い。争い、差別や偏見を無くすためには個人でなく集団が変わらなくては何も生まれない。差別を巡る人間の本性がリアルに描かれている。  

幸せなひとりぼっち
伴侶を無くし、今まさに自殺を試みる頑固老人が、地域社会との触れ合いを通して変わっていく様を描いた作品。一人と独りの違いを再認識できる。頑固で寡黙なおじいちゃんのバックボーンが明らかになっていくにつれ、彼の優しさがじんわりと滲んでくる。若かりし頃のおじいが下半身不随の妻のために身を尽くすシーンで涙。人との関わりがもたらす救いと幸せ。

人魚の眠る家
二人の子を持つ夫婦。娘がプールで溺れ、回復の見込みのない植物状態になってしまう。
切実。観る者の喉元に答えのない問いを突き付ける。要は脳死を扱った話なのだが、その受け止め方が登場人物ひとりひとり異なっており、誰も間違っていないので見ていて辛い。母親の気持ちを慮ると尚のこと遣る瀬無い。娘にナイフを突き立て、「脳死の人間を殺したら私は殺人で捕まるのか」と泣き腫らし悲しさの行き場を無くした母の台詞は考えさせられる。思わず映画であることを忘れるほどである。倫理、道徳、現代社会など、教育現場で扱っても遜色ないものになるだろう。

英国王のスピーチ
吃音のコンプレックスを抱える英国王の次男アルバート王子は、スピーチ克服のため治療を受けるも改善できずにいる。そしてアルバートは王位を継承することになり、いよいよ心配した妻は独特な治療を施すスピーチ矯正の専門家に全てを託す。
吃音を矯正するだけの映画なのだけれども、なぜ声がどもるようになったのかを精神面から分析していたのは興味深かった。治療を通した友情も良い。何かを治したり良くするための泥臭い努力は輝いて見える。その努力が、一般の人間でなく、ある一国の王のものであるなら、それは尚更まばゆく輝いて映る。

アバウト・タイム~愛おしい時間について~
21歳の誕生日を迎えた青年は、父から「一家の男はタイムトラベル能力を持っている」ということを告げられる。人生の模索のためにその力を駆使し、大切な気付きを得ていく。
感動するタイプの「リプレイハンバーグ」。タイトル通り、時間を見つめ直したくなる一作。一人でなく誰かと観る方が余韻が良いものになるだろう。若干のご都合主義はあるが感動が勝ったので許す。

素晴らしきかな、人生
ニューヨークの広告代理店で成功を収めた主人公。しかし彼は最愛の人を失い、深い喪失感に見舞われる。ある時現れた3人の奇妙な舞台俳優によって、人生に変化が生まれる。
だいぶ前なので記憶が薄いのだが、主人公が本当に喋らないというか、打ち明けない。打ちひしがれており、どんな療法でも治らない。わざとらしい舞台俳優たちの演出がちょっと見てて共感性羞恥だった記憶があるのだが、それによって後半、主人公の心の内が明らかになっていくところに僕自身深いうなずきが出た。

アクション・冒険

スタンド・バイ・ミー
オレゴン州の田舎町。12歳の少年4人は、「行方不明の少年が線路上に放置されている」という噂を聞き付け、死体探しの旅に出る。ひと夏の冒険の末に手に入れたものは。
不朽の名作。こういう作品が一番刺さる。誤解を招く表現をするとあの頃を思い出してどうしようもない鬱屈な気分になったり死にたくなったり、またある時は凄く輝かしく見えてきたり。網とかごを持って一日じゅう虫取りをしていたことや、帰宅時間を過ぎても友達と遊んでいたこと……。そういう下らないこと、気付き、冒険が、あの頃の自分には何事にも代えがたい全てだったことを思い出す。そして我に返る。遊んでいた公園が埋め立てられたこと。通っていた駄菓子屋が潰れたこと。そんな感情の波が寄せて引いて、そしてそれらがもう、今の僕には関係のない話だったことを思い出して、我に返る。それを何度も繰り返す。そんな作品。10年おきに、そして死ぬ前にもう一度見返したい。ちなみにネタバレになるが、彼らは大冒険のあと、ずっと仲良しという訳でもなく、進学や就職を機にバラバラになる。そこがより一層、僕の「あの頃」の記憶を叩いてくる。もう戻らない、戻れない、だが忘れない、忘れられない。いつも僕のそばに立つ思い出スタンド・バイ・ミーというのは、嬉しかったこと、楽しかったことよりも、意外とそういう物悲しさを孕んだものなのである。

「キングスマン」シリーズ
ロンドンの高級スーツ店「キングスマン」。その正体は、どの国にも属さない最強スパイ集団のアジトであった。チームの一員の殺害を受け、エリートスパイは、元エージェントの父を持つ不良少年に声をかける。
「キングスマン」「キングスマン ゴールデン・サークル」「キングスマン ファースト・エージェント」をまとめて。上記のあらすじは無印「キングスマン」のもの。要は新人がハンター試験を受けてハンターになるまでみたいな話なのだが、これがまあ面白い。無理くり見せられたのだがすっかり見入ってしまったのを今でも覚えている。スパイの7つ道具、息の詰まるアクション、機転を利かせた戦闘シーンなど、わくわくが大量に詰まっている。アクション映画オススメするならこれ。

トップガン
海軍エリートパイロット養成学校のナンバーワン・マーヴェリックの栄光と挫折、恋を描いた作品。
古き良きアメリカ映画という感じ。ステレオタイプな、力強く荒々しい男たちの生き様。古き良き漢のヒロイズム。友情とプライド。こういうのでいいんだよを体現している。

ピクセル
地球や人類の文化情報を電波に乗せ、宇宙人との交流を図るプロジェクト。しかし、受信した宇宙人はこれを宣戦布告と捉え、「パックマン」「ドンキーコング」「スペースインベーダー」など、情報からテレビゲームの姿を学習し、地球を侵攻し始める……。
高校生の時に観た作品。ゲームのキャラが映画に出てくるというのが当時の自分には大分ユニークだった。B級映画かと思いきやこれが意外と面白い。

恋愛・ラブロマンス

君の名前で僕を呼んで
夏の北イタリア。家族で夏休みを過ごす17歳の少年・エリオは、アメリカから来た24歳の青年・オリヴァーと出会う。最初は反発気味だったエリオだが、やがて近づいていき、恋に落ちる。そして夏の終わりを迎え……。
バイセクシュアル同士の夏のアバンチュール。「君の名前で僕を呼んで」。二人の関係性が現れた秀逸なタイトルである。誰かとお互いの名前を交換して呼び合ってみて欲しい。そのときの感情がこの作品そのものである。さり気無く明滅する、瑞々しい青春。色んなどうしようもないことがある。二人はゲイではなく、人としての憧れによって惹かれ合ったのである。性愛も勿論ながら、人間愛、激情を描いた神聖な作品のように思える。晴天とイタリアの景観が目に安らかに映る。両親の温かさも身に染みる。観終えたあとの余韻が最も深かった。同性愛を扱う作品は今まで観たことがなかったので雷に打たれたような衝撃だった。

明け方の若者たち
「花束みたいな恋をした」の亜種。大学時代~社会人1,2年目くらいまでの青春、恋愛、仕事……など、誰にでも訪れる「人生のマジックアワー」を描いた恋愛ドラマ映画。若々しさにどこか憂いとか悩みとかがあって、そのぶつけどころもよく分からなくて、僕たち私達はこれからどこへ行くのだろう、みたいなふわふわした時間に生きる男女の恋愛模様。高校生あたりの青春とちょっと違うのは、彼らが向き合う「人生」の解像度が大分生々しく映っているという点。全体を通して端的に言えば所謂「エモい」。

ある朝、彼女は明け方を思う

「明け方の若者たち」の視点を、男性(北村匠海)でなく女性(黒島結菜)側から描いた短編作品。ドリカムだったか、大人の方が恋は切ない……みたいな歌詞があったと思うけどそれをふと思い出す。ほんと男女って難しいですね。

花束みたいな恋をした
「明け方の若者たち」をブラッシュアップし、より大衆性を獲得した作品がこれ。公開年はこちらのほうが早いけど。人生のステージごとに恋愛の形も変化していくと思っていて、ただ好きでなんとかなっていた学生時代の恋愛と比べて、人生設計とか仕事とかライフスタイルとか、これからを考えないといけなくなる現実が急にやってきて、自他を見つめ直した後の社会人の恋愛ってそれまでと同じ「好き」だけじゃどうにも戦えないんですよね。年を追うごとに生じてくる二人の間のズレとかが上手く表れてると思います。劇中歌であるAwesome City Clubの「アウトサイダー」「今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる」、きのこ帝国の「クロノスタシス」は今でも聞いたり。というのも、劇中のアイテム(漫画とか、ゲームとか、サブカルチャー的な)の散りばめ方が上手くて、自分たちの恋愛にもあったワンシーンに錯覚するんですよね。使い古された表現だけどそりゃ「エモい」よねって。
あと、カップルで観たら別れるみたいなことを公開当時はしょっちゅう聞いていたけど、これ観たぐらいで別れるカップルは遅かれ早かれ破局するだろうな、と思った。飾った時は綺麗だが、いつか花束は枯れてしまう。心の中にだけ、綺麗なまま留めておく。花束みたいな恋とはそういうことだろうか?

ちょっと思い出しただけ
2021年の7月26日から始まるこの物語は1年ずつ同じ日を遡り、別れてしまった男女・照生と葉の終わりから始まりの6年間を描く。
文字通り「ちょっと思い出しただけ」。長く付き合ってたらあんなことやこんなことがある。それをちょっと思い出すだけ。ラストシーン、訳も無く元気出てくる。ふうと深呼吸して一歩踏み出す感じの。

人のセックスを笑うな
美術学校に通う青年は、39歳の非常勤講師の女性と知り合う。彼女の教室に通うようになり、モデルを頼まれたことでそのまま関係を持ってしまうが、彼女は実は……。
タイトルは中々だが、そこまで強烈な描写があるという訳では特に無い。というか、タイトル避けが勿体ないほどの純粋な恋愛ドラマである。年上ってこの時期に物凄く眩しく映る。けどまあ大体そんなもんだよねという感じ。講師・ゆりの天真爛漫、手放したらどこかに行ってしまいそうな感じが男には刺さるのだと思う。それはそうと19歳の心を弄ぶな。自然な演技がだらっと観れていい感じ。

娼年
松阪桃李主演。女性用風俗で働くことになった大学生が、女性の持つ性欲やセクシズムに触れ、成長する物語。
扱うテーマは結構好き。人は大なり小なり秘密や「癖」を抱えている。それを打ち明けて得るカタルシス。あとそれを受け止める松阪桃李がイケメン。なにより、未知の世界に足を踏み入れる感覚を桃李と味わえるのが良い。新たな価値観を得られる映画。世の中にはいろんな女性がいる。女性の数だけ癖がある。

好きにならずにいられない
童貞が恋する話。正直おすすめできないので見なくてもいいと思う。ポスター詐欺。変わるきっかけをつかんで、踏み出してみよう……みたいなことですか?幸い90分と短いので起承転結が分かりやすい。

ジョー・ブラックをよろしく
死期が迫った男のもとに、ジョーという死神の青年が現れる。今すぐに死ねないという男の頼みを引き受ける代わりに、ジョーは人間界の案内をさせる。そして男の娘(おとこのこでなく、その男のむすめ、の意)とジョーは、互いに興味を持ち始める。
ただでさえ切ない古典的ラブロマンスに、「人の生き死に」というテーマが加わると、重厚でより儚い物語が出来上がる。恋愛映画ってこういうのでいいと思う。本当にこれでいい。今まで観た恋愛映画で一番良かった。どうしてこんなに切ないのか。若かりし日のブラッド・ピットがイケメン過ぎるということもあり、是非お勧めしたい。

コメディ

きっと、うまくいく
舞台はインド。エリートを輩出する超難関大学に入学したランチョ―、ファルハーン、ラジューの三バカトリオが学校に珍騒動を巻き起こす。同時進行する現代パートでは、大学卒業後に消息不明となったランチョーを二人が探し出す。
沢山の映画を観て、この記事でそのほとんどを紹介できたと思っているが、そのどれよりも泣けたのがこの映画。タイトルから全く想像もつかない。ユーモア、閃き、機転、理知。学歴主義が過熱するインドから、生きる上で勉強の優劣よりも大切なことは何かを問いかける。インド映画ってほんとに踊るんだ……と思った。メッセージ性が押しつけがましくないのに良く伝わってくる。しっかり笑えてしっかり泣ける。本当にお勧めしたい。コメディ枠に分類されているので仕方なくコメティの項に入れているが、大切なことを沢山学べたので個人的にはドラマ・ヒューマンものだと思っている。3時間と長いがなんの苦にもならない。ちなみに、インド映画においてダンスシーンが頻繁に設けられる理由としては、男女の情愛や色恋の表現を避けるべきという文化的・宗教的な背景があるからとか、国内だけで約40種類の言語があり、言語の壁を越えるために分かりやすい表現技法として踊りが取り入れられているとかなんとか。All Is Well。「きっと、うまくいく」。

テッド
僕がもっぱら洋画やその字幕版を好んで観る理由のひとつが、皮肉や冗談を良い具合に効かせたアメリカン・ジョークの存在にある。この「テッド」は、人前で口に出すのも憚られるような汚らしく強烈なアメリカン・ジョークが1分おきに楽しめる。可愛いクマぬいぐるみから発せられるというギャップが余計に面白い。ズッ友相手のジョンもいい仕事する。スーパーの勤務中に同僚とファックしたのがきっかけで昇進できるのは地球上探してもマジでこのぬいぐるみだけ。んでもってしっかり感動もできる。エンドロール直前、最後の最後まで爆笑できたのはこの映画だけだと思う。これを超えるブラックコメディ映画には今のところ出会えていない。

テッド2
「テッド」の順当な2作品目。正直なところ前作「テッド」を超えられはしなかったが、初見のインパクトが強すぎるので仕方ない。ちゃんと2も面白い。アマンダ・セイフライドが可愛い。観たのだいぶ前だけど巨大なマリファナ畑見つけるところで爆笑した記憶。ちなみに前作もそうだが、字幕版と吹替版どちらで観てもそれぞれの味が活きているので4度楽しめる。日本語吹き替えだとテッド役が有吉なのだがこれがハマり役すぎる。他の誰にやらせてもここまで面白くならないと思う。

天使にラブ・ソングを・・・
アメリカのとあるクラブで歌手を勤めていた黒人女性デロリスが、色々あって警察に匿われ、女子修道院でシスターとして生活する。元来のおおらかで砕けた性格がたびたび衝突をもたらすが、聖歌隊の指導を任されたことをきっかけに、派手なゴスペルで一躍有名となっていく。
この手の「異なる価値観の人間が混ざり合って良質な化学反応を起こす」みたいな作品が大好きなのだが、例に漏れずこの作品も面白い。聖歌隊がミュージカルに昇華された場面はこちらまで楽しい気分になる。お堅い先輩尼僧を手玉にとって、味方を増やしていく流れもステキ。捧げものが「明るく楽しく元気よく」であったって、別に神はお許しになってくれると思う。

トゥルーマン・ショー

平凡なサラリーマンのトゥルーマン。ある日彼は、自分の生活に違和感を感じる。もしもこの世界と人生が、誰かに演出された作り物だったら……?
とにかく設定が斬新で引き込まれる。この奇妙な感じはコメティというよりミステリーにすら近いような。メタ思考の大切さ。もしかしたら自分もそうかも?この世界が実は作り物で、自分の脳みそだけが水槽に浮いているような、思考実験の一環に過ぎなかったら……?実は恐ろしい一作。皮肉が効いている。

「ハングオーバー!」シリーズ
一作目「消えた花婿と史上最悪の二日酔い」、二作目「史上最悪の二日酔い、国境を越える」、三作目「最後の反省会」。
観たのがかなり前だったので三作品まとめて。悪友4人組が、バカ騒ぎしてぶっ倒れる度に記憶を失くす。目覚めるまでに何が起きたのかを突き止め、無事に帰れるのか。オススメされて観たのがきっかけだったがかなり面白い。記憶がない4人と視聴者で「何も分からない」という目線が同じなので、目覚めたときに何でこうなっていた?というパズルのピースを一緒に埋めていける感じ。そのハチャメチャな過程を楽しむ。個人的にはトラブルメーカー枠、アランの空気の読めなさとズレ方がちょっと苦手なところがあった。

インターンシップ
大企業Googleのインターン生になった、IT音痴のおじさん二人の奮闘を描いた作品。課題をクリアして人生逆転できるのか?
スタッフは「テッド」と同じらしい。「きっと、うまくいく」とメッセージ性が近い。勉強に使う頭の良さだけでなくて、機転やユーモアが大切なときもある……みたいな。面白さは約束できる。

スーパーバッド 童貞ウォーズ
オタク仲間のセス、エバン、フォーゲルはエロいことで頭がいっぱいな高校生。同級生の女の子から「お酒を持ってきて」とパーティーに誘われたが、高校生には難題。しかし童貞卒業の好機と考えた3人は、目的達成のためあらゆる手段に出る。
3年くらい前に観たやつ。中身覚えてないけど大分バカバカしくて意外と見れた記憶。こういうことに本気になってくれる友がいれば君たちは絶対に大丈夫。

帰ってきたヒトラー
ヒトラーが現代にタイムスリップし、人気芸人に……。
この映画危なすぎる。コメディにするテーマにしてはブラック過ぎるし、何よりこの撮影をドイツで行って国民から奇異の目で見られたというからなおの事である。しかも劇中、ヒトラーが説教したりする場面がある訳だけれど、やっぱり時代が変わっても説得力がある。ゆえに、その情熱に惹かれてしまうのが「危ない」のである。面白いんだけど笑ったら制作側の意図に嵌まってしまいそうで嫌だ。ヒトラーが美大に受かってればこうはならなかったと毎度考えさせられる。

ジーサンズ はじめての強盗
タイトル通り。年金打ち切りとか、暴利の住宅ローンとかお金関連の災難に見舞われたおじいさん3人が銀行強盗を企てる話。平穏な余生を取り戻すことはできるのか。強盗の計画が立ってから、3人は体力トレーニングとか銃撃の練習とか本番を想定した強盗の時間計算とか色々奮闘するわけだが、この試みが、退屈だった彼らの人生に再び活力とやり甲斐を与えているというのが不思議と面白い。

戦争・犯罪

ゴッド・ファーザー
アメリカを舞台に、マフィアら裏社会に生きる「ファミリー」の人々を描いた作品。男の誇り、義理人情、権力争いや裏切りなど。スタンド能力のないジョジョ5部と言ったら一番分かりやすいと思う。最後のシーンが良かった(小学生並みの感想)。

シンドラーのリスト
戦時中、1000人を超えるユダヤ人を救ったオスカー・シンドラーを描いたホロコースト作品。ユダヤ人虐殺を鮮明に克明に描いている。リストによって救われたユダヤ人たちの子孫がシンドラーの墓に献花をするというシーンが最後に流れるのだが、これを見ていると、リストに名前を書くという行為が文字通りユダヤ人の生殺与奪を握っていたことと、シンドラーの「もっと救えたはずなのに」という嘆きの重さがよく伝わってくる。

ライフ・イズ・ビューティフル
第二次世界大戦の時代のイタリアが舞台。ユダヤ系イタリア人の主人公は、ユダヤ人迫害の潮流から息子と共に収容所へ送られる……。
受け取り方次第では後味が悪い。タイトルからこの結末を誰が予想できるのか。ヒトラーやユダヤ人を描く映画は多いが、この作品は珍しくコメディ色があり、明るく陽気な主人公が息子を不安にさせないように収容所で面白おかしく振る舞うところが描かれ方のカギになっている。ユーモアの大切さもそうだが、本人も不安でありながら子を励まそうとする父親の器、人の強さに心打たれた。

縞模様のパジャマの少年
第二次世界大戦下のドイツが舞台。将校の父を持ち、この街に引っ越してきた少年。探検の最中、張り巡らされた金網地帯を見つけ、その向こうに同い年の少年と出会う。お互いの素性も分からぬまま、友情は育まれていくが……。
ホロコースト映画のなかでもとりわけ後味の悪い作品。何も知らない子供達の目には、このような世界であっても純粋で眩しく映る。それだけが救い。残酷なラスト。

プライベート・ライアン
第二次世界大戦が舞台。アメリカの米軍規則「ソウル・サバイバー・ポリシー」に基づき、徴兵されたある一家の兄弟全員の殉職を防ぐため、最後の一人だけは生かして国に帰さなければならない。「ライアン二等兵」を見つけ出し、全力で守り抜く部隊を描いた作品。
戦争映画といえばこれ。重厚で悲惨な戦争シーンが描かれており、「足りないのは臭いだけ」とまで呼ばれるほど。命の価値は同じなのに、なぜたった一人の兵士のために、なぜ部隊を割いて、必死に追いかけて、死地に飛び込んでいかなければならないのか。不条理だが命令は絶対だ。

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密
実在した天才数学者アラン・チューリングは、第二次世界大戦時のドイツの暗号・エニグマ解読を試みる。世界の命運と、天才数学者の秘密、彼の人生とは。
実話。確か後味悪い映画に数えられていたのだが個人的にはそんなに感じなかった記憶。戦争がかつての馬や鎧騎士たちのぶつかり合いから、情報戦に変わったことを印象付けられる映画。

アメリカン・スナイパー
米軍史上最多となる160人を狙撃した伝説のスナイパー、クリス・カイルの半生を描いた実話。
「戦争という名目のもと、命が次々と失われていくことの重みを突きつける」反戦映画。ちなみにこれも後味悪い系、最後があっけなさすぎる。

ホラー・サスペンス・スリラー・ミステリー

ミッドサマー
大学生のダニーと恋人のクリス、その友人たちは、留学生であるペレの故郷スウェーデンで、夏至(ミッドサマー)に行われる祝祭に誘われる。人里離れた村、浄化の儀式、白夜のもとで歓待を受ける彼らだが、次第に不穏な空気が漂う。
後味の悪すぎる名作。この手の民族チックなホラーが一番怖い。こういう常識とか思考の認知のズレが生じていて、まともなのに話が通じないみたいな集団に巻き込まれたらと思うと背筋が凍るばかり。狂気がじわじわと鎌首を擡げてくる感じ。知らないうちに気が触れていて、もう気付いた時には……みたいな。「きさらぎ駅」よろしく、いつの間にか非日常に足を踏み入れている恐ろしさと言ったら伝わるか。逃げ場はどこにもない。救いもない。

冷たい熱帯魚
熱帯魚店を営む主人公。その娘と妻、冷え切った家族関係にある3人だが、同業者である「村田」と家族ぐるみで親しく付き合うことになる。しかし彼が連続殺人鬼だと気付いた時には全てが手遅れだった。
「埼玉愛犬家連続殺人事件」を題材にした作品。今まで観てきたホラー系作品で最恐最悪。人間が怖いタイプの怖さの中で一番かもしれない。「村田」の鬼気迫る感じ、笑顔と人当たりの良さで他者につけ込んで、洗脳掌握しようとする歪んだ人間性、映画と分かっていても生理的嫌悪感が凄い。あまり俳優の演技などに重点を置いて作品を観たりすることはあまりないのだが、村田役のでんでん氏の演技は本当に吐き気を催す邪悪という他無い。都合の悪い人間を次から次に殺し「透明にする」……。完全犯罪を目論む、残忍で猟奇的、悪質極まりない「村田」夫婦の魔の手からは逃れられない。観る側からしてもどうあがいても絶望という他無し。ホラーというよりかはグロテスク・サイコホラー。オススメしたいが作品としてあまりに難があり過ぎて気軽に人に勧められない。リングとか呪怨を勧めるのとは訳が違い過ぎる。

「パラノーマル・アクティビティ」シリーズ
一軒家で同棲するカップルは、夜中に起きる奇妙な現象を突き止めるため部屋中に監視カメラを仕掛ける。そこに映っていたものとは。
モキュメンタリー形式(ドキュメンタリーのように見せかけた演出技法)で撮影された映画。じわじわと「何か」が迫ってくる恐怖。化け物がそのまま出てきて怖がらせてくるアメリカンホラーよりよっぽど雰囲気があって面白い。ちなみにこの映画は素人の自主制作映画で、制作費は100万、撮影日数も7日間と非常に小規模なものだったが、口コミで評価され始め、公開初週の一館あたりの平均興行収入はあの「タイタニック」に匹敵するほどであったという。

JOKER
売れないコメディアンのアーサー・フレック。社会から見捨てられた彼はやがて、ジョーカーという名の狂気的、カリスマ的犯罪者へと変貌する。
悪い人じゃないのだけれど、一歩踏み外して狂いだしてからが良くなかった。精神失調、幻覚が観る側まで蝕んでくるよう。どこにでもいるような孤独な男、アーサーがあまりにも魅力的な「無敵の人」になってしまうまでを描いている。残忍でリアリスティック。ちなみに本映画の公開にあたって、アメリカではストーリーに感化され犯罪を犯す可能性を懸念して犯罪注意警告を出すほどである。なぜなら2012年のジョーカーシリーズ公開の際、本当に銃撃事件が起こり死人が出たため。

ミスト
のどかな田舎町に暮らす3人家族。町を嵐が襲った翌日に現れた深い霧は、やがて広がり、ついに町を飲み込んでしまい……。
ラストの後味の悪さに全振りした映画。出てくる虫とか怪物が気持ち悪いくらいで、ホラーというよりは不安を煽ってくる感じ。それよりもヒステリックなおばさんやすぐ死亡フラグを立てるおじさんなどが気になりすぎてそれどころじゃない。本当にラストの衝撃的な結末に全振り。

チェンジリング
9歳の息子・ウォルターと平和に暮らす、シングルマザーのクリスティン。ある日突然、留守番中のウォルターが失踪する。半年後、息子が発見された知らせを聞き再会を果たすも、そこには彼に似た見知らぬ少年が……。
衝撃の実話。子を思う母の心と行動力に揺さぶられる。それと同時に警察の汚職や腐敗に憤りを感じずにいられない。一体ウォルターはなぜ、どこへ連れ去られたのか。

ヘルタースケルター
芸能界のトップスター・りりこ。彼女は、目玉、爪、髪、耳、女性器以外は全て作り物という秘密を抱えている。全身整形の後遺症、生まれ持って美しい人間との出会い、美の崩壊。頂点から転げ落ちる恐怖は、大きな事件へと繋がっていく。
近年の社会問題にもなりだしたルッキズムや外見至上主義を一足先に取り扱った2012年の作品。醜形恐怖症が上手いこと描かれている。人間らしい美しさに気付き、きちんと段階を踏んで手に入れられなかった場合、誰でもこうなりうるのだろう。今の時代なら尚更である。

LAMB/ラム
新進気鋭のフィルム制作会社「A24」のスリラー作品。羊飼いを営む夫婦が主人公。出産に立ち会ったある日、「羊ではない何か」が産まれたことで徐々に生活が崩れ出す。
同じく「A24」制作の作品にはかの有名な「ミッドサマー」とか「ライトハウス」とかがあるわけだが、これらの作品に共通して「宗教」とか「神話」のエッセンスが多分に含まれている。なのでその辺の予備知識がないと作り手側の意図や演出の意味を掴むことができず、このシーンは何を示唆していてどういう意味が?となってしまう。自分にはちょっと難解だったかも。

レクイエム・フォー・ドリーム
アメリカに住む普通の男女4人が、ドラッグ・薬物によって人生を破滅させていく様を描いたサスペンス。救いがなさすぎるし、主人公のお母さんが不憫過ぎる。どこまでが幻覚でどこまでが現実なのか次第に分からなくなっていく。彼らの生活はどこから狂い始めたのか。ちなみに、2009年のイギリスの映画雑誌において「落ち込む映画」ランキング1位を獲ったらしい。

ヘレディタリー 継承
祖母を亡くしたばかりのある一家。主人公である高校生のピーターとその娘・チャーリーは、祖母から「何か」を継承していた。悲しみから立ち上がろうとする一家を異変、超常現象、そしてそれ以上の恐怖が襲う。祖母は一体何を遺していったのか。
日本と海外のホラーにおける明らかな相違点として「宗教」の概念があると考えている。というのも、海外のホラー作品は悪魔の仕業でした悪魔怖いー、みたいなのが非常に多い。これが日本人(主語が大きい?)からすると馬鹿馬鹿しく見えるのだが、向こうの人たちは割と本気で悪魔の存在を信じて、その手の災厄を本気で恐れているらしい。今作もご多分に漏れずそういう作品なのだが、上記の理由から全くホラーみを感じることができなかった。やっぱり「パラノーマル・アクティビティ」くらいが丁度いい。

セブン
七つの大罪にまつわる事件を起こす連続殺人鬼を追った、二人の刑事を描いた作品。観たのがだいぶ前なので記憶がにんじんしりしりレベルで薄っぺらくなっているが、とりあえずラストの胸糞が悪すぎる。

ライトハウス
ニューイングランドの孤島、灯台守を務める二人の男たち。4週間にわたって灯台と島の管理を行うのだが、嵐がやってくる。
孤島、大嵐というだけで既に息が詰まりそうな一作。2019年公開にも関わらず画面が白黒。狂気と幻想が入り混じる。夜中に部屋を暗くして観ると意識が持っていかれそうになるほどである。A24作品のご多分に漏れず、神話や伝承などの知識が要るため、観ている間よくわからない場面が結構多かった。

時計仕掛けのオレンジ
管理された未来社会で、悪辣なエネルギーを持った青年たちの反抗を描いた作品。
公開当時社会問題になった怪作。不気味と狂気の間からこちらを窺う妖しい高揚感。世界観、言葉回し、ファッション全体が妙に噛み合ってなくて歪んだ感じが段々クセになる。「シャイニング」と並ぶキューブリック作品の代名詞。人間が本来持つ衝動と暴力性。タイトルが意味不明だが、「Queer as a ClockworkOrange」=「表面上はまともだが、中身はかなり変」という意味らしい。

シャイニング
冬季期間だけ封鎖されるホテルに、家族でしばらく住むことになった男。不思議な能力を得た息子をはじめ、奇妙な現象と邪気に次第に飲み込まれていく。
破れたたドアからおじさんが顔を出している例の画像がこれ。キューブリック監督作品、モダン・ホラーの金字塔。正直なところ怖さ自体は大したことないのだが、それよりも演出や構図等の表現技法が高く評価されているようである。あと奥さん役のウェンディ・トランスの洋服が可愛くてセンス抜群なのが気になる。

羊たちの沈黙
若い女性が皮を剥がれる猟奇的殺人事件が発生。FBI訓練生の主人公・クラリスは、猟奇殺人を犯して獄中にいる天才精神科医・レクター博士から助言を得るように命じられるが……。
サスペンス・ホラーの金字塔。レクター博士は現代でいうサイコパス。実は「知的で冷酷淡々としたタイプの犯罪者」の元祖なのだそうで、2000年初期の「アメリカ映画100年のヒーローと悪役ベスト100」で悪役部門の1位を獲った。とにかく不気味さ、じりじりとした恐怖感に全振りした2時間。ラストまできっちり恐ろしい。あとジョディ・フォスターが美人過ぎる。

メランコリック
名門大学卒業後、フリーター生活を送っていた主人公。ひょんなことから銭湯で働くことになったが、その銭湯は閉店後の深夜に「人を殺す場所」として貸し出されており、更に同僚は殺し屋だった。
物騒な内容のわりに、読了感の高いハッピーエンド(?)。「憂鬱」を意味するタイトルとは対照的に、主人公が向上心ありありのポジティブ人間なのがシュール。

万引き家族
壊れそうな母屋に住む5人。夫婦と妻の妹、息子、の4人は、家の持ち主である祖母の年金を目当てに転がりこんだ。足りない分は万引きで賄う生活。ある日、近隣の団地でひとり震えていた幼女を連れ帰り娘として育てるが、ある事件を機に、次第に家族の生活は引き裂かれていく。
金銭の貧しさと、精神の貧しさの両方を見せつけられることで、残酷なシーンなどないのに鬱屈とした気分にさせられる。糊口を凌いで楽しそうに慎ましく身を寄せ合って生きている彼らを見ていると、悪気が無いばかりにしかしながら尚更にモラルや道徳とは一体……という気にさせられる。色々問題提起をしてくる一作。この手の作品のリリーフランキー、演技の安定感が凄い。

犬鳴村
九州屈指の心霊スポット・旧犬鳴トンネル。その近くには日本政府の統治が及ばない犬鳴村と呼ばれる集落があり、入ったら戻れないという都市伝説がある。これは果たして真実なのか。
1時間48分をドブに捨ててしまった。本当にあった心霊ビデオベスト100を借りて「ベティーの誕生日」を観ている方がまだ怖い。ちなみに驚かせてくるシーンなどを告知して、更に怖くなくさせてくれる「犬鳴村 恐怖回避ば~じょん」なるものがあるが、そっちを観てシュールギャグ風な演出で笑う方がまだだいぶ有意義。やはり日本のホラー映画は「リング」を越えられない。

グリーン・インフェルノ
慈善活動に勤しむ学生グループが、森林伐採により絶滅に瀕している部族を救おうと現地に乗り込む。しかし、飛行機はエンジントラブルを起こし墜落。さらに、その部族は食人族だった。
後味悪かった記憶。これ何が凄いかというと、エキストラに本物の部族を使っている点。演技とはいえそんな人々に食人族の演技を教えこんだというのだからリアリティの塊でしかない。

鑑定士と顔のない依頼人
ミステリー作品。世界中の美術品を仕切る天才的鑑定眼のヴァージル。あるとき屋敷の身辺整理を引き受けたが、依頼人は絶対に姿を現さない。不審で奇妙な依頼の目的と結末は。
タイトルから絶対に予測できないラスト。大きなテーマは「いかなる贋作の中にも必ず本物が潜む」らしいのだが、鑑定士でも流石に見分けることのできなかった真贋とは何か。ほろにがビターエンド。にしてもこんな目に合う必要があるのだろうか。

真夏の方程式
夏休み、両親の都合で一人、親戚の旅館で過ごすこととなった小学4年生の少年・恭平は、向かう電車の中で湯川と出会う。同じくして海辺の町の海底資源開発計画の説明会に招かれていた湯川。彼が宿泊する旅館の近くで、変死体が発見された。被害者は元警視庁の刑事であり、草薙と共に独自の捜査を行っていく。
探偵ガリレオシリーズの劇場版。子供嫌いの湯川が少年と実験をしたり物事を教えたりのシーンが微笑ましい。少年の旅館で発生した事件とこの街との因果は何なのか。湯川どうこうよりも少年の「ひと夏の出来事」としてこの事件を捉えると、彼の成長が味わい深い。

子宮に沈める
大阪二児放置死事件を題材にした作品。シングルマザーとなった由希子は、夜の仕事を始め、次第に家事や育児が疎かになっていく。現実逃避のためにホストに嵌まり、交際を始め、そして子供たちは……。
これ以上ないほど鬱屈とした社会派フィルム。一体誰が悪く、誰の責任なのか。どうしたら防げたのか。救いが無さすぎる。作り物だと、映画だと分かっていても、二人の子供の置かれた状況はとてもでないが直視できない。料理も作れない、外にも出られない。缶詰の開け方が分からず食事を摂れないシーンがきつすぎるがまだまだ序の口だった。気になる場合はWikipediaで「大阪二児放置死事件」をそのまま調べると本作品のあらすじが分かる。ちなみにこの映画は、児童虐待防止全国ネットワークの「オレンジリボン運動」推薦映画に認定された。

ドキュメンタリー

フード・インク
アメリカの食肉やコーン・大豆などの生産・販売・供給を牛耳る巨大企業の陰謀に迫るドキュメンタリー。
自分が普段食べる食品が手元に届くまでを想像できるようになる映画。良いものが安く早く手に入る時代の裏には、遺伝子組み換え、不衛生な家畜の飼育、屠殺、不法行為などが潜んでいるかもしれない。利潤追求を優先することで脅かされる食の安全性を問う。

スーパーサイズ・ミー:ホーリーチキン!
「30日間マクドナルドの商品だけ食べ続けたらどうなるか」の実験を行った「スーパーサイズ・ミー」の続編。ファストフード店が優良な店舗ばかりになったのかどうか調べるため、監督・モーガンは、自らファストフードファストフード店を経営し、答えを見つけ出す。しかし、養鶏に携わったことでこの業界の闇の部分に気付く。
この監督のドキュメンタリーは面白い。スーパーサイズ・ミーについては小学校時代の教科書か何かに載っていた記憶がある。健康志向が高まる昨今だが、ファストフードは本当に健康になったのか。上記フード・インクと同じく、アメリカの養鶏業界が大手による寡占市場であることに触れている。果たして正しい食の健康とは?

ミュージカル・音楽

コーダ あいのうた
マサチューセッツ州。海辺の町に暮らす少女は、聾唖者である両親と兄のサポートをしている。そんな中、彼女は進学先で入った合唱クラブで、歌を歌うことへの憧れ、夢を抱く。
聾啞者と健聴者の社会的・精神的な隔たりが描かれている。ただ聞こえないというだけが問題なのであればまだ救いがあるが、彼らを見ていると事態は深刻である。さて、耳の聴こえない彼らにも聴こえる「あいのうた」とは一体どんなものなのだろうか?ちなみにキャストの何人かは本物の聾啞者である。

グレイテスト・ショーマン
失敗を繰り返しながら奮闘する興行師が主人公。個性豊かな演者を集めたフリーク・ショー(見世物小屋)を始めて成功を収めるが酷評。しかし彼は、挑戦を続けていく……。
これまた実話。今の時代に必要な多様性の尊重と受容。実在したP.T.バーナムの言葉によれば「最も崇高な芸術とは、人を幸せにすることだ」だそうである。劇中歌「Never Enough」には思わずうっとりしてしまった。YouTubeで今でも聴けたと思う。

アニメーション・アニメ

AKIRA
近未来の日本、「ネオ東京」を舞台にしたアニメ映画。暴走族のリーダーである主人公・金田たちが、ケンカ争いの最中、政府に連れ去られた鉄雄を取り返す中で陰謀に巻き込まれていく。人類の希望「AKIRA」とは何なのか?
AKIRAという作品の存在自体は知っていたけれどもこれは衝撃的過ぎた。サイバーパンク風味の近未来チックで頽廃的な日本、それもちょうど一昔前の人が空想していたような「未来」の描き方がとにかく刺さり過ぎる。作画の細かさもさることながら、世界観の設定にとにかく引き込まれる。金田たちの威勢だけ良い感じ、粋がってるけどお茶目な感じも親しみやすいアクセント。念動力に目覚めたばっかりに振り回される鉄雄が可哀想になってくるが……。「AKIRA」が当時のアニメーション製作にどれほどの衝撃をもたらしたかについては、作者の大友克洋氏の名前をとって「大友以前・大友以後」と呼ばれていることだけで十分理解できるだろう。これがなかったらエヴァとかもなかったかも。公開当時から40年経った今なお語り継がれるのも納得。本当にオススメ。テーマやメッセージ性が40年前の作品とはとても思えない。さんをつけろよデコ助野郎。

「物語」シリーズ
化物語~暦物語らへんまで。正直なところストーリ―展開よりも表現技法や台詞選び、言い回しが好きで観てた。好きなエピソードはまよいマイマイ。

魔法少女まどか☆マギカ
ダークな魔法少女ものの元祖。当時は斬新だったようだが、今観ても展開にさほど驚きはないような。マミさんはビックリだけど。自分の感受性を恥じた。まあ面白いと思う。

交響詩篇エウレカセブン
エピソード長すぎてうろ覚えだけどかなり良かった。アネモネとタイプジ・エンドが出てきてやられる所までは話の起伏がなくつまらない。エウレカ離脱~星に願いをまでを観るアニメ。レントンとエウレカのお互いを想う気持ちでニルヴァーシュが動く?みたいなコンセプトが凄く新鮮だったように覚えている。斬新なロボットアニメだった。エウレカよりアネモネ派。

おまけ 特におすすめしたい10作品(2024年時点)

◇ショーシャンクの空に(ドラマ・ヒューマン)
◇マイ・インターン(ドラマ・ヒューマン)
◇スタンド・バイ・ミー(ドラマ・ヒューマン)
◇キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(ドラマ・ヒューマン)
◇ジョー・ブラックをよろしく(ラブロマンス)
◇君の名前で僕を呼んで(ラブロマンス)
◇きっと、うまくいく(コメディ)
◇テッド(コメディ)
◇冷たい熱帯魚(ホラー)
◇AKIRA(アニメーション)


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