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石川宏千花「UFOはまだこない」

2011年発表。著者が1969年生まれなので、この作品を書いた頃の著者と、今の私は同じくらいの年齢になる。

先日、三歳の息子と一緒に自転車で買い物に行った。その帰り道にあった話。
私の住む集合住宅の駐輪場への道は狭い。入ろうとしたが、隣の部屋の中学生、リク君とその友達が徒歩で出てくるところだったので、私達は入り口脇で待つ姿勢を取った。
すると、リク君は駐車場への柵をひらりと飛び越えて、私たちが入るのを優先してくれた。連れの子は飛び越え慣れてないので足が引っかかって困っていた。

お隣さんの子であるから顔見知りである。去年までは小学生だったリク君の軽やかな気遣いに、私は瞬時女子中学生になった。キュンとした。実態はおっさんだが。
その時、リク君を「石川宏千花の小説の登場人物みたいだ」と思った。

そんなリク君と同じ中学一年生の亮太と公平と、その周辺に生きる人たちの話。学校生活が気に入らなかったり、いろいろめんどくさいことがあったり、自分たちの力で変えられることがあることを知ったり、自分たちの力ではどうにもならないことを知ったり、という話。

ヤングアダルト、と呼ばれる本のジャンルがある。主に中高生向けの本で、児童書と大人向けの本の間に位置する。昔なら「ジュブナイル」と呼ばれていた。

マカロニえんぴつに「ヤングアダルト」という曲がある。



夢を見失った若者たちは
希望を求めて文学を
はたまた汗まみれのスマートフォンを
握り締めて詩を書き溜める
ハロー絶望
こんなはずじゃなかったかい?
でもね そんなもんなのかもしれない
ぼくらに足りないのはいつだって
アルコールじゃなくて愛情なんだけどな


ヤングアダルト小説で書かれる世界観がよく描かれている。
元々少年少女向けの小説を飛び越えた読書人生だったので、その辺りが新鮮に響く。昨年「拝啓パンクスノットデッドさま」を読んで以来、石川宏千花さんの本は五冊目となる。この積み重ねの一番大きな理由は、ふとTwitterで呟いた「拝啓~」の感想に、作者自身が反応してくれたことにあると思う。「次、何を読もうか」と思った時に「そうだ、石川さんの」となりやすい。

子どもの相手や家事の合間に読みながら、ラスト付近で泣きそうになったがどうにか押し留めた。
もうじき四十一歳の中年だから。






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