短編小説 「隣人と生活」
働かなくなった私は、スマホを見るわけでもなく、本を読むわけでもなく、テレビを見るわけでもなく、何かするわけでもなく、ただ布団の上で横になり壁を見ている。いや、正確には見えない壁の向こう側を見ている。アパートの住人なんて誰も知らないが、ただ、私の部屋の隣の住人を妄想し、ボーッとしている。
大したことをしていないようだが、私には大きな発見だったのだ。決して、興味を持つ事がなかった隣人に興味を持った。スマホの中の騒音やテレビの砂嵐よりも、何も音を立てずに静かに暮らしている隣人