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音楽家と美容師と相談員と主婦

先日、たまたまテレビを観ていると、あるオーケストラに所属する奏者の方がこのような感じのことを言っていた(一語一句は覚えてないのだけど)

「このコロナの自粛時期、ネットで『オーケストラなんてたくさんあるんだし、この機会に減っても良いのでは』『生きてく上で音楽や芸術は必要ない』というような書き込みを見てしまって、ショックを受けました。

私たちが保育園や高齢者施設などで演奏する時、大抵の人は最初、おしゃべりをしてたり落ち着かなかったり集中してない様子もあるのだけど、演奏していくうちに次第に表情が少しずつ変わってきて、目をキラキラさせて聴いてくれるようになっていくのが分かるんです。

だから、私は、音楽は人の心に直接働きかけられるものだっていう自負があるんです。」


目から鱗だった。久しぶりに驚きと感動で心が震えた。何故かと言うと、この方がおっしゃっていた事は、以前私自身が子どもたちと関わっていくなかで感じていたような感覚と全く一致していたからである。ツールは違っていても、人と人とが触れ合う瞬間、リレーションが生まれる喜び、なるほど、音楽の世界もまさにこのやり取り、言語を超えたコミュニケーションと何の変わりもなかったのかぁ。と。感動と納得で涙が出そうなほどだった。


そしてその直後、私は美容室に行くことになったのだけど、そこでもまた驚く言葉を耳にする。初めて行った美容室、一対一で接客なさるスタイルをとるその美容師さんは、全てが細やかで優しくて声や話題も私には丁度よい温度感だった為、緊張はすぐにほぐれた。

お話してるなかで美容師さんが、

「これが良いことかどうかは分からないのだけど…本当は、地域の方ともっと連携をとって、お客様のタイミングに予約の空きがなかった場合や、この方にはこの美容室が合ってるのではといった場合、近くの美容室や要望にピッタリだと思われる所を紹介してあげたいな、と思ったりするんです。そのことがお客様の満足に繋がるかどうかは葛藤するんですが…

私もどのジャンルもできるようなスキルを身につけていかなきゃとは思うけど、やっぱりそれぞれのお店のカラーや特化したものがあるし、いろいろなお客様やその要望があるから、お店もそうあって良いと思うし…」

というような事を話してくれた。私はこれまた目から鱗が再び落ちて、なんでこんなにタイミングよく二度も落ちるものかと驚いた( ;∀;)

この考えもまた、まさに私がやってきた仕事、そして目指していたことと全く同じだったからである。相談員は、来談する方の話を聞くだけではなく、繋ぐことや環境をコーディネートすることも大切な仕事だった。本人がどうしたいのか聞いたり、時には提案して選択肢を広げてみたり。

学校により近い登校支援が必要なのか、それとも伸び伸びとしたフリースクールのようなところなのか、はたまた個別かホームスクールか…その子それぞれにタイプや置かれてる状況や段階が違うから、より視野を広く、あまり固定概念に囚われずに、多様性や柔軟さを持ちつつ、その子のペースを見ながら繋げていく…。そのために連携は必須だったし、その子を理解するために、そして周りの環境を理解するために、勉強し続ける必要があった。世界はめまぐるしく変化していて、1秒ごとに変わっているなか、同じように変化していく子どものことを理解しようともせずに、共感も提案も偉そうなことは一言も言えないと思っていた。その子の世界を少しでも知れるように観察と勉強を重ねて、自分自身の得意不得意や自分が持つカラーや限界も把握して…そうして初めて提案ができるのだけれど、大切なのは、それを本人が意思を持って決断すること。結果がどうであれ自分で選んだことに納得さえできれば、もう自立の一歩を踏んでると言っても良いのではと思うほど、大切にしたいと思っていた。


美容室は、私がいた利益とは関係のない教育機関でのお仕事とは全く違う。まだ営業一年ほどの新しい美容室をオープンされて、コロナの影響もありご自身の経営についても色々と大変さはあるだろうことは私にでも少しは想像できる。立っている場所はまるで違う。なのに、同じようなことを思って試行錯誤して葛藤されていたのだ。


みんなすごいなぁ。奮闘してるなぁ。励まされるし一人じゃないんだなぁ。私が思ってたことは間違いじゃなかったんだなぁ。そう素直に思えた。不思議なことに、同じ職種の仲間に囲まれていた時より遥かに…

職種や立場や環境やスキルや持ってるツールが何もかも違っていても、人と人、心と心が通い合うことを大切にするという価値観が同じなのか何なのか。。とにかく、各々で同じように奮闘したり感動したりしている人たちがいる。そう思えた時に、今はただの主婦、話し相手と言ったら夫とワンコくらい、狭い世界の中で生きてることだけに必死になってる私でも、繋がっているような…なんとも言えない心強い連帯感のようなものを感じた。

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