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ガチパラっ!

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記事一覧

ガチパラっ!(18)

「このあと、北海道も行くんですよね」 「北海道の…」 「函館です」 アナは相変わらず、食い気味だ 北海道は広いという説明をするつもりで、それだと最終的には「どこに行くのか」となるだろうから、アナがち間違ってはいない そもそも北海道が広いかどうかなんて、わざわざ俺が説明する必要もないことだしね 南アフリカから来たアナにとっては、広さの基準も異なるかもしれない 黙っていれば、何しに行くのか話始めると思っていたが… そうそう、これは坂越湾の視察スケジュールを決めてい

ガチパラっ!(17)

アナに紹介された佐伯恭史郎についても語らせてください 佐伯恭史郎は、地質学者で、歳の頃は40代前半から中頃 九州大学で教鞭をとっていたり、大手ゼネコンで働いていたこともあったとか いずれにしても、日本では主に九州をメインに活動していた 「阿蘇山と、桜島と、雲仙普賢岳が一斉に噴火したら、どこに逃げたらいいと思う?」 彼とは、結局、滞在中に何度も酒を酌み交わすことになり 酔ったときの彼の語りというか、口上というか、がひどく印象深かったので、僕なりにまとめてみました

ガチパラっ!(16)

登場人物列伝、本日は 棟方 蕪蕪(むなかた かぶか) 本人は「カフカ」と名乗っている。海外にいるときは特に。正確には「かぶか」 「下の名前の読み方は、株の価格と同じだ。ムム、でも、かぶかぶでも、ブカブカでもねーから」 これが本名なら、命名者はかなり粋だ 見た目から推測すると35歳くらいだとは思うが、正確な歳はわからない。38だと、言っていたような気もする 大使館の職員だったり、外交官だったり、時に内閣官房付きだとか、内閣情報官。肩書きはその時々によって異なるが、本

ガチパラっ!(15)

はじめてアナに会ったのは、銀座の鮨屋だった 大使館の人と、大使館以外の場所で会う 「消防署の “ 方 ” から来た」 などとかたり、消防署員でもないのに 高い消化器を売りつける なんてことはないと思うが、ふとよぎるくらい、なんとなくな違和感があった 何度かメールでやりとりをしたのち、とりあえず顔合わせを、ということになって、てっきり大使館に伺うものだと思っていたからだ 東京の南アフリカ共和国大使館は、皇居にほど近い半蔵門のオフィスビルにある 半蔵門といえば、服部

ガチパラっ!(14)

今日は、登場人物について語らせてください まずは誰よりもこの人でしょう アナ・スヴァールバル Anna Svaalwalt 日本人相手や日本で仕事をする際には、 Anna Kiyotsune 清常アナ 「女子アナではありません」といったやりとりが定番 南アフリカは、せっかくイギリスから独立したのですが 元々が他民族で、4つの大きな先住民の部族と、征服統治していた白人、そしてその「混血」とが入り乱れ、混沌とした社会となっている 当然、社会情勢も不安定で、特に20

ガチパラっ!(13)

「ガチパラっ!」を読んでくださっている方 これから読んでくださる方へ【お手紙】 「日本が沈没する」っていうのを信じている人たちがいましてね 「日本国民1億人が ” いざ!” というときに ” 南アフリカ ” にお引越し、移住できるように準備してるんですよ」っていうんです リーダーは、高度経済成長からバブルを戦い抜いた元商社マンの方で 歳の頃は、もう還暦を優に超えていると思います 冗談なのか本気なのか、小松左京さんの「日本沈没」を読んで 「日本が沈没する!って心から

ガチパラっ!(12)

「“ 進撃の巨人 ” の壁みたいですね」 「日本の人気マンガですよね?」 デッカい巨人が襲ってくるから、仕方なくデッカい壁をつくって防ぐ しかもそいつらは人を喰うらしい 「よく知ってますね」 「こないだ、別の日本人の方も、同じことを言ってたんですよ」 2010年のサッカーワールドカップ以降、南アフリカの治安は悪化する一方だった それまでもけして良かったわけではないが、戦争でもないのに「年間一万人以上が殺される」ほどの治安の悪さではない 少なくとも、高い高い壁で

ガチパラっ!(11)

神社の前を大名行列のような一行が通り過ぎていく 和の装いで、御神輿のようなものも担いでいた 「お祭りだねぇ」だとか「風物詩だねぇ」だとか なんら不思議でもなんでもない 疑問が浮かんだとしても、きっと「なんの行列だろうね」だとか「なんのお祭りだろうね」くらいのもんだろう 日本のどこかであれば だが、いまは… このままだと頭の中から疑問符が溢れ出してしまう そんな状態に陥っていた 誰もがそうなるのではないだろうか それが南アフリカで しかも、都市でも、観光地で

ガチパラっ! (10)

「あ、あのカキの生産者さんだ…そういうことかぁ」 広間に置かれたモニターで、神社の祭りの映像を観始めたところで、アナが呟いた 山の中にある神社をでて、坂を降ったところにある案内所 赤穂浪士で有名な赤穂藩の殿様の別荘を改築したという 小さな案内所の中に、坂越浦の歴史が詰まっていた 最近つくられたという観光用の紹介映像の中に、先程の神社に祀られていた「絵」と同じシーンを見つけたのである 「というわけで、あの絵だけ新しいのさ」 物知りアナちゃんとしては、気づけなかった

ガチパラっ! (9)

「神社に逃げたから助かったって人、たくさんいたんですよね、震災で」 無事、兵庫県は坂越湾にたどり着いた、アナたちは、少し高台にある神社にいた この神社からは、湾を一望できる バラ子さんが呟くように、そんなことを口にした 一緒にカキの活動をしていると、宮城や岩手、つまりは三陸に行くことも多い そこで、震災の爪痕をたくさん観てきたし、意図せずとも様々な話を現場から、生産者たちから聴くことになる 坂越湾は、ちょうどカキの産地だから、ふと思い出してしまったのだろう あれ

ガチパラっ! (8)

熟女好きの和尚は言う 「人妻、巨乳、しかも童顔だなんて、お宝だ」と 本当にホンモノの和尚。とある寺の住職にして、酒蔵を買収したり、ミスコンを主宰したり 相当な生々しさを誇る逸材ではあるが、今回のストーリーには直接は関係ないので、一旦ご退場、泣く泣く割愛 また別の物語があればご登場願うことにして、とりあえず、人妻に話を戻したい そもそも釈明の必要などない それに若い女性とデート?していることを釈明する必要など、さらに無く(たぶん) 一に、美味しいお鮨を食べに行ったこ

ガチパラっ! (7)

「清常さん ” キ・ヨ・ツ・ネ ” ですよね」 「そうです!なにかあるんですか?」 「いえね、お世継ぎというじゃないですか。世を継ぐ。継ぐとはつまり継ぎ足す」 「はい…あっ…」 「気がつかれましたか? “世(よ)”を足したら、キヨツネになるのだとしたら、“ヨ”を抜いたら…」 「キツネ!!!」 「そう、ここ ” 伏見稲荷神社 ” の神様ということになります」 昔は、天皇ともなれば時の頂点であり、絶対権力者 皇太子、世継ぎともなれば、常に命だけでなく、様々な計略や

ガチパラっ! (6)

船が止まったと思った途端、辺りを照らしていたライトが消えた 空には月も星もなく、本当の真っ暗闇 目も慣れず、辺りの様子もわからない… 突然、カラダが宙に浮いたのを感じた まさか…海に…落ちたのか…? 何も見えない なにかを叫んでいるのだと思うが、口に海水が入り込みやすくしているだけ 塩辛い海水が口だけではなく、穴という穴にどんどんと入りこんでくる 息ができない 必死に手足をバタつかせて、浮き上がろうと足掻いた 船体らしきものに手が触れた なんとか掴もうと

ガチパラっ! (3)〜(5)

清常アナは銀座の街を歩いていた 待ち合わせまでは、まだだいぶ時間がある 世界でも名のある都市に滞在するときは、待ち合わせよりも“あえて”早めに出かけるようにしていた そして、宝石店や、ジュエリーショップを巡る 本人曰く、あくまで「市場調査のため」とのこと 今日の待ち合わせの相手は、なかなか有能だが、特に人間関係でトラブルが絶えない人物らしい ざっと調査データを見ただけでも、少なからずトラブルがあったことが診てとれた そこで紹介者に相談し、一計を案じることにした