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ガチパラっ!(18)

「このあと、北海道も行くんですよね」

「北海道の…」

「函館です」

アナは相変わらず、食い気味だ

北海道は広いという説明をするつもりで、それだと最終的には「どこに行くのか」となるだろうから、アナがち間違ってはいない

そもそも北海道が広いかどうかなんて、わざわざ俺が説明する必要もないことだしね

南アフリカから来たアナにとっては、広さの基準も異なるかもしれない

黙っていれば、何しに行くのか話始めると思っていたが…

そうそう、これは坂越湾の視察スケジュールを決めているときのやりとり

「何…」

「ワインです!」

どうせ食い気味で遮るなら、自分から話だせよ…

「ブルゴーニュって知ってます?」

「フランスの…」

「そうです、有名なワインの産地なんですけど、温暖化の影響で気温が上がりすぎて、肝心のブドウがちゃんと育たなくなってしまったとかで」

「へぇ、それで…」

「北海道の函館が選ばれた。すでにフランスのワイナリーができてるんですよ」

この話は、知っている

温暖化に危機感を感じたフランスのワイナリーが、同じようにオーストラリアや南アフリカにも進出

南なので、暑い!というイメージを持たれがちだが、南半球は「南に行けば行くほど寒い」

オーストラリアも南に行けば、四季も折々、同じ緯度にある南アフリカも同じ理屈が通用する

「で、そこへは…」

「なんでフランスのワイナリーがそこにあるのか、もうご存知のはずですが。それがわかっているのになぜ聞くんです?この話はもういいです」

はい、その通りですがね

アナはとかく気位が高い、つまり負けず嫌い

結局は、オーストラリアの後塵を拝して、同じことをしている

フランスの都合とはいえ、ワイン造りに関してチカラを借りている

そういった背景だけで、気に食わないらしく

「でもね、なんの品種を育てて…」

「ピノ・ノワールです。南アフリカは、ほかにもいろんな国のいろんなブドウを育ててるんですよ。オリジナルのブドウもあります」

「ところで、いつまで…」

「日本には、あと10日、そのあと南アフリカに戻ります。カキさんに南アフリカに来ていただく日程はメールで調整させてください」

北海道…函館のワイナリーか

いつのまにか検索していた

ブドウ畑から函館の街を一望できる高台、なかなかの立地

さぞ夜景もキレイだろう、なにかと有名な夜景だ

オーベルジュも計画に入ってるのだろうか

オーベルジュとは、フランス料理やワインを楽しむ宿のこと、日本で言うなればペンション

フランスではワイナリーがお城使って営んでいたりする

一度、行ってみたいな…

「あの…」

「今回は一緒には行けないです」

温暖化対策で移住したワイナリー

なにかしらかこつけて仕事にしますかね…

(19)に続く


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