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ガチパラっ! (3)〜(5)

清常アナは銀座の街を歩いていた

待ち合わせまでは、まだだいぶ時間がある

世界でも名のある都市に滞在するときは、待ち合わせよりも“あえて”早めに出かけるようにしていた

そして、宝石店や、ジュエリーショップを巡る

本人曰く、あくまで「市場調査のため」とのこと

今日の待ち合わせの相手は、なかなか有能だが、特に人間関係でトラブルが絶えない人物らしい

ざっと調査データを見ただけでも、少なからずトラブルがあったことが診てとれた

そこで紹介者に相談し、一計を案じることにした

「大使館のオフィスで、いきなり仕事の話をするより、まずは鮨屋で軽く様子見からがいいかもしれん。店も紹介するよ」

紹介されたのお店が“たまたま”銀座

「銀座で鮨」
だって仕方ないじゃない、仕事なんですもの

立ち並ぶお店は変わってしまったりしているのだろうけれど、銀座の雰囲気は変わらないわ…などと懐かしんでいると、お目当ての店を通りすぎていた

ハリー・ウィンストンは、ひとりで来るところではないわね…予約も必要だし、別の人生を決める「約束」も必要…

また通り過ぎそうになりながらも、無事、お目当てのお店に入ることができた

「このダイモンドは、どこのかしら?」

「カナダですね。カナディアン・ダイヤモンドになります」

最近特に増えた、この産出国、この言葉、このセリフ

わかってはいても、なんだか息が詰まり、胸のあたりがチクチクしたり、キュウっとなったりしてしまう

だって仕方がないじゃない、南アフリカ人なんですもの

このあと3軒ほどまわったところでタイムアップ

もう一軒くらいは行けそうだったが、少し早めに着いておきたいし、待ち合わせ場所へと向かうことにした

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ガチパラっ!(4)
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いままで当たり前のように高値がついて、当たり前のように売れていたものが、突然、値崩れしたり、売れなくなったとしたら

それが、強力なライバルの出現によって巻き起こされているのだとしたら

皆さんなら、どうしますか?

値下げ競争に付き合う

ライバルの邪魔をする

もしくは、新たな商品を開発する

南アフリカは、いままさに、その渦の”ど真ん中”にいる

カナディアン・ダイヤモンドの登場と隆盛

広大に拡がっている山脈という山脈に「鉱脈」が発見され、従来よりも比較的 楽に、かつ安全に採取できてしまう、それがカナディアン・ダイヤモンド

透明度も高いとされ、瞬く間に世界の市場を席捲した

長きに渡り、南アフリカの屋台骨を支えて続けてきたダイヤモンド産業が、大きく揺れ動く

ダイヤモンド産業が揺らいだとはいえ、それでもなお、恵まれた自然や、豊富な資源に溢れており

が、それがさらに “ アダ ” となってしまう

植民支配から解放後の民族間の争い

いまだ続く白人至上主義、たくさんの部族たちが、それぞれの存在を主張し合う

「カラード」と呼ばれる混血も、いまでは多数派と呼べるほどに増えた

が「ボーア人はフランスが由来だ」とか「どこの国がベースの混血か?」という暗黙の境目のようなものがあり、けして団結しているわけではない

尽きることのない資源
その資源の数だけ生まれる軋轢

数多の資源争いと、そこから派生する利権争い

「骨肉の争い」とは、まさにこういう争いのことを指すのではないか

資源は地域性があり、国家として管理するのが難しくなっていく

となると、国家として、もはや「南アフリカ」とはなんなのか?

共和国として、ひとつである必要があるのか?

実は、フランスも「4つの別々の国」から成り立っている共和国だ

大統領もそれぞれ別にいて、法律も違う

カキの産地が、ボルドー王国とブルターニュ王国にあるのだが、それぞれの生産者の間にはまったく交流がなく、日本人の私が 関係を取り持ったこともあった

だが、南アフリカと違い、フランス共和国は、その秩序を見事に保っている

なぜ?

その答えは「ブランド」という言葉に集約されているのではないか

パリを軸として世界に発信される「フランス」というブランド

同じく、世界に発信されている有名な「ブランド」たち

「フランス」であるメリットがそれによりハッキリとしているのだ

シャンパーニュ地方で造られたスパークリングワインだけが「シャンパーニュ(シャンパン)」と呼ぶことができて

あくまでフランスの法律なのに、世界中の国々が遵守していたり

余談だが「パリジェンヌ」という言葉がある

日本では「お洒落」の代名詞として使われている言葉だ

ところが、フランスの地方の人たちは、この「パリジェンヌ」を、人を小馬鹿にしたり、皮肉ったりするときに使う

日本でいうところの「腰巾着(こしぎんちゃく)」というニュアンスが一番近いかもしれない

もう昔のことになるのだが、パリに住む人々というのは、王族や貴族に「媚び諂い(こびへつらい)」そのおこぼれで生きている人たち、だとされていた

食料自給率180%
古くから現代に至るまで、フランス国民の大多数は農民であり、一次産業で成り立っている農業大国

4つの共和国、それぞれの地方の人たちは、自分のつくった作物が、肉が、チーズが、ワインが、大国フランスを支えている!という自負がある

自負、つまりはプライド

「ブランドとプライド」
この2つがバラバラの国に秩序を生み出し、ひとつの共和国たらしめている

南アフリカワインをご存知だろうか?

南アフリカ共和国としての活路み見いだすための「ブランドとプライド」

それを手に入れるために、プライドをかなぐり捨てた

少しややこしいかもしれないが、プライドとブランドを手に入れるために「プライドを捨てた」

似通った気候風土であるオーストラリアに学ぶことにした

今風にいうなら「インスパイア」

オージーワインにオージービーフ

日本でも、耳にするだけでなく、実際に口にする機会も増えたのではないか

オーストラリアは、タスマニアとの間の海峡が、非常に肥沃でたくさんの海産物に恵まれている

南アフリカも、南極との間の海峡が同じように海産物の宝庫

「南マグロ」もケープタウン沖で漁れ、マグロもマグロ漁船もたくさん海遊している

「カキ」も、オーストラリアに学びたい産品のひとつ

オーストラリアのカキは有名で、世界中に輸出され、これだけ牡蠣に恵まれている日本でも、オージーオイスターがオイスターバーに並ぶこともあるくらい

ある日、Facebookを眺めていたら、ふと一枚の写真を見つけた

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ガチパラっ!(5)
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それは、東北の震災復興からお世話になっている安良井(やすらい)社長が投稿した一枚の写真

マグロ漁船の会社を営んでいる社長さんだ

読むと「マグロ漁船の補給のためにケープタウンに寄港した」と記してある

そのレストランで撮影され投稿された、何枚かのうちの一枚

そこに写っていたカキをみて、思わず背筋がゾクッとなり、すぐに連絡をとった

「この写真のカキって地元のカキですか?」

「お店の人はそう言ってたな、なんかあるの?」

あります、あります、ありますとも!

「そのカキは…」

(6)に続く☟


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