ガチパラっ!(12)
「“ 進撃の巨人 ” の壁みたいですね」
「日本の人気マンガですよね?」
デッカい巨人が襲ってくるから、仕方なくデッカい壁をつくって防ぐ
しかもそいつらは人を喰うらしい
「よく知ってますね」
「こないだ、別の日本人の方も、同じことを言ってたんですよ」
2010年のサッカーワールドカップ以降、南アフリカの治安は悪化する一方だった
それまでもけして良かったわけではないが、戦争でもないのに「年間一万人以上が殺される」ほどの治安の悪さではない
少なくとも、高い高い壁で、街全体を囲わないといけないほどではなかった
街の外にある“射撃場”まで向かうのに、壁を越える
なんといっても、治安の悪さのおかげで、こうやって訓練と護衛の仕事が舞い込んでくるわけだ
ワールドカップのときに、南アフリカ政府が、軍の関連事業として、警備だけでなく、選手、VIPたちの警護をするために創設した民間軍事複合体
要するに、実質は軍なのだが、普通に街中に展開できるように、表向きは「警備会社」ということになっており
それが、治安の悪化とともに右肩上がりで成長している
世の中的には悪いことなんだろうが、俺たちにとってはありがたい結果を生んでいた
この日本人の訓練と護衛の依頼もそのひとつ
日本人は特にお得意様で、それには理由があった
「アナタが中国人なら、こんな訓練も護衛も必要ないんですけどね」
「金ですか?」
「それだけじゃないんですよ」
「たしかコンゴで、中国人も殺されてましたけど」
「それも中国の策謀かもしれないってことです」
「策謀…?」
「日本には軍がないですよね?中国にはあります。もし日本人は殺されたのだとしたら、きっと政府が苦情をいうでしょうが、それでおしまいです」
「なるほど、そういうことですか」
「中国は、強大な軍事力を背景に、今後、コンゴに脅しをかけられるわけです。コンゴで死んだのはたしか…何人でしたか?」
「たしか二人」
「どんな二人だかわかりませんが、これからのコンゴ支配への礎となり、ある意味、影の英雄になるかもしれない」
そう考えると、中国人の方を、日本人よりも死ぬ気で警護しないとまずいってことになるな
万が一、死なれでもしたら、南アフリカでも、さらに中国の影響力が強まってしまう
(13)に続く☟
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