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エッセイ

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2020年3月の記事一覧

冬マダニに本性をあばかれる

森のお気に入りの小路をふと思い出し、昔の写真を探し当てた。
蛇行するせせらぎに沿って蛇行する小路、ポッカリと合いた空間に図ったように配置された草と木々。
森のなかでも特にお気に入りの場所だった。
久しく森へ行かない間にそこへ入る道は荒れ果て人の出入りがなくなっていたことを知った。
それでもふと思い出し、昔の写真を観てしまったのだ。
行こう、行きたい、行くとき、行けば、、、
人が入れなくなり前よりも

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机上の思索……積み重ねた言葉が溶けて消えるとき

実生活では相変わらず傾聴を続けている。
普段はずけずけと物を言うが、傾聴では信じられないほど優しく他者に寄り添う。
発話者の苦痛をあたかも「自分事」かのように感受し、共感の限りを伝えるよう頷き、すべて肯定して聴く。
実生活では誰にも解ってもらえなかった発話者の苦悩が、傾聴で初めて他者に受け入れられる。
発話者にとって初めての「理解者」に出会う。
自分事のように聴いてくれる傾聴者である私は信頼され、

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たかが「机上の意識」……されど、そう生きることしかできない

明日で死ぬんだ、と意識すると居ても立っても居られなくなり森へむかった。死を了解した私には、森に存在するなにもかもが心を揺さぶり、光が眩しく感じた。
いつもより丁寧にカメラをむけて、最も魅力側にふれる計測針に合わせシャッターを切る。
映し出した森の存在のなかから最期の作品としてふさわしい写真を選ぶ。
明日までの“生きる”を森と写真だけで終わらせられないと感じ、傾聴をするために再び出掛ける。
いままで

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