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【書評/音声コンテンツstand.fm】子育て×読書 第12回人生の短さについて セネカ著

みなさま、読書の秋を如何お過ごしてでしょうか?

だんだんと涼しさから肌寒さへと季節も変わりつつある様に感じます。風邪の流行り出す時期でもございますので、体調管理には十分にお気を付けください。

今回ご紹介するのは・・・セネカの「人生の短さ」についてです。岩波文庫の書籍を私は持っておりますが、正直、薄いのでさくっと読めるのかと思いきや・・・そこはセネカ先生です。そうはさせてくれないんですね。

そもそもタイトルの人生の短さについてという、抽象度の高い問いにタイトルから向き合わないといけないという難易度の高さではありますが、果たして我々の人生とは・・・短いのでしょうか?

何をもって短いと言い切っているのか?大変興味深い内容です。

セネカ↓

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◯ルキウス・アンナエウス・セネカとは?

ルキウス・アンナエウス・セネカ(紀元前1年頃~65年)は、後期ストア派の代表的な哲学者です。ローマ帝国の政治家でもありましたが、セネカは多くの著書を執筆し、政治と哲学および文芸で活躍しました。その著書は道徳論や、よりよい生き方を具体的に説く実践哲学の書などがあり、人々の思想や考え方に大きな影響を与えました。

ちなみに・・・
ストア派とは・・・?
古代ギリシャのゼノン(紀元前335年頃~263年頃)が創始した哲学の学派ですね~当時のギリシャ哲学を代表する学派の一つなんです。地中海世界の中心がローマに移ると、ストア派はローマでも盛んになり、セネカも大活躍しました。ストア派の原則ですが・・「自然に従うこと」です。宇宙の大原則に身を委ねて、不安や欲望、欲求を心から取り除き、神的な自然への服従を実践する生き方が理想とされました。


【standfma/第12回/収録内容はこちら↓】

◯人生の長さについて

そもそも人生の長さについて考えた事ってありますか?

そもそも、人生は長いのか?短いのか?
個人的な話で恐縮ですが、この問いに対しては人生は長くもあり短くもあるというのが答えだと思っております。。。人によって置かれている状況や文脈が違うので、一概に長いとか短いとか結論付けてしまうのは、少し早い気が致します。

古代ギリシアの医師、ヒポクラテスがこんな事を言っています↓

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「人生は短く、学は長い」

そもそも短いとか、長いとか人それぞれ感じ方は千差万別だしループ量子重力理論的に言っても場所によって時間の長さは違う訳ですし・・・一体、短いとか長いとか・・・この抽象度の高い概念は何なのか・・・

余談ですが・・

第5第ローマ皇帝ネロの幼少期の家庭教師をしていた事でも有名ですね。(後々、死ぬように迫られたりしますが・・・)

皇帝ネロ・・・

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5代ローマ皇帝(37年~68年)は16歳で皇帝になったんですね。今で言うと高校1年生くらいでしょうか。若い。暴君として有名ですが、キリスト教を弾圧してキリスト教徒を迫害、殺戮を繰り返したり、周囲のブレーンでさえも邪魔になれば消してしまうような、冷酷非道行いをしたと言われています・・・そんなネロの家庭教師をしていた時代もあったんですね・・・

◯人生は短くない。つまらない事にに時間を使わなければ人生は長い

人生の短さについてというタイトルですが・・・つまらない事?とは一体何なのか?人によってつまる、つまらないは千差万別ですが・・・そのつまらないという事に時間的リソースを割かなければ時間は長い。

現代風に言えば無駄な飲み会や接待、時間を浪費するような行いを慎めば人生は十分に長いという事だと捉えられますよね。

以前の収録でカルロ・ロヴェッリの「時間は存在しない」に取り組みましたが、例えば山の平地と高地では時間の流れ方が違うなど同じ時間でも早い、遅いがあるなど、個人でも時間を長く感じる局面と遅く感じる局面もあるわけで、物事を様々なパースペクティブで見ていく事が大切だと感じますね。

【standfm/第56回/時間は存在しない↓】

また・・・マルクス・ガブリエルは世界は存在しなと言っています・・・
こちらも先日収録致しました。マスクス・ガブリエリの収録は今回で5回目でしたが、改めて自分の知らない世界があるのだと認識致しました。

【standfm/第117回/なぜ世界は存在しないのか↓】

時間も世界もそれぞれの意味の場においての事象に過ぎないのかもしれませんが、虫でも犬でも魚、人間・・・それぞれの環世界が存在しており、それぞれの世界を包摂する世界は存在しないという意味において世界は存在しないという事なんですよね。

環世界:全ての動物はそれぞれの種、特有の世界を持っており、その世界を主体に行動しているという概念です。ヤーコブ・フォン・ユクスキュルが提唱した概念です。

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ひとりひとり知覚している世界が違うので、例えば他者の見ている世界と自分の世界が違う事を知らずに土足で踏み入るとコミュニケーションに齟齬が出たり・・・何か話が噛み合わないな~みたいな事になるのはこのためなんですね・・・

◯パウリヌス君に伝えたい想い・・・

この書籍は多忙を極めるビジネス・パーソンであるパウリヌス君に「なぜ、そんなに忙しく働くのか?ゆっくり休んだらどうだ?」という様なセネカ先生なりの言い方で人生訓を語るという仕立てでもあります。

アリストテレスを引き合いに出していますが、アリストテレスは自然に対して「なぜ、自然の方が様々な偉大な仕事の為に生まれてきた人間より5倍、10倍の寿命を持っているのか?」の様な問いを持っていた様ですが・・・
セネカ先生はその前提を疑っていますね。

そもそも寿命が長い短いというレイヤーの話では無くて、時間を浪費しているから人生が短くなるわけで、貴重な時間を浪費しなければ人生は長いものになるだろう・・・という事です。そしてその全体が有効に活用されれば幸福な人生を送ることが出来るだろう・・・。

なるほど・・・浪費ですね。我々、時間はついつい無限だと感じていると言いますか、時間間隔が薄い事が多々あるわけですが、2,500年も前にタイム・マネジメントをしっかりやりましょうと言っているわけですから、歴史に学ぶことは多いんですね。そんな昔からもう時間を大切にしよと言っているし、改めて毎月大量にでる新刊も時には大切ですが、その新刊に書かれていることも、元を辿って行くと・・・この書籍の様な古典・原典に当たるわけで、この古典・原典を読み込むことで深みのある思考が身につき、自身のタイム・マネジメントにも良い効果を発揮すると個人的には誤読をしております。

◯自分の為に生きよ!自分の為に時間を使え!

これも堀江貴文さんや田端信太郎さんが書籍で熱っぽく語っておりますが・・・2,500年以上も前に既に熱っぽく語っていた方がおられたんですね。。
セネカ師匠は、他者の為に時間を使ってばかりだが、自分の為に時間を使うようにしよう!とさらにタイム・マネジメント論を展開する訳ですね。これは他者の存在ばかり気にをしている事もあるとは思いますが、何も現代の我々だけではなく、古代の人々も他者から才能豊富な優秀な人材として見られたいし、充実した人生を送っている人物として評価されたいという欲望があったんですね・・・今とあまり変わりないですよね。

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有名なマズローの欲求5段階説のピラミッドですが・・・いつの時代でも人間の欲求というのはあるわけですし・・・この欲とどう付き合って行くかで人生の貴重な時間を自分に対してリソースを最大限投下出来ることにも繋がりますよね。

自分の権力の正当性や権力の誇示にばかり走り、一体、長い人生の中で何がしたいのか?という抽象度MAXの問いをセネカ師匠はパウリヌス君にぶっこむ訳です。世の中は貪欲に捕らわれ過ぎている・・・無益な労働や付和雷同ばかりで自分の為に時間を使えている人は皆無ではないか・・・お互いはお互いを利用しあっているに過ぎない。それなのに、君は、かつて一度も自己を省みて、自分自身に耳を貸さなかったではないか・・・とさらに熱い語な訳です・・・

※余談ですが、晩年マズローは6段階目も発見しており、人間の欲というモノと、どう付き合うべきか?考えさせられます。

個人的な考察では・・・欲には肯定も否定もしない、ただありありと眺めてみる、観察してみる事が大切かといつも思います。

◯人生、何をするべきか?後世へ何を残すのか?

先日のstandfmで内村鑑三の後世への最大遺物を収録致しました。ご興味あればご視聴下さい↓
【standfm/第116回/後世への最大遺物↓】

この究極的な問いにどう答えますか?というセネカ師匠の畳み掛けるトークにパウリヌス君もタジタジですね・・・新入社員に対して社歴をだいぶ重ねた人生の大先輩?が熱く語るイメージを想起しましたが(そういう淡白な内容に置き換える様ではまだまだだと反省せざるを得ません)・・・

私個人的な意見では誤配により受け取ってしまった贈与をどうパスしていくのか?standfmでも収録を重ねておりますが、書籍から得られた洞察や機微は人生という旅に出かける際に武器として(飛び道具の場合も有り)使うこともできるので、大変有り難く知見を頂戴しておりますが、インプットのみでアウトプットをしないのでは、妄想が膨らむばかりで世界に対しての貢献が出来ていない状態だと認識しております。

受け取った贈与をだれにどうパスして行くのか?は私の直近抱えている日々の人生のタスクでもあります。

贈与について深く考えさせられる書籍があります。近内悠太さんの「世界は贈与でできている」です。standfmでも3回に渡り収録致しました。
ご興味あれば是非、ご視聴下さい。
【standfm/第49回~第50回/世界は贈与でできている↓】

セネカのこの問いに対する答え・・・それは・・・

「なにもしてこなかった」です。

そしてなにもしてこなかった人間が、最後になって慌てて人生の意味を探求しようとも既に遅いし、愚劣である。。。と厳しいお言葉です。
今も2,500年前もそんなに変わらないのが・・・50歳くらいから・・・仕事をフェードアウトして、60歳くらいになれば公務から解放されるだとうと、古代の人々も口を揃えて言っていたそうです。w

少し前まではそのパラダイムでも良かったのかもしれませんが・・・人生100年時代になりましたの、恐らく70歳、80歳くらいまでは仕事をしていく事になると予測されておりますよね。特にサラリーマンは一つの会社にしがみつくという働き方ではなくなると思われます。

働き方含めてマインドセットを改める必要がありますし、しなやかなマインドで状況を的確に捉えるコンパスの針が指し示す方向を見極めるリテラシーが必須となってきましたよね・・・

standfm/第104回/世界は贈与でできている↓

マインドセットには2種類あって、しなやかマインドセットと硬直マインドセットがあります。どちらのマインドセットで世界を見るかで結果すら大きく変わってきます。ご興味あれば是非、ご視聴下さい。

◯地図とコンパスのお話

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地図とコンパスのメタファーはここ1、2年でよく聞くようになってきました。これは今までは地図を見て目的地に到着出来ていたものが、地図に書いてある道が通行止めになっていたり、前に通った道がなくなっていたり、新しい道路が出来ていたり・・・

VUCAという時代を象徴する様なメタファーかと思います。VUCAは元々、アメリカの軍事用語ですが、下記の頭文字を取ってVUCAと表現されています。

V:Volatility(変動性)
U:Uncertainty(不確実性)

C:Complexity(複雑性)
A:Ambiguity(曖昧性)

つまり変化が激しくて先行き不透明だし見通しや見立てを立てにくい事をVUCA時代と呼ぶようになり、既に人事系企業のHPなどでも徐々にですが一般通念化して来ているようです。

このVUCA時代に何を残して行くのか?先日、内村鑑三の後世への最大遺物をsrtandfmで収録しました、内村先生は下記の4点について触れております(箱根で青年諸君に向けて熱い語り・・・)。

①金
②事業
③思想
④高尚な生き様

standfm/第116回/後世への最大遺物↓

宜しければ記事と合わせてご視聴ください。

いきなり内村先生は金・・・と言っておりまして、一瞬、うっ!となるわけなんですが、お金を大きく一つにまとめるにもジーニアスが必要だとも仰るので、少しホッとしますが・・・次に事業だ!!!と青年諸君に向けて煽る訳ですが、お金を上手に使うのが事業だし、事業をするのTipsが必要だと語るわけですね。

さらに・・・頼山陽などの過去の偉人を引き合いに思想が大切だと語り、最後には高尚な生き様であれば誰にでも残せるという事で講演を締めております。

◯ナラティブに橋を架けるには?

2,500年前のセネカであろうと他者との心の距離を縮めるにはやはりお互いのナラティブに橋を架ける事が一番だと思います。

これは先日もstandfmで収録したNewsPicksPUBLISHINGから発刊しております・・・他者と働くですが非常に今の我々の置かれているコロナ禍の文脈に非常に刺さります。

ナラティブとは?
解釈の枠組みとこの書籍では定義していますが、環世界の様に一人一人見ている世界やナラティブは違う訳でどうすればナラティブを共有出来るのか?相手のナラティブに耳を傾けて観察してみる。自分の箱から脱出して相手の世界像を理解する。人間はストーリーやナラティブを食べる動物だという側面があり、改めてナラティブに付いて深く考えさせられます。

対話とは?
書籍の中では、新しい関係性を構築する事だと定義されておりますが、人によってナラティブや言語ゲーム、環世界が違う事を前提に下記4つのステップで他者への橋を架ける事が可能になってきます。

①準備⇒②観察⇒解釈④介入

この4つのプロセスをフレームとして回して行く事が大切だと思います。また対話には罠があるので罠にも気を付けて行く必要がありますね。

【standfm/第115回/他者と働く↓】

オーストリア出身のユダヤ系宗教哲学者のマルティン・ブーバーはこんな事を言っています・・・

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マルティン・ブーバーは人間同士の関係性を分ける2つの考え方として、

①私とそれ②私とあなた

を提唱しており、まさに箱の話ですね。自分が箱に入る状態とは?自己正当化に走り他人のせいにしたり、環境のしにしたり・・・しかし・・・全て自分に起きている良いこと悪いことは100%自分が原因であるという真理に到達しない限り、このジレンマに苦しむ訳ですね。

箱に入ると面白いのが他者も箱に入れてしますという事です。つまりお互いが自分の小さな箱に入った状態ではお互いのナラティブに耳を傾けることが出来ず、橋を架けるという行為すら出来ないということですね。

【standfm/第19回/自分の小さな箱から脱出する方法↓】

まずは他者のナラティブに耳を傾ける為に、小さな箱から脱出しオープンマインドで世の中を見渡す事が大切だと感じますよね。

◯橋のデザインを考えるのではなく、川の渡り方を考えよ!

橋を架ける為に他者の関心が何なのか?デール・カーネギーは著書「人を動かす」の中で他者の関心事に思いを寄せることで他者とのコミュニケーションが円滑になるという本質をついた事を語っております。

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他者のナラティブに耳を傾けない限り他者との溝を埋める事はなかなか難しいのが現実ですが、自己主張ばかり貫いていると他者との関係性をうまく築く事ができない事は用意に想像できますよね?

この橋のメタファーですが、田坂広志さんの著書「直観を磨く 深く考える七つ技法」の中で語られている課題回帰の思考法を元にしております。standfmで収録済ですので宜しければご視聴下さい。

【standfm/第19回/自分の小さな箱から脱出する方法↓】

※補足

課題回帰の思考法
橋のデザインを考える人間は視野狭窄に陥るというサブイシューがありますが、橋のデザインばかりに目を取られると視野狭窄の落ちるので川の渡り方を含めて全体的に多面的にファクト認識をする事が大切ですよね。これは私の誤読ですが、レヴィ・ストロース的に言えばそもそもそのお題は正しいのか?という前提破壊やゼロベース思考も取り入れて少しレイヤーを上げて俯瞰して考える事も大切かと思います。

◯おわりに

今回はセネカ「人生の短さについて」です。個人的には人生は短いと感じています。これは人それぞれ置かれている状況や文脈が違うため感じ方は千差万別かと思います。

内村鑑三先生も言うように後世に何を残すのか?という問いから出発しても良いでしょうし、セネカの言うように時間の浪費とは?や自分の時間は毎日何に割かれているのか?というタイム・マネジメント論からスタートしても宜しいかと思います。

読書の秋ではございますが、読書をしつつこんな問いに向き合ってみては如何でしょうか?

◯お知らせ

私のnoteで一番読まれていて私の読書に対するベースとなる考え方をまとめた記事です。読書全般について書いておりますが、完成系ではありませんので読書体験が進む度に肉付けしております。ご興味あればご一読下さい。

【読書の効用】

またstandfmを4月からはじめておりまして、日々読書に付いて語っております。上記のnoteの読書の効用をベースにマガジン化して語るstandfm×note 読書の効用シリーズや通常の読書体験から得られた洞察を抽出しリスナーさんにシェアしている番組です。宜しければご視聴下さい。

【子育てパパ×読書体験ラジオ】

【Twitterアカウント】
Twitterも読書体験をメインに配信しておりますので、ご興味あればフォロー頂けると幸いです。

またnoteの読書の効用という記事をベースに、国内最大級のビジネス・パーソン向けの動画学習支援サイトを運営するschooさんの「プロフェッショナルの読書術」に登壇致しました。こちらも合わせてご視聴下さい。

という事で次回またstandfmで収録した内容・・・第13回の記事をベースにnoteに記事を書いて参ります。

ご興味あれば引き続きフォロー宜しくお願い致します。

#読書 #ビジネス #人間関係 #子育て #リベラル・アーツ













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