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読書熊録

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素敵な本に出会って得た学び、喜びを文章にまとめています
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2023年7月の記事一覧

弱さは豊かさにつながるーミニ読書感想『〈弱いロボット〉の思考』(岡田美智男さん)

弱さは豊かさにつながるーミニ読書感想『〈弱いロボット〉の思考』(岡田美智男さん)

ロボットとコミュニケーションの研究者、岡田美智男さんの『〈弱いロボット〉の思考』(講談社現代新書、2017年6月20日初版発行)が面白かったです。冬木糸一さんの『SF超入門』を特集した書店コーナーで見つけた一冊。ロボットなのに弱い不思議な存在を開発する岡田さん。そんな弱いロボットとの関わりが人間を柔らかく変えていく。弱さが豊かさにつながること教えてくれます。

ゴミを検知するだけで自らは拾えない「

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オノマトペは子どもを言語のエベレストにいざなう靴ーミニ読書感想『言語の本質』(今井むつみさん・秋田喜美さん著)

オノマトペは子どもを言語のエベレストにいざなう靴ーミニ読書感想『言語の本質』(今井むつみさん・秋田喜美さん著)

インターネット上でたいそう評判の『言語の本質』(今井むつみさん、秋田喜美さん著、中公新書、2023年5月25日初版)が面白い!と膝を打ちたくなるほど面白かったです。子どもの発達に詳しい今井さんと、オノマトペの可能性を追求してきた秋田さん。「言語ではない」と、端役扱いだったオノマトペが、実は重要な役割を果たしているのではないか?と問いかけます。その旅は、実にスペクタル。

いま、自分はまさに幼児を育

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宗教的終末の技術的実現ーミニ読書感想『透明性』(マルク・デュガンさん)

宗教的終末の技術的実現ーミニ読書感想『透明性』(マルク・デュガンさん)

仏作家マルク・デュガンさんの『透明性』(中島さおりさん訳、早川書房、2020年10月25日初版発行)が考えさせられました。トランスヒューマニズム(超人類)と意識のアップロードがテーマのSF作品。冬木糸一さんの『SF超入門』(ダイヤモンド社)で取り上げられているのをきっかけに手に取りました。以下、感想はネタバレを含むのでご注意ください。

トランスヒューマニズムは、ハラリ氏の『ホモ・デウス』で言及さ

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親の「受ける構え」を育てるーミニ読書感想『発達障害とことばの相談』(中川信子さん)

親の「受ける構え」を育てるーミニ読書感想『発達障害とことばの相談』(中川信子さん)

言語聴覚士・中川信子さんの『発達障害とことばの相談』(小学館新書)が勉強になりました。2009年8月8日初版の比較的昔の著作でありながら、約10年かけて5刷。隠れたベストセラーと言っていいでしょう。子どもの言葉を育てるために、親が子どもの言葉を「受ける構え」を育てる必要があることが学べました。

発話を巡り、著者が「とても面白かったのでよく使わせていただいているエピソード」(p63)があると言いま

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