「隠れ手帳持ち」を救う就労継続支援B型の可能性②『就労や労働と業務委託の狭間』
どうも、ゑんどう(@ryosuke_endo)です。
珍しく連載形式で書いていますが、全2回なので今回で終わりますw
前回の記事はこちら
前回は、厚生労働省の「令和4年生活のしづらさなどに関する調査」や内閣府「障がい者白書」など結果を基に、「隠れ手帳持ち」の実態と直面する課題について紹介するとともに、分析しました。
今回は、これらの課題に対する一つの可能性として、就労継続支援B型事業、特に高額工賃モデルに注目し、「隠れ手帳持ち」支援の新たなアプローチについて考察します。
1. 就労継続支援B型の概要
まず、ご存知のない方のために就労継続支援B型について説明が必要でしょう。
就労継続支援B型は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つです。一般企業等での就労が困難な障害者に対して、就労の機会を提供するとともに、生産活動を通じて、その知識やスキル、職業能力の向上のために必要な訓練を行う事業。
厚生労働省の「障害福祉サービスからの就職者について」によると、就労継続支援B型の利用者数は約329,000人となっています。最も利用者の多いサービスの一つとなっています。
従来の対象者と利用状況
厚生労働省が定める就労継続支援B型の主な対象者は以下の通り。
企業等や就労継続支援A型での就労経験がある者であって、年齢や体力の面で雇用されることが困難な者
50歳に達している者または障害基礎年金1級受給者
①、②に該当しない者であって、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者
厚生労働省の「工賃・賃金の実績について」(令和4年度)によると、就労継続支援B型事業所の平均工賃月額は17,031円となっています。
この金額、地域差や事業所間の差が大きいため、あくまでも参考値とすべきであることは添えつつ、平均であることを考慮すると、決して生活ができるほどではない点を踏まえて次のように考えていきます。
2. 就労継続支援B型の新たな可能性
従来の就労継続支援B型は、主に重度の障害者を対象としてきましたが、近年、その可能性が再評価されていると考えます。特に、今回の主題である「隠れ手帳持ち」と呼ばれる人々にとって、新たな活躍の場となる可能性があると思うんですよね。
「隠れ手帳持ち」支援のプラットフォームとしての可能性
就労継続支援B型は、以下の点で「隠れ手帳持ち」支援のプラットフォームとなる可能性が高いのではないでしょうか。
利用者の状態に合わせて、勤務時間や日数を調整しやすいことから柔軟な働き方が可能。
職業指導員や生活支援員による個別支援が受けられるといった、専門的な支援を受けることができる。
一般就労を希望する場合にも、これを利用することによって段階的に就労の実現性を高めることが可能。
これらの特徴は、障害を開示することへの不安や、フルタイムでの就労が難しかったり、「職場」や「同僚」といった自分以外の変数に対応する敷居が高い「隠れ手帳持ち」の課題に対応できるため、大いに利用者自体は増えていくべきだと考えます。
高額工賃モデルの提案とその意義
ただ、従来の就労継続支援B型の課題の一つに、低工賃の問題があります。
そもそもが就労が困難な人たちに向けたサービスであるため、軽作業などを中心としていることが根本にあるのですが、「隠れ手帳持ち」の人たちは隠れながら一般的な就労を実現しているため、従来の想定されていた利用者像からは大きく飛躍した活躍が期待できます。
そうすると、高い専門性を活かした業務や作業の受注が可能となるため、高額の工賃を実現することができるのではないでしょうか。
3. 高額工賃モデルの具体的構想
じゃー、具体的にどんな業務や作業を受注することができれば高額工賃モデルを実現できるのか。単純に、一般的な労働市場と同じで、付加価値の高い業務や作業が担えればいいわけです。たとえば…
IT関連サービス
Web開発、プログラミング
データ入力、テストなど
デザイン関連:
グラフィックデザイン
UI/UXデザインなど
専門的コンサルティング:
障害当事者の視点を活かしたバリアフリー設計コンサルティング
多様性推進に関するアドバイザリーサービスなど
あくまでも一例ですが、これらの分野は、専門性が高く、リモートワークとの親和性も高いため、「隠れ手帳持ち」の特性に合致する可能性があり、高額な工賃を実現することができるのではないでしょうか。
柔軟な勤務体制と支援の組み合わせ
上記のような事業を行っている事業者が、そういった専門的なスキルを保有しているものの、一般的な就労や業務委託で生計を立てている、もしくは建てようとしている人たちを包摂しつつ、フレックスタイムやリモートワーク、段階的な支援プログラムを掛け合わせることで、その実現性は高くなっていきます。
4. 就労継続支援B型を活用した「隠れ手帳持ち」支援の利点
障害開示のハードルを下げる中間的選択肢
何より、就労継続支援B型は、一般就労と福祉的就労の中間に位置する選択肢として機能します。これにより、完全な障害開示を強いられることなく、徐々に自身の状態と向き合える環境を提供することが可能になります。
これは隠れ手帳持ちの立場からすると大きな心理的な安全性を確保することができますし、一般就労に立ち向かっていきたい人はその準備や、自身の能力の再評価を行える場となるため、利用者の生活に充実とうるおいを与えることが可能になっていくことでしょう。
専門的支援と就労の両立
また、そういった特別で付加価値の高い業務や作業を自ら発注できる事業者の取り組む就労継続支援B型事業所では、それらの業務や作業の専門的支援を受けながらスキルや知識をみにつけることが可能となりますし、
職業指導員による技能訓練
生活支援員によるメンタルヘルスケア
障害特性に配慮した環境調整
といった専門的な支援を同時にていきょうできるため、「隠れ手帳持ち」が抱える様々な課題(例:コミュニケーションの困難、体調管理の難しさ)に対応する上で有効です。
経済的自立と社会参加の促進
利用者は高額工賃モデルの実現により、高い収入を得ることで自立した生活の基盤を築けるようになりますし、それを実現できたことにより自己肯定感の向上することも期待できます。
何より、人手不足が叫ばれる日本社会において、少しでも多くの労働力を生むことができるようになるため、社会的な意義もおおきいといえるのではないでしょうか。
5. 今後の展望
ここまで触れてきた通り、就労継続支援B型の新たな活用方法は、「隠れ手帳持ち」支援の可能性を大きく広げる可能性がありますが、その実現のためには、制度面での調整や社会の理解促進など、多くの課題があることも事実です。
しかし、就労継続支援B型を軸とした新たな障がい者支援のエコシステムの構築は、「隠れ手帳持ち」を含むすべての障害者が、その能力を最大限に発揮できる社会の実現につながる可能性を秘めているといえるのではないでしょうか。
おわりに
就労継続支援B型、特に高額工賃モデルの可能性について詳細に検討してきました。この新たなアプローチは、「隠れ手帳持ち」の方々に対する支援の選択肢を広げ、彼らの社会参加と自己実現を促進する可能性を秘めてイルことに触れてきました。
しかし、これはあくまで一つの可能性です。
「隠れ手帳持ち」を含むすべての人が、自分らしく生き、働ける社会の実現に向けて、私たちはさらなる議論と取り組みを続けていく必要がある点を添えて、終わりにしたいと思います。
当事者より
ではでは。
ゑんどう(@ryosuke_endo)
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