FPサイエンティスト

夜にはアインシュタインと同じひらめきをふかして、

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最近の記事

「大英自然史博物館珍重標本盗難事件」 人物一覧

本記事にはカーク・ウォレス・ジョンソン著「大英自然史博物館珍重標本盗難事件」の内容を含みますので、本著を事前に読まれていることを前提とします。 人物一覧カーク・ウォレス・ジョンソン 著者。著者近影でめっちゃドヤ顔してる。エドウィンの起こした事件について興味を持ち、調査と発見されていない残りの鳥標本について捜査する。 マリー=ジョゼ 著者のパートナー。「うちのカミさんがね、スーツケースに物を詰める天才でしてね、いつも旅するときにはお願いするんですがねぇ、いつも帰るときに詰めら

    • ドクター・サンクスギビング

       時間がなかった、時間がなかっただけなんだ。成り行きでやったことだから私は悪くない。仕方のなかったことだ。 「クソッ!」  パソコンを見ながら私は手に持ったマウスを床にたたきつけた。画面にはNMRスペクトルが表示されている。その結果は、本来あるべきケミカルシフトが表示されていない。つまり私が論文で発表した化合物は合成できていない。深夜2時の研究室には私以外誰もいない。蒸留器と乾燥機がゴウゴウと唸り、無意味となった溶液をかき混ぜるマグネチックスターラーの音がカラカラと響く。それ

      • フェイク・ファック・トーキョー

        「三顧の礼には答えねばならんな」老人はロクロから手を離し立ち上がった。「こんな寒村に幾度も来る理由はなんだ?」作務衣姿の老人は私の前に座る。 「作っていただきたいのです。本物に見紛う至高のオナホールを」 「どこでそのことを?」 「アラカワから聞きました」 老人は顎髭をさすり、腕組みをした。「生きていたのか」 「ご健在です」 「そうか」といって、思い出に浸るように目をつむった。 「儂のオナホで自らを慰めるために使う訳ではあるまい。目的はなんだ?」 沈黙が流れる。外は深々と雪が積

        • インディアンカレー

          *画像は横須賀海軍カレーであり、インディアンカレーではありません。ご注意ください。 阪急三番街のインディアンカレーは、喩えるならばキャタピラーだ。白色のJ字型カウンターに客は入店し、カレーを食べ、退店する。そこには食う前にダラダラ写真を撮る輩や、食った後チンタラしゃべるような輩もいない。客とカレーが流れるだけだ。 「インディアンカレーのレギュラー、卵のせで」 俺は入り口のレジで、流れを止めぬよう素早く、常連客の風を吹かせないよう丁寧に注文する。電子マネーで会計を済ますと

          「天気の子」を観たーー線路の向こう側にあるものーー

          このnoteには映画「天気の子」のネタバレを含みます。観ていない方はご注意ください。というか、観てください。 また、この記事には有識者面した文章が散見されます。それを読んでストレスを感じる方、またコメントやSNSにボロクソを書きたくなる症状をお持ちの方はご遠慮ください。 昨日、近所の映画館へ「天気の子」観に行ったんです。「天気の子」。 そしたらなんか人がめちゃくちゃいっぱいで座れないんです。 で、隣の男子学生とかが終わった後に「主人公クズじゃね?」とか「つまりバッドエンド?

          「天気の子」を観たーー線路の向こう側にあるものーー

          生存する牛乳

          俺の名前は黒桐裕也、牛乳を飲まない子供を惨殺するのが仕事だ。なぜ惨殺するのか、それはあの、ドクターと名乗る女が教えてくれた。 「乳製品を摂取したとき、多くの日本人はラクターゼの分泌が少なく乳糖を消化できません。でも欧米人の多くはラクターゼが分泌され消化できます。 この違いは遺伝子によって決まっています。この国では学校給食という牛乳を飲ませる『実験』があるので、将来的に日本人は遺伝子が発現して牛乳が飲めるようになるはずです。 しかしながら、一つ重要な疑問があります。その進

          キャプテン・オブ・ザ・ブルーノート

           文明から遙かに離れた海洋、夜空に浮かぶ月が、巨大タンカーを照らす。航海灯が消され、不気味な静寂をまとった海上の巨城。1隻の小型船に乗り、アーミースーツを着たボブとジョンは闇に紛れて忍び寄る。 「あれが連絡を絶った無人タンカーだ」  ボブが指をさす。ジョンのコンタクトレンズ型ディスプレイがタンカーを認識し、暗闇の中に輪郭が浮かび上がる。 「海賊か?」「分からない。情報収集も我々の任務だ」  ジョンが手信号を送ると、グローブが認識し面前にマップが浮かび上がる。離陸まであ

          キャプテン・オブ・ザ・ブルーノート

          スモーキング・スイレン

          「この国の奴らはつまらねぇよな。財布を拾っても盗まねぇし、こんな夜中のファミレスでも食い逃げしねぇ。ああっ! 待ってくれ! すまねぇ別にお前たちをコソ泥と一緒にしてるわけじゃねぇんだ!」 呼び止められて、僕たちはソファーに座り直した。 「あんたたちはこの国にほとんど居ない、最高の泥棒さ。あんたらの手際に感動したよ」 こんなに流暢な日本語を話して本当にアメリカ人なのか? と疑ったが、僕は黙っていた。 「つまりニッポンのオーシャンズ11ってやつさ。あんたがジュリア・ロバーツで、そ

          スモーキング・スイレン

          クックゥ・ウェアズ・ザラ

           このスラム街、イオンモールと呼ばれた廃墟での暮らしは、いいとは言い切れないが施設から逃走した先としては申し分なかった。IDを偽ってベーシックインカムを盗めば、生きることができる。オレたちもいつか、ここをジャスコって呼ぶあのジジババみたいになるんだろうなと話すと、大概の人間は悲しそうな表情を浮かべたが、彼女だけは 「いやよ、そんなの」  と答えた。彼女はZARAに住んでいたのでザラと名乗り、いつしか皆、彼女に習って本名を隠すようになった。 「ねぇ、ユニクロ」  ある寒い日の夜

          クックゥ・ウェアズ・ザラ

          「ペンギン・ハイウェイ」と「放課後のプレアデス」

          この記事は「ペンギン・ハイウェイ」と「放課後のプレアデス」を観てくださいってnoteです。ネタバレはできる限りしていません。 このnoteは大人に向けて書かれている。あなたは大人だろうか。 「ペンギン・ハイウェイ」の主人公の「ぼく」は小学生で子供だ。 「放課後のプレアデス」の主人公のすばるは中学生で子供だ。でも「ぼく」よりかは大人だ。 大人って何だろうか。 仕事をしてお金を得ること?  家族を持つこと?  何かに責任を持つこと?  ぼくはまだ小学校の四年生だが、もう大人

          「ペンギン・ハイウェイ」と「放課後のプレアデス」

          かつてボカロ曲をdigしたやつを晒す

          中二病における重要なターム、それはやはり音楽だろう。よく分からない無名バンドや洋楽を聴いて、おれは周りのJポップを聞いている奴らとは違うんだと悦に浸る。私が中二だった頃、そこから一周回って「音楽を聴かない」という中二病だった。俺の聞く価値のある音楽はこの世に存在しないと思っていた。言えにインターネットが無く、ケータイを持って居なかった私は本当にそういった物に触れずに中学生活を送っていた。ちなみに初めてCDを買ったのは高校2年で相対性理論のシフォン主義だった。 そんな私が大学

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          「青春のアフター」と「デビルマン」

          このnoteは緑のルーペ著「青春のアフター」について、自分勝手な駄文です。ネタバレを含みますので「青春のアフター」は読んでください。 あなたは実写版デビルマンを観たことがあるだろうか。観たことがないのであれば、人生の内で貴重な115分をドブに捨てずにすんでいる。私は3回観ているので、貴重な345分をドブに捨てている。 棒読みの下手くそな演技、不可解なストーリー展開、不愉快なテンポ、この映画は日本邦画界で燦然と輝く最悪のクソ映画である。多くのクソ映画がツッコミどころで楽しん

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