スモーキング・スイレン

「この国の奴らはつまらねぇよな。財布を拾っても盗まねぇし、こんな夜中のファミレスでも食い逃げしねぇ。ああっ! 待ってくれ! すまねぇ別にお前たちをコソ泥と一緒にしてるわけじゃねぇんだ!」
呼び止められて、僕たちはソファーに座り直した。
「あんたたちはこの国にほとんど居ない、最高の泥棒さ。あんたらの手際に感動したよ」
こんなに流暢な日本語を話して本当にアメリカ人なのか? と疑ったが、僕は黙っていた。
「つまりニッポンのオーシャンズ11ってやつさ。あんたがジュリア・ロバーツで、そっちの冴えない男がマッド・デイモン?」
「違うわ」ボクの隣で、彼女は首を横に振る。「私がジョージ・クルーニー、こっちがブラッド・ピット」
「おおそうか、そりゃよかった。それでなんだが、盗んでほしいものがあって」
「嫌よ」
「嫌だね」
僕たちはソファーを立ち上がる。
「それじゃあ水鏡姉妹に頼むしかねぇな」
僕たちはソファーに座り直した。

【続く】

#逆噴射プラクティス #逆噴射小説大賞

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