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日本にはまだ、日本にしかできないモノ造りが残っている。

目を覚ませ、日本の製造業!
中小企業の代表取締役が示す、あるべき「シン・メイド・イン・ジャパン」の姿。この記事では本書の「はじめに」を公開、最後のリンクから第一章までをお読みいただけます。

『シン・メイド・イン・ジャパン』まえがき

このグラフは、長野県の中小部品製造業であるわたしの会社が紆余曲折しながらも、どうにか混迷から這い上がった歴史を描いています。
  
本書では、このグラフが物語る日本の中小零細企業の様々な問題点とこれから日本の製造業が向かうべき希望の道を探って行きたいと思います。
今考えると、ここ数年の売上・利益の上昇は、いくつかの〝ひらめき〞がきっかけでした。

創立以来典型的な下請け会社だった当社はバブル崩壊後、突然メインだった仕事がなくなり、真っ暗闇の状態となりました。
しかしその後、紆余曲折しながら、どん底状態からどうにか抜け出すことができ、現在は売上も以前の状態まで戻り、利益率も改善しました。
わたしの会社は、コイル巻線の会社です。コイル巻線とは、電線をただぐるぐると巻く単純な仕事であり、家電や車、機械装置、精密機器など、様々な用途に使われますが、いわゆる電子部品であり、ほとんど表には出ない「縁の下の力持ち」的な存在です。
また、コストが安いわりに手がかかる下請け仕事の代表のような部品なので、バブル崩壊後、繊維産業の次ぐらいに海外に出て行ってしまった仕事です。

今から30年前、当時管理部長だったわたしは、それまで17年間下請けとして真面目に取引してきた親会社の購買担当者から、「悪いけど、お宅の会社潰れるよ!」と告げられました。
バブル崩壊後、メーカーの海外移転が決まった時の話です。
この時、メーカーの完全下請けだった当社は、途方に暮れ、目の前が真っ暗になりまし
た。しかしその時神風が吹き、海外から仕事がタイミング良く舞い込んだことで、どうにか生き延びることができました。
それから6年後、この海外の仕事が突然なくなり、この時ばかりはどうしようもない状態に追い込まれたのでした。
廃業か、存続か――。二つにひとつの状況で、わたしの会社は存続を選びました。わたしは管理部長として、大規模なリストラを指揮した後、社長に就任したのでした。
社長になっても何をやっていいか分かりません。
下請会社の悲しさで、何もやらずにただボーッと仕事が来るのを待っていたら、さらに仕事が少なくなり気づけば資金も底を尽きました。これ以上は持たない……というギリギリのところで、ある自己啓発セミナーに参加しました。
そこでわたしは「自分は社長として一体今まで何をしていたのか?」という猛烈な反省と共にある〝ひらめき〞を得ました。
それは「確かに日本には以前のような大量の仕事は残っていない。しかし、今の人数であれば、試作の仕事、少量多品種の仕事でもどうにか食い繋ぐことはできるのではないか? そうだ、営業だ、これから仕事を探し回ろう!」というものでした。
これを境に、当社は再生の道を進みました。どんなに小さな仕事も探し回ってやらせてもらい、儲からない仕事も、他社が断るような難しい仕事も進んで受けました。数年間、そうして技術とノウハウを蓄積していった結果、わたしの会社は〝高密度コイル〞という当社独自の看板商品を生み出すことができました。
それからモノ造り業界は、リーマン・ショック、東日本大震災、新型コロナウイルスなどにより、大きな影響を受けました。また一方で技術革新も進み、どんどんモノ造りのあり方も変わってきました。しかし、そんな中でも、高性能コイルの需要はラッキーなことに、落ちるどころか年々増していくことになり、どうにか冒頭のグラフのような状態に持っていくことができました。
特に大きな転機になったのは、高性能コイルを展開してから10数年後、世界の自動車市場がガソリンからEV(電気自動車)へと舵を切ったタイミングです。詳しくは後述しますが、今では、自動車だけでなく、様々な業種・業界の大手メーカーと取引をするようになっています。
このひらめきをきっかけとした復活劇は、わたしやわたしの会社だからできた訳ではありません。どんなに小さな会社であっても、同じことができると思っています。日本の中小零細企業には、それぞれ隠れたポテンシャルがあるはずだからです。
今、生き残っている企業には何かしら他社とは違う秘伝の技、職人芸のようなノウハウ
があるはずで、それに気づき、磨きをかけていくことで、未来は大きく変わるはずです。そしてこのひらめきによる革新は、製造業ならずともあらゆる産業でも同じことが言えると思っています。

日本は99・7%が中小零細企業です。
日本の国力は、大企業でなく、わたし達中小零細企業が中心にならなければ強くはなりません。
かつて日本は〝ジャパン・アズ・ナンバーワン〞と言われ、世界から羨望のまなざしを向けられていました。あれから30余年。今ではその威光は薄れ、世界の中での存在感も薄れつつあります。極端に聞こえるかもしれませんが、わたしはこの30年で、メイド・イン・ジャパンは消滅してしまったとさえ思っています。
その原因に迫ることで、混迷する現代、特にデジタル革命(DX時代)や100年に一度と言われる自動車の大革命(EV時代)を生き抜くための活路を見出していきたいと思います。
その結果、全ての中小零細企業が大きな夢を描き、前向きになることで日本が実現すべき本当のモノ造り(シン・メイド・イン・ジャパン)という、新しいパラダイムを示したいと考えています。

(小林延行『シン・メイド・イン・ジャパン』より)


「まえがき」から「第一章 日本のモノ造りの現状は?」を電子版でお読みいただけます!

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