対話術_書影これのみ_

伝えるから伝わるようになる3つの“S”とは? 山本衣奈子『相手に「伝わる」対話術』本文試し読み

ビジネスパーソン必見!
プレゼンテーション・プランナーが教える3つの極意。
講演会で語られた「会社をもっと行きたい場所にする! コミュニケーションのすすめ」をもとに電子書籍化した、
『相手に「伝わる」対話術』(著:山本衣奈子)の試し読みを公開!

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はじめに

皆さん、こんにちは。お元気ですか?

「元気があればなんでもできる」
 これは本当だと思います。どれだけの経験があっても、スキルや知識があっても、元気がなければどうにもなりませんからね。皆さん方には、ひとつ元気であっていただきたい。そういう思いも込めてお話をさせていただきます。
 私は山本衣奈子と申します。今日はコミュニケーション環境をよりよくすることで、毎日の生活やお仕事をもっと前向きに動かしていこうと、そんな一助になるようなお話ができればと思っております。
 さて、今回のテーマは『コミュニケーション』です。予めご理解いただきたいのは、こればかりは、じっと座って読んでいただいたからといって、明日からどうにかなるものではないということです。
 しかも、人間は「忘れる生き物」です。人の記憶力はどのくらいもつと言われているのか、聞いたことがありますか? 
 有名なのは、エビングハウスの忘却曲線です。人の記憶が消えるスピードを数値化したものです。これによると、人の記憶は20分間で約42%が消えると言われています。1時間で56%。1日たったら約66%から74%の記憶は自然に消えると言われているのです。
 これは、記憶力の問題ではありません。忘れないと、新しいことを覚えられないのです。たしかに、もしも私たち全員がオギャーと生まれた日のことから今までのことを全部覚えていたら、もう頭がパンクしています。忘れることができるから、覚えることができます。ですから、これは必要なことなのです。
 必要なことではありますが、私としては、それでは申し訳ない。せっかく読んでくださっているのに、明日になったらほとんど覚えていないようなことをお話ししていては申し訳ないわけです。
 私がこういう講演や研修の講師という仕事をするようになって、10年ほどになりました。現在、年間でだいたい180件から200件くらい。いろいろな企業さん、団体さんに行ってお話をすることを仕事にしています。そして、どうやったら人の記憶に長く残してもらえるのかと、いろいろなところに行きながら、実はずっと検証をしてきました。
 今、はっきり言えるのが、ただ聞いたもの、読んだもの、見たものというのは、案外あっさり忘れるということです。人の記憶に残っていくのは、心から共感、納得できることと、楽しかったと思えること。これが比較的長く記憶に残っていくのです。
 となると、ただ読んでいただくだけでなく、実際にやっていただくことが非常に大事なポイントとなります。
 ですから、
○実際に一緒にやってみよう
○一緒に考えてみよう
 の箇所を実践していただきたいのです。本当に簡単なことなので、ちょっと練習してみましょう。
 「みんなで一緒に何かをする」、これをウォーミングアップとして練習してから、本題に入りたいと思います。

***

第1章 無意識が人間を動かす


あと出しジャンケンの実験


 では、みんなで簡単にできることとして、ちょっとジャンケンでもしようと思います。ただのジャンケンではつまらないので、勝つよろこびを存分に味わっていただけるジャンケンをします。

○実際に一緒にやってみよう:あと出しジャンケン

 要は「あと出しジャンケン」です。一人が、「ジャンケンぽん」と出したら、一拍遅れてホイと。もう遠慮なく、勝つものをバンバン出してください。ただし、テンポよくいきます。そして、だんだん早くしていきます。

 はい、いかがでしたか。
 では、次はちょっとアレンジします。

○実際に一緒にやってみよう:負けるジャンケン

 今度は負けるものでやってみましょう。一人が「ジャンケンぽん」と出したら、一拍遅れて、今度は負けるものでついていってください。先ほどと同じテンポでいきます。

 いかがでしたか。
 今のジャンケンをやってみて、勝つジャンケンより負けるジャンケンのほうが、どちらかというとやりにくいと感じられたのではないでしょうか。
 では、それはなぜでしょう。なぜ、負けるジャンケンはやりにくいのでしょうか。


行動の9割は無意識


 どこかで聞いたことがあるかもしれませんが、「人間の普段の行動や言動の約9割は無意識に動いている」と言われています。もっと言えば、「無意識に動かされている」と言われています。
 学者によっては、人は行動全体の96%を無意識に行っていて、意識的にやることは4%くらいに過ぎないなんてことを言う人もいます。
 でも、そう聞いたら「えっ」と思いませんか。
「いや、もうちょっと考えてやっていますけど」
「いや、もうちょっと考えてしゃべっていますけど」
「私は4%以上はやっています」
 という人もいるかもしれません。
 でもこれは、一部ではなく全体で考えているのです。例えば、私たちは歩くときにいちいち筋肉のことを考えてはいません。「次はナントカ筋を使おう」「次はナントカ筋をこう出そう」と、1歩ずつ考えながら歩いているわけではありません。
 例えば、呼吸をするとき、「よし、息を吸おう。そして吐こう」って、いちいち考えながらやっているわけでもありません。
 そして、皆さん1回くらいこんな経験はないでしょうか。何気なく家を出て、しばらくたってふと思う。
「あれ、今エアコン消してきたかな」
「あれ、今鍵かけてきたっけ?」
 あまりにも無意識にやってきたから、記憶に残っていない。残っていないから不安になる。不安になって見に帰ると、かなりの確率でエアコンはちゃんと消えているし、鍵もちゃんとかかっているのです。
 つまり、私たちが持っている無意識という部分は、私たちが思っている以上に私たちを動かす力を持っているということ。そして、これがすべての根底に共通しているのではないでしょうか。
 つまり、われわれを動かしているのは「知識」ではないということです。

 例えば、今日お話しする「コミュニケーション」や、「どうしたらもっとみんなに言いたいことが伝わるのか」「どうしたらチームはもっとまとまるか」「どうしたら相手はちゃんと動いてくれるのか」……こういったことは、これまでにも皆さんいろいろ話を聞いてきたと思うのです。
 自分なりに本を読んでみた方も多いでしょう。何よりも、これまでの経験で皆さんなりに培ってきているスキルや知識。実は皆さんもうすでに相当なものを持っていらっしゃるはずなのです。
 ですが、
「人が目の前にいるときに、今まで学んできたことを常にフル稼働させて向き合っていますか」
と問われると、
「いやあ、わかっちゃいますけど、やっぱりなかなかできないですよね」
 と、おっしゃいます。
 その一方で、同じことを知っていて、現にやっている人もいるのです。そうなると、この行動において、「やっている」と「やっていない」を分けるのは、知識量ではないわけです。
 私は仕事柄、いろいろなところに行って、いろいろな人にお会いするのですが、はっきり言えるのは、同じことを同じだけ知っていたとしても、やる人はやるし、やらない人はやらないというのが現実だということです。では、知っていることがまったく同じなら、何が行動を変えるのか。ここに大きく関わってくるのが無意識なのです。

3つの“S”の秘密については第2章以降で紹介しています!!

<収録内容>
はじめに
第1章 無意識が人間を動かす

 あと出しジャンケンの実験
 行動の9割は無意識
 なぜ負けるジャンケンは難しいのか
第2章 「察してほしい」の落とし穴
 「言わなくてもわかる」という刷り込み
 相手依存ではキャッチボールにならない
 「察する」を体感する実験
 変えられるのは自分だけ
第3章 伝わるコミュニケーション
 ストレート──真っ直ぐに向き合う
 恐ろしい「じゃあ、もういい」
 シンプル──日本語の特徴を味方に
 日本語の長所と短所
 ニュアンスは受け手が決める
第4章 ポジティブなメッセージ
 気持ちよくできる言葉を選ぶ
 自分で決めて自分でやりたい
 スマイル──笑顔は相手を安心させる
 「ありがとう」は笑顔と等価

山本衣奈子相手に「伝わる」対話術 価格¥500+税
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