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ゲーム屋人生へのレクイエム 3話

前回までのあらすじ。知人の子供にゲームクリエーターになるにはどうすればいいのか尋ねられた元ゲームクリエーターが自分の過去を語る。テキトーな就活でテキトーな将来になろうとしていたころのおはなし。

「自衛隊の隊員募集担当のおっちゃんが自衛隊に入るか?って。それで、あ、これでいいやって決めちゃった」


「なんで自衛隊なんですか?」


「自衛隊に入ると、
給料がもらえる。
家賃がタダ。
飯がタダ。
服もタダ。
と言われたのよ。それで、こりゃいい。何も考えなくていいわってね」


「ちょっと簡単に決めすぎじゃないですか?」


「そうだけど、考えるのが面倒でさ、もうこれでいいやって事にしたのよ。

夏休み前に入隊試験受けて、その場で採用って言われてね。

よっしゃ、夏休みはバイト三昧だ!これで勉強をしなくてすむぞってね。同級生は休み中でも学校へ行って就職試験の補習授業を受けてけど、俺は受けないから、ラッキーって思ってたよ。

その頃の俺は単純に勉強がしたくないだけのどうしようもない奴だったのよ。勉強が生きていくうえで何の役に立つんだと思っていたからね。学校に行くくらいならバイトしてるほうが楽しかったし、何よりお金がもらえたから。建築現場で働いて結構な金額のバイト代をもらってたから学校に行くのがアホらしかったのよ。時間の無駄じゃないのってさ。

それで、自衛隊に行くつもりマンマンだったんだけど、進路指導の先生から、自衛隊もいいけど、会社の入社試験も受けるだけでいいから受けたらどうかって言われてね。自衛隊はいつでも入れるけど、一般の会社は新卒採用は一年に一回しかないぞって。それもそうだ。よし受けるだけ受けてみるかってことにしたのよ」


「志望する会社はすぐ見つかったんですか?」


「それがなかなか決まらなくてね。試験受けるだけで入社するつもりはないはずなのに何故か真剣に探しちゃってさ。心のどこかに本当に自衛隊でいいのかって自分自身に問いかけているような感じ。とは言え、まったく勉強しないでここまで来て一流企業の入社試験に受かるはずもない。落ちるとわかっている試験を受けるのはそれはそれで屈辱じゃないのかとか。それまで自衛隊一本で考えていたのに、一般企業に入ることも手遅れだけど選択肢に入ってきたんだよ」


「それで、どうしたんですか?」


「狙いを2社に絞り込んだ」


続く
*この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体とは一切関係ありません。

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