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『<帝国> グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』『マルチチュード <帝国>時代の戦争と民主主義』by アントニオ・ネグリ, マイケル・ハート


Reviewed in Japan on June 25, 2003 Amazon

 ネグリ=ハートは、マルチチュードによる生産的な協働(cooperation)を呼びかける。マルチチュードは、潜在的なレベルで触発・強化し合う個々人の多様な力のネットワークとしてとらえられる。マルチチュードは、<帝国>と呼ばれるネットワーク的権力そのものの土台を自らの構成的な力によって生み出してきた。同時にそれは、この<帝国>が構成する生権力の網の目に組み込まれた我々自身の生存でもある。マルチチュードと<帝国>とは、コインの裏表の関係にある。ネグリ=ハートによれば、現在、我々の生存それ自身が、グローバル資本主義そのものを構成する力として登場している。

 「<帝国>的管理(imperial control)」は、我々の生存における無数の差異を階層序列化しコントロールするという機能を持っている。生活のあらゆる場面で階層序列化されるなかで、個々人は分断され、個々人の協働があらかじめ阻止される。では、こうした<帝国>の機能に対抗するマルチチュードの協働はどのようなものなのか。これがネグリ=ハートによって提起された課題である。ネグリ=ハートは、私たちのそれぞれが、自らの実践によって課題に応えていくことを求めている。

Reviewed in Japan on December 12, 2005 Amazon

ネグリ/ハートは、マルチチュードによる生産的な<協働>(cooperation)を呼びかけている。マルチチュードは、一種の<抽象機械>として、潜在的なレベルで触発・強化し合う個々人の多様な力のネットワークとしてとらえられている。もちろんこれは、それ自体としては、<帝国>と同様、発明された哲学的概念にとどまる。マルチチュードは、<帝国>と呼ばれるネットワーク的権力そのものの土台を自らの構成的な力によって生み出してきた。同時にそれは、この<帝国>が構成する生権力の網の目に組み込まれた我々自身の生存でもある。マルチチュードと<帝国>とは、コインの裏表の関係にある。ネグリ/ハートによれば、現在、我々の生存それ自身が、グローバル資本主義そのものを構成する力として登場している。

 「<帝国>的管理(imperial control)」は、我々の生存における無数の差異を階層序列化しコントロールするという機能を持っている。生活のあらゆる場面で階層序列化されるなかで、個々人は分断され、個々人の協働があらかじめ阻止される。

 では、こうした<帝国>の機能に対抗するマルチチュードの協働はどのようなものなのか。これがネグリ/ハートによって提起された課題である。ネグリ/ハートは、私たちのそれぞれが、自らの実践によって課題に応えていくことを求めているということ、これがポイントだ。

ジジェクの批判など重要な批判があり、今後考えていくべき点が多々あるが、上述のように、ネグリ/ハートが希求しているのは、そういった批判が、私たち一人ひとりが構成する生政治による生権力の内在的な乗り超えであるということだ。

附記

今後note記事として拙論「ネグリ=ハート、ラカン、カントの狭間で――グローバル資本主義下における<協働>の構成」(非営利学術団体『心の諸問題考究会』電子ジャーナル『心の諸問題論叢』vol.3.掲載論文 簡略化して「グローバル資本主義下おける<協働>の構成―ネグリ/ハート『<帝国>』の読解を手がかりにして」として日米高齢者保健福祉学会誌第1号 に所収)を公開予定


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