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「周りと違っていても大丈夫」多様性の中で育つ子どもに、余計な反抗心はない

昨日息子の学校の先生から電話がかかってきました。要件は「息子が給食を食べない」ということでした。

注)わたしはタイに住んでいて、息子はタイ生まれでポーランドと日本のハーフ。インターナショナルスクールに通う小学3年生です。全校生徒50人という少人数制のオルタナティブ・ラーニングセンターという、ちょっと変わった学校に通っていて、そこには学年もクラスも担任制もありません。

偏食で給食を食べない息子

先生「学校では全く問題なく楽しくやってるんですけれど、給食を食べないんですよ…。

うちの学校はオルタナティブ(多様なものを取り入れる)がモットーなので、週に一回朝のホームルームで給食のメニューを子供たちと話し合う時間もあるんです。普段の彼は率先して意見を言うタイプなのに、給食については何も意見を言いません…。」

わたし「それで息子は何て?」

先生「家で食べるから大丈夫、心配しないでって言うんです。しばらく様子を見ていたんですけれど、一応お母さんと話しておこうと思いまして。」

わたし「確かに家ではしっかり食べてます…。」

先生「そうですよね。体もしっかりしてるし…。彼、偏食の仕方がちょっと変わってて…、普通偏食する子って、お肉や揚げ物ばかり食べたがるいわゆるジャンクフードが好きで野菜を食べない子が多いんですけれど、彼は毎日、玄米とキュウリに塩をかけて食べてるんです。

学校では白米と玄米の二種類が用意してあって、ベジタリアンも考慮して必ず野菜のみのおかずがあるんですけれど、彼はそのおかずも嫌みたいで、玄米に添え物のサラダをのせて食べてます。」

わたし「笑笑」

わたし「先生、わたしベジタリアンなんです。」

先生「知ってます、覚えてます。」

わたし「子供に菜食を強要してはいないんですけれど、わたしが毎日料理するので、多分一般家庭のご飯と嗜好がちょっと違うんですよ。」

先生「クリス先生から聞きました。ホームスクーリングでお弁当だった時にお弁当の中身が面白かったって。クスクスとか、巻き寿司とか、ブリトーとか。カレーやスープは保温ジャーに入ってるとか(笑)。」

緊急事態宣言で学校が休校になった場合、この学校では少人数のグループに別れてホームスクールに切り替わります。先生が指定の家に訪問して授業をしてくれます。タイは核家族より大家族が主流なので、日本や欧米のように学校は開けておくという方針はなく、感染対策で学校が頻繁に休校になります。

先生「だから栄養面での問題はないと思ってたんですけれど、彼のお昼ご飯をどうするのか、そろそろ相談しないとなと思って。」

お昼ご飯は息子が言うとおり、玄米とキュウリで大丈夫

わたし「玄米とキュウリでいいですよ。わたしは外のご飯に慣れて欲しかったから、あえて放っておいたんです。お腹が空いたら食べるかなと思って。

家でも給食についてよく話していたんですが、匂いがダメみたいで。彼ちょっと匂いに敏感なところがあって、ただの水でも味や匂いが変だと飲まないんです。給食で使ってる油が多分コーン油か大豆油で、その匂いが苦手みたいですよ。うちは米油かココナッツオイルかオリーブオイルを使ってます。だから家で食べればいいし、そのままで大丈夫ですよ!」

先生「そうですか!わかりました。学校でもホームルームでもうちょっとその辺り、彼の意見を聞いてみますね!油だったら変えることもできるだろうし、むしろ変えたほうが健康のためにいいかもしれませんね。ありがとうございました!」

先生との電話が終わった後、どうしてホームルームで給食のメニューに意見を言わないのか息子に直接聞いてみました。

息子「意見は言ったことあるよ。でもそれをどうやって作るのか、誰も知らないんだ!僕はフムスとか、ジェノベーゼとか、何かパンにつけられるものがあったらいいなって言ったんだ。でもバターとジャムが出て来て。それじゃないんだけどなーって思った。でも作れる人がいないみたいだから、ママが学校で給食作るしかないよ!」

フムス:ひよこ豆にニンニク、クミン、レモン、オリーブオイルを混ぜて作る中東でよく食べるペースト
ジェノベーゼ:バジルの葉、松の実にニンニク、オリーブオイルを混ぜて作るイタリアのペースト

ちなみに息子の大好物は揚げ出し豆腐です。確かに日本の給食でも出たことなかったかも。

共存する方法は、多様性の中で自然に生まれる

というわけで、子供の健康偏食に驚いたわたしだったのですが、驚いた原因は、思惑とずれていたことでした。わたしの時代は「みんなと一緒」でないと肩身が狭い思いをする時代だったので、家がマクロビ食の子供なんかはそういう反動で家のご飯を食べなくなったり、親に反抗したりするという話をよく聞いていました。

ヴィーガン、ベジタリアン、オーガニック、何の油を使うかなんて親の方針なので、子供に押し付けないように親のわたしが気をつけていました。我が家では肉魚は調理しないし、調味料も全部手作りで、息子の好きなジェノベーゼは庭に生えているバジルからいつでもすぐに作れます。(タイは松の実が希少なので、カシュナッツで作ります)

息子は反発するどころか、そんな暮らしを安心できるものだと思っているみたいで、周りの人にああしてほしい、こうしてほしいと言うよりも、帰って来て家のご飯を食べればいいと思ったみたいです。

問題が起こっても、誰も戦わない世界

この件でわたしが感心したのは、問題が起こっても誰も戦わないことです。

子供は大人に反発せず、先生に「心配しないで、家で食べるから」と言う。学校の先生方も子供に意見を押し付けず、話を聞きながら様子を見る。腑に落ちない点があれば、こうして親に相談してくれる。

親も周りに合わせたり、戦ったりせずに、自分のライフスタイルを素直に話したらいい。「周りと自分が違っていても大丈夫」という前提で育っている子供は、落ち着いていて、自分の意見を言い、その意見が相手と違っていても反発したり、押し通したりせずに共存しようとします

親が一人で子供を育てているのではなく、子供は環境の中で育っています。環境が安心できるものであれば、その中で自分なりに落ち着いたコミュニケーションや、無理のない範囲での我慢を覚えていきます。優しさって、そういう多様性の中で自然に生まれるんだなと改めて感じました。

ちなみにその夜、息子と手作りで学校に持っていくふりかけを作りました。ブレンダーで乾燥わかめを砕いて、黒ごまと岩塩を混ぜて小さなボトルに詰め、名前を書いたシールを貼りました。

息子は嬉しそうに「いっぱいできたから、友達のご飯にもかけてあげるんだ〜」と言いながらシールを貼り付けて、翌朝学校に持って行きました。


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