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どうしても意味がわからないこと。ganas編集長の独白。

「日本もいま大変なんだから、困った日本人を支援すべきでは」。こんなことを時折言われる。

熱湯をかけられて死亡した新村桜利斗(にいむら・おりと)ちゃん(3)の事件。このニュースを耳にするだけで心がひどく痛む。「こっちおいで」と呼ぶ母のもとに歩き出した桜利斗ちゃんを母の交際相手が殴打する。体を飛ばされる桜利斗ちゃんを笑う。そのようすをスマホで動画を撮る。なんて残虐なことをするのだろう。涙が出てくる。

桜利斗ちゃんのことを考えると、こういう言い方で片付けることはできないが、子は親を選べない。この母が心の中で問題を抱えていたかどうかはともかくとして、桜利斗ちゃんはわずか3歳で死んでしまった。親に虐待される人生。辛かっただろうに。

「アンネの日記」で有名なアンネ・フランクは今から92年前、ドイツで生まれた。反ユダヤ主義を掲げるヒットラーがドイツの政権をとったため、オランダのアムステルダムに一家で移住した。ところがドイツはその後、オランダに侵攻。ユダヤ人狩りから逃れるため、一家は隠れ家で暮らすことに。しかしナチス親衛隊に見つかり、強制収容所へ。そこで15歳の生涯を閉じることになる。

アンネがドイツに生まれなかったら、ユダヤ人でなかったら、ヒットラーの時代でなかったら――屈託のなさそうなあの笑顔をみると、胸が締め付けられる。

今風に言うと、「親ガチャ」「国ガチャ」「民族ガチャ」「時代ガチャ」に“外れた”ことになるのだろう。なんという不条理だ。

日本を含む世界には、本人ではどうにもできない不条理がある。比較的恵まれた側は「世の中の不条理」を感じにくいかもしれない。だが不条理は厳然たる事実としてある。そこに日本も、日本以外もない。

比較的恵まれた側のひとりひとりが、できる範囲でさりげなく助ける。そういった思いやりが少しあれば不条理は減るはず――。これがganasの活動のモットーだ。「行動するメディア」という言い方をしている。

その象徴的なプロジェクトが、「レッスン料でベネズエラ人を救う!『命のスペイン語レッスン』」。ベネズエラ人が講師となって日本人にスペイン語を教え、報酬を得る。日本人が払うレッスン料の大半をベネズエラ側に送るというスキームの国際協力だ。

南米のベネズエラでは、経済が破綻し、国民の94.5%が貧困層になった。国民のおよそ2割が難民として国を出た。

そんなベネズエラから今朝、こんなニュースが届いた。そこにはこう書いてある。

「以前は、車をもっていたら強盗に狙われ、殺された。いまは自転車をもっていても殺される」

実際にこうした事件がベネズエラで起きている。ひどい場合は1ドル札をもっているのを見せたら、知り合いに殺されることも。

ベネズエラはかつて、南米で屈指の豊かさを誇った国。人々が楽しく暮らしていた国。それが今や、みんなが困窮し、モノを奪い合う。ときには殺す。

こんな事実を知ってしまうと、やっぱり放っておけない。桜利斗ちゃん、アンネ・フランク、殺されたベネズエラ人、だれの命が一番大事かなんてわからないし、比べるつもりもない。まずはできることから少しでも何かやり始める。この考えと行動のどこが悪いのだろうか。

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【1/11まで「お試しコース」のみ追加募集中】レッスン料でベネズエラ人を救う!『命のスペイン語レッスン』の受講者募集
https://www.ganas.or.jp/news/20211006espanol/

▽『命のスペイン語レッスン』の詳細
https://www.ganas.or.jp/news/20211006espanol/ 

▽講師の動画(日本語の字幕付き)
https://www.youtube.com/watch?v=0X2-Y3jT8aM 

▽ベネズエラで何が起きているのか
https://www.youtube.com/watch?v=xmbubGdGhXg 

『命のスペイン語レッスン』の〆切である10月30日は、アンネ・フランクが収容所に運ばれた日(1944年。77年前)。一家は、父を除き、全員が収容所で死んだ。日記の出版を夢見ていたアンネの代わりに、父が出版したのが「アンネの日記」。