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大好評の「途上国ニュースの深読みゼミ」がスタート! 正義は弱いのか? パレスチナ・イスラエルについて考えてみた

今回が第10期(11月期)の「メディアのプロと一緒に学ぶ!『途上国ニュースの深読みゼミ』」がきのう、始まりました。初日にみんなで深掘りしたのは下の日経新聞の記事(11月3日付)。

中東、対イスラエル外交を見直し アブラハム合意にひび

この記事の要旨を簡単に説明すると、今回のパレスチナでの衝突拡大を受け、中東諸国がイスラエルとの外交関係を見直し始めたというものです。このところ急速に進んでいたイスラエルの和解が後戻りしているとのこと。

この記事をみんなで2時間かけて調べながら深読みしました。その結果わかったこと/考えたこと(意見、見方)の一部をご紹介します。たったの2時間ですので不十分なところも多々ありますが、そこはご容赦を。

・戦闘が始まってわずか1カ月でパレスチナ側の死者は1万人にのぼった。仮にこのペースで犠牲者が出続けた場合、ロシアから侵攻を受けたウクライナの犠牲者の何倍にも膨れ上がる。常軌を逸した被害だ。

・ガザの人道休戦の国連決議(10月27日)に賛成票を投じたのは121カ国(中国、ロシア、フランス、ブラジルなど)、反対は14カ国(米国、イスラエル、オーストリア、パラグアイなど)、棄権は44カ国(日本、英国、インド、ウクライナなど)。

これを、ロシアに対してウクライナからの即時撤退を求めた国連決議(2022年3月2日)と比べてみる。このときは賛成141カ国、反対5カ国(ロシア、ベラルーシ、シリアなど)、棄権35カ国(中国、インド、キューバ、イランなど)だった。

一目瞭然だが、ガザの国連決議のほうが賛成票が少なく、反対票と棄権が多い。国際社会(とくに西側諸国)はイスラエルには甘いことがはっきりわかる。

・“米国の裏庭”とかつてはいわれたラテンアメリカでは、反イスラエルの動きが高まってきた。ボリビアはイスラエルとの国交断絶を表明。チリとコロンビアは駐イスラエル大使を召還した。

調べてみると、ラテンアメリカにはパレスチナ系移民が多いことがわかった。中東以外でパレスチナ系移民が最も多く暮らすのはチリの50万人。以下、米国25万5000人、ホンジュラス25万人、グアテマラ20万人、メキシコ12万人の順。

・ユダヤ系移民は対照的に、世界を牛耳る欧米に集中している。米国の527万人(うちニューヨークは200万人を占める)をはじめ、フランス48万人、カナダ37万人、英国29万人など。ラテンアメリカはブラジルの10万人ぐらい。

・驚くのは、米国のニューヨーク大学の学生の33%がユダヤ系であるということ。ハーバード大学は30%、コロンビア大学も29%を占めるという。ユダヤ系米国人の顔ぶれをみても、ブルームバーグ・元ニューヨーク市長、サマーズ元財務長官、バーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)元議長、グーグル共同創業者のラリー・ペイジ氏、デル創設者のマイケル・デル氏、メタ(旧フェイスブック)共同創業者のザッカーバーグ氏、映画監督のスピルバーグ氏など豪華だ。

・パレスチナ系移民はここまで影響力がある人はいなさそうだ。調べて出てきたのは、ビットコインを世界で初めて法定通貨に採用したエルサルバドルのブケレ大統領。ユダヤ移民と比べるとかなり見劣る。正義はパワーゲームの前に太刀打ちできないのか。

・G7には、イスラム教徒が大多数を占める国や中東諸国はひとつも入っていない。G20でも、サウジアラビア、トルコ、インドネシアの3カ国のみ。

・西側諸国は、ウクライナを侵攻したロシアに対して経済制裁を発動させた。だがパレスチナへの空爆をやめないイスラエルに対しては動かない。これは片手落ちではないか。

・米国は逆に、ハマスの資金調達に関与する個人・団体に対して資産凍結など制裁を科すことを決定した。ダブルスタンダードと思われても仕方のない措置。中東諸国は納得できるのだろうか。

・パレスチナ側に心情的にはつく中東諸国の動きをみてみる。ヨルダンとバーレーンは大使の召還を決めた。イスラエルとの経済関係を停止するという。ただ元から貿易量は多くない。これだけで、イスラエルの過剰な報復をストップさせられるとは思えない。

・イスラエルとかねてから敵対するイランは、イスラム協力機構(OIC)加盟国に対し、イスラエルへの石油輸出を禁じるといった制裁をとるよう呼びかけた。だが加盟各国はこれに呼応しない。

・アラブ首長国連邦(UAE)やエジプトは、政治と貿易を混同しない方針のよう。その理由を推測すると、イスラエルとの貿易量は少ないとしても、イスラエルのバックには米国がいる。米国との経済関係は自国経済のためにも切りたくないからか。

・化石燃料からの脱却を目指すUAEにとっては海外からの投資は欲しくてたまらない。2022年のUAEへの投資額は227億ドル(約3兆4150億円)と過去最高を記録した。この数字は中東・北アフリカ(MENA)では、イスラエル(277億ドル=約4兆1672円)に次ぐ2位(世界では16位)。UAEへの主要投資国は英国、インド、米国ということを考えると、UAEの立場は揺れてしまう。自国の経済を犠牲にするのは難しいだろう。

・となるとパレスチナに希望はないのか‥‥。世界は正義で動かないのか。

・国をずっともたなかったうえにホロコーストも経験したユダヤ系民族からすれば、イスラエルに対するすべての脅威を排除したい気持ちになるのはわからなくもない。

・今回のイスラエルの過剰な報復は、近年だと、2001年の同時多発テロ(9.11)を受け、米国が、首謀者のビンラディンらをかくまうアフガニスタンに対して戦争を始めたのと被る。アフガニスタンは22年後のいまどうなったのか、を直視すべき。

・9.11だけではなく、ベトナム戦争しかり、カンボジアやルワンダなどの虐殺しかり、古くは大航海時代しかり。イスラエルがやろうとしていることは世界史に新たな汚点を残すことになる。これは、過去の歴史から人類は永遠に何も学べないという証か。

「途上国ニュースの深読みゼミ」は12月も、来年1月も開講予定(全4回です)。上のような一緒に深読みしたい方はぜひ。レアなプログラムです。ハマる人も続出中。

【〆切12/2】メディアのプロと一緒に学ぶ!「途上国ニュースの深読みゼミ」(12、1月)受講者募集