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本の感想を月に二回くらい書こうと思っています

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最近の記事

コスモロジーの形成と喪失

月食を見ながら「何で私はこんなものを見ているのだ?」と思ったことがある。天体への関心。それはたとえば生活上の要請として暦法の制定や、信仰上の問題として自然崇拝の中にその根源を求めることができるかもしれない。 そんなことを考えて、一先ず星辰崇拝の本を探してみたのだがいい感じのものが見つからない。ならばアプローチを変えて占星術の本でも読んでみようかと思った。 今回読んだのは中山茂 著『西洋占星術――科学と魔術のあいだ』(講談社現代新書)。なんだか妖しげなタイトルだが、本書は科学

    • テクノロジーとテクネー

      新しい問題について考えるとき、問いの対象と同じくらいに問いを立てた動機が気になる。問題意識といってもよい。今日考えるのはいわゆる技術論についてなのだが、私としては「職業知識人はテクニテースだとこの前(ジャック・ルゴフの本を読んだ時に)考えたけれど、そもそもテクネーが何なのかうまく説明できないな」というくらいの気持ちでこの問いを始める。 今回読んだのはマルティン・ハイデガー 著、森一郎 編訳『技術とは何だろうか』(講談社学術文庫)。ハイデガーが技術について語る時、その問題意識は

      • 存在と自己顕現

        イスラーム哲学について、私は何を知りたいのだろうか。たとえばアリストテレス哲学との関係だとか、アヴェロイズムとの関係だとか……どうも二次的な関心しかないように思える。だから、今回の話が何らかの変節になることを期待している。 井筒俊彦著『イスラーム哲学の原像』(岩波新書)を読んだ。西洋哲学史におけるイスラームだとか、そういうまどろっこしい話ではない。直球ど真ん中でイスラームの、神秘主義哲学における存在論の話である。 「神秘主義哲学」と一息で言ってしまったが、神秘主義と哲学と

        • 学問と労働

          中世哲学が苦手だ。苦手なのに気になってしまうので、私は中世コンプレックスなのかもしれない。今回読んだのはジャック・ルゴフ著、柏木英彦/三上朝造 訳『中世の知識人』(岩波新書)。ジャンルとしては哲学・思想の本なのだが、本書の狙いは歴史学的・社会学的なところにある。簡潔にいえば「西欧中世において職業知識人という新しい労働者が現れた」というのが本書の主題だ。 著者のジャック・ルゴフはフランスの歴史学者である。アナール学派に属する研究者なのだが、たぶん大事なことなのでまずはここから確

        コスモロジーの形成と喪失

          道と形而上学

          形而上学の「形而上」って『易経』由来だったよな……ところで『易経』って五経でよかったんだっけ?そんな気持ちで手に取ったのは竹内照夫著『四書五経入門』(平凡社ライブラリー)。初めて学ぶ分野である。ちなみに『易経』は五経で合っている。次からは自信をもって答えてもらいたい。 さて、「形而上」の由来についてだが正確に言い直そう。「形而上学」という言葉は『易経』の 「繋辞伝」を典拠とするもので、「形而上者謂之道、形而下者謂之器」(形より上のもの、これを道と言い、形より下のもの、これを

          道と形而上学

          哲学史が楽しい

          哲学史の勉強を久々にしていたら楽しい気分になったので、何か話そうと思う。今回読んだのは伊藤邦武著『物語 哲学の歴史』(中公新書)。だいたい300頁くらいの通史で、第一章で古代中国と古代インドに僅かに触れるが基本的には西洋哲学史の話である。 新書として初学者への配慮もされている本書だが、説明しようと思えばいくらでも長く書けるのが哲学史の本である。それを一冊にまとめようとすれば当然議論は圧縮されたものになり、内容的にも難しくなる。用語レベルの話でいえば、本書の場合「アプリオリ」

          哲学史が楽しい