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好きじゃなかった街も離れる頃には

名古屋を離れる時が近づいてきた。

2年半前にこの街へ引っ越してきた時は、一刻も早く去りたくて仕方なかった。

それまで住んでいた京都という街がこの上なく好きだったということもあり、この街に住むのがしんどいくらいだった。


でもいざ離れる時が来ると、寂しくて仕方ない。

住んでいて面白いと思えなかったベッドタウンには、お気に入りの場所がたくさんできた。

桜が綺麗な道、夕陽が鮮やかに見える公園、高速道路を見下ろせる歩道橋。

なんてことない街が、どんどん特別な場所になっていった。


この街には友達がほとんどいなかったということもあり、一人でいろんな場所へ出かけた。

仕事でも東海3県のいろんな市町村へ行った。

名古屋で暮らさなければ絶対に行くことのなかった場所が、どんどん馴染みのある場所になっていった。


名古屋は面白くない都市だとよく言われる。

確かに東京や大阪ほどの派手さはないし、京都や横浜のようなその都市ならではの色も薄い。

でも、繁華街、自然、歴史、文化のどれにもアクセスのしやすい街でもあった。

栄か名駅に出ればなんでも揃うし、少し中心部から離れれば田園風景が広がる。

愛知県は全国で一番寺院が多い都道府県らしく、意外と歴史的な場所が多い。

三大都市なので、多くのライブやイベントが催される。

しかも物価が都会のわりに安いし、地下鉄も東京・大阪ほどは混まない。

かなり満足度の高い街だった。


今回の引越しが今までと違うことは、この街に来ることがもうよっぽどないということをわかっていることだ。

実家を出て大学へ進学した時は、地元にはまたすぐ帰省するとわかっていた。

大学を卒業して京都を離れた時も、友人や恋人が京都にいるので、また戻ってくることをわかっていた。

でも今回はそれがない。

それが寂しさを増幅させる。


残り少ないこの街での時間。

一分一秒をしっかり五感で噛み締めながら過ごしていきたい。

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