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がん と 生きること

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#抗がん剤治療

病歴58:アピアランスのこと

病歴58:アピアランスのこと

数日前、髪を染めた。
昨年の7月に抗がん剤を終えて、髪が再び生えるようになってから半年。
G.I.ジェーン状態を通り過ぎて、ベリーショートぐらいにはなった。
以前もこれぐらいの長さになった時、美容師さんに色で遊ぶことを教えてもらった。
その時は、ぱっと見は目立たないけれども、光の当たり具合によって、気づく人は気づくぐらいに、赤に染めてもらった。

私は、美容室迷子になっている。
昨年の抗がん剤治療

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病歴51:酸素ボンベとPET検査

病歴51:酸素ボンベとPET検査

在宅酸素療法を利用した生活が始まると同時に、飼い猫が出奔し、怒涛のうちに退院後最初の一週間が過ぎていった。幸い、猫は帰宅してくれ、私もこそっと職場復帰。
午前中だけの短時間だけの出勤と言いながら、午後も少し居残りしていたりする。
とはいえ、酸素ボンベの残り具合と相談しながら生活することになった。
個人の感覚としては、ボンベのほうが、10mをこえる長いチューブに繋げられるよりも、なんとなく動きやすい

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病歴47:薬剤性肺炎2週目

病歴47:薬剤性肺炎2週目

世間ではお盆だ。
台風一過の空がとても美しい。
空が青いと海も青い。
これまで湾内に停泊していたタンカーやフェリーの姿が消えた。
窓越しに、いつもとは違うルートで空港へ進入する飛行機を見上げる。
病院の中はとても静かだ。

入院2週目も後半になり、ここでの過ごし方もだいたいと決まってきた。
午前中にステロイドの点滴を受ける。だいたい60分以内なので、これまでのBEP療法の8-10時間耐久レースのよ

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病歴46:薬剤性肺炎1週目

病歴46:薬剤性肺炎1週目

入院して一週間が経った。
今日には退院しているはずだったのに。
そう思うと、少し、気持ちの切り替えが揺らぐ。
我が家の方を眺められる窓を見つけて、ちょっとばかり、ホームシックになっている。

先週月曜日から入院した。
BEP療法の4クール目として、入院の予定だった。
ブレオが使える最後の一回。これで一区切りと思って、入院の準備をした。
直前の一週間の体調はひどいものだった。
仕事の合間合間に咳き込

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病歴45:BEP療法3コース目

病歴45:BEP療法3コース目

いつの間にか、自分の闘病日誌もずいぶんと長くなってきた。自分自身で読み返すことは少ないのであるが、こういう記録をつけておくことが、障害の申請に役立つこともあるし、もしも誰かのお役に立つことがあれば嬉しい。

思うに、入院中というのは、刺激が統制されるので、私はルーティンで行動しやすくなり、過集中・過活動になりやすいのかもしれない。そこそこの働きものになれる。
ところが、これが自宅に帰ると、たくさん

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病歴44:BEP療法2コース目後半

病歴44:BEP療法2コース目後半

BEP療法を受け始めてすぐに髪を短くしていたのであるが、今回は今回で微妙な抜け方をしていた。
前髪の生え際から鬢のあたりが薄く残り、頭頂部や側頭部や後頭部は比較的つるつるという…。
あえて例えるならば、アバターを作るときに前髪だけを貼り付けたような違和感。
これはちょっと、帽子がうっかり脱げてしまった時が恥ずかしくて嫌だなぁ。

2回目の入院時は、粘着テープのクリーナーを持参し、毎日のように枕をコ

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病歴43:BEP療法2コース目前半

病歴43:BEP療法2コース目前半

手の親指の爪を見て驚いた。
爪の根元が打ち身のように青紫になっている。
見れば、両手とも。
親指以外のどの指の爪の根元も、なんだか青い。
ちょっとびっくり。

5月末。BEP療法の2コース目は、一週間遅れて始まった。
とりあえず始まったら進むしかない。そして、先に進まないと終わらない。
入院したら勝手に退院できないし、点滴は途中でやめるわけにはいかないし。
体に入った薬剤を追い出すこともできない。

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病歴42:BEP療法1コース

病歴42:BEP療法1コース

5月から始まったBEP療法。
前回の記事では、その始まったばかりの入院中に書いた。
2つ目の記事は、なにはともあれ、1コース目が終わってから書こうと思っていた。
まだ、2コース目は始まっていない。

第1週は、5日間連続で点滴をする。1回の点滴は日によって前後するが、6-8時間程度。
10時頃に開始して、18時前後に終わっていた。それが5日間続くので、入院して受けた。
そして、第2週、第3週は、一

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病歴41:ただいま入院中

病歴41:ただいま入院中

5月になり、連休明けの出勤する人たちを横目で見ながら、入院になった。
ようやく治療を受けることができる。

4月上旬の診察で腫瘍が大きくなっており、治療を切り替えることになって、それまで服用していたオラパリブを中断。
コロナにはなったものの、いくらか身体の状態としてはよい時でよかったと思う。
それから更に2週間が経過し、ほぼ4週間、腫瘍を抑制するような治療を受けていない。
体は楽であるが、ちくちく

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母に頭をなでてもらった

母に頭をなでてもらった

50歳を過ぎて、母に頭を撫でられることがあるとは思わなかった。

抗がん剤治療が終わったのが11月。
一ヵ月した頃から髪が伸び始めたので、年が明けての1月だったか、2月になってからだったか。

風呂上り、洗面台で化粧水などを使っていると、母が私の頭を見ていた。
髪の長さは5mmぐらいには伸びていた。地肌が見えて、全体に青っぽく見える頃合いだ。
そう。まるで、昔の野球少年のいがぐり頭のような、そうい

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「癌が治ればそれでいいよね。」じゃねーんだよ!【癌治療と妊娠機能をのこす治療の狭間でもがく私の話、現在進行形】

「癌が治ればそれでいいよね。」じゃねーんだよ!【癌治療と妊娠機能をのこす治療の狭間でもがく私の話、現在進行形】

この言葉を聞いたことがある人は、今、この日本社会にどれだけいるのだろうか?と、今の私は思わずにはいられない。

それくらい、聞き馴染みのない言葉、聞く機会のない言葉であることは間違いない。

私自身も、昨年(2022年)12月、癌(悪性リンパ腫)になって初めて聞いた言葉だった。

2ヶ月前までは今まさに、これを読んでくれている皆さんと一緒だったから・・・。

癌(悪性リンパ腫)発覚。
12月1日、

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病歴36:マッサージを受けたい

病歴36:マッサージを受けたい

6回目の抗がん剤の後から、口内炎が気になるようになった。
この7回目のクールも、やっぱり口内炎ができた。
どうやら、白血球が一番少なったあたりで、口内炎がひどくなるようだ。

現在、通院先ではメインの婦人科のほか、緩和ケア内科と歯科にもかかるようになった。
その歯科で、抗がん剤治療中、リンパが滞って、顔が腫れるので、頬の内側を噛んだり、舌を噛んだりしやすくなると説明を受けた。
顔が腫れる。
ショッ

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病歴34:6クール目の痛みとケア

病歴34:6クール目の痛みとケア

足の裏が痛い時は、人魚姫を思い描く。
くるぶしが痛い時は、オイディプスを思い出す。
すねが痛い時は、弁慶になるのだろうか?

痛みというのは、他者の目に見えない、極めて主観的な体験だ。
痛みを説明するのは難しいし、他者の痛みを理解することも難しい。
痛みの中には、心の痛みや魂の痛み(スピリチュアルな痛み)もあるし、体の痛みもある。
心や魂の痛みは、心や魂がそもそも見えないものであるが、体の痛みだか

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病歴33:抗がん剤中のコロナワクチン

病歴33:抗がん剤中のコロナワクチン

5回目の抗がん剤治療の日にコロナのワクチン接種を受けたほうがいいことになり、その日のうちに接種券を申し込んだ。
ひとつ前の記事にワクチン接種の話を一旦は書いたが、整理のために一部を削除して、こちらに書き直すことにする。

コロナのワクチン接種のタイミングが非常に限定的であることを、主治医から説明された。
場合によっては、ワクチン接種にあわせて、抗がん剤治療の日程をずらすこともあると言われた。
とは

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