【連載小説】「北風のリュート」第14話
前話はこちら。
第14話:絲口(1)
【4月28日 鏡原】
昨日の気象学会でも、鏡原の現況が話題にのぼった。
狭い盆地では明け方に下層雲が広がり、俗にいう「朝曇り」という現象が起こりやすい。山頂から雲海は眺められるが、雲が盆地に蓋をするため放射冷却をさえぎり熱帯夜の原因になる。日が昇ると雲は消え穏やかに晴れる。一方、鏡原では雲がもうひと月以上居座っている。学会出席者は一様に異常を指摘はするが、半年前の強風の頻発と関連づける見解はなく、地球温暖化の影響で片付けられた。温暖