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小説『虹の振り子』

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中編小説『虹の振り子』をまとめています。 国際結婚と家族の物語です。
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#家族の物語

小説『虹の振り子』<全文>

【本作品は、2021年8月より連載を続け、先日、完成した『虹の振り子』を#note創作大賞に応募するため、加筆修正したものです。】 * * * * * <登場人物>  翔子:主人公 芳賀啓志:翔子の父      芳賀朋子:翔子の母           芳賀登美子:啓志の母、翔子の祖母       芳賀仁志:啓志の父、翔子の祖父         ジャン:翔子の夫(イギリス人)  鳥越玲人:翔子の従兄      鳥越貴美子:玲人の母、啓志の姉   鳥越瑛人:玲人の息子   鳥

小説『虹の振り子』22<最終話>

第1話から読む。 前話(21)から読む。 <登場人物>  翔子:主人公 芳賀啓志:翔子の父      芳賀朋子:翔子の母           芳賀登美子:啓志の母、翔子の祖母       芳賀仁志:啓志の父、翔子の祖父         ジャン:翔子の夫(イギリス人)   鳥越玲人:翔子の従兄      鳥越貴美子:玲人の母、啓志の姉     鳥越瑛人:玲人の息子   * * * * * 第4章:虹――<スイング> 05  翔子は『資本論』を棚に戻す。  雨があがったのだ

小説『虹の振り子』21

第1話から読む。 前話(20)から読む。 <登場人物>  翔子:主人公 芳賀啓志:翔子の父      芳賀朋子:翔子の母           芳賀登美子:啓志の母、翔子の祖母       芳賀仁志:啓志の父、翔子の祖父         ジャン:翔子の夫(イギリス人)    鳥越玲人:翔子の従兄     鳥越瑛人:玲人の息子   * * * * * 第4章:虹――<スイング> 04  隣家との塀にそって孟宗竹の植えられた北向きの書斎は、とがった陽ざしが射し込むこともなく、

小説『虹の振り子』20

第1話から読む。 前話(19)から読む。 <登場人物>  翔子:主人公 芳賀啓志:翔子の父      芳賀朋子:翔子の母           芳賀登美子:啓志の母、翔子の祖母       芳賀仁志:啓志の父、翔子の祖父         ジャン:翔子の夫(イギリス人)    鳥越玲人:翔子の従兄     鳥越瑛人:玲人の息子   * * * * * 第4章:虹――<スイング> 03  ――この屋敷を残したい。  その思いは、玲人にもあった。叔父は最後まで口にはしなかったけ

小説『虹の振り子』19

第1話から読む。 前話(18)から読む。 * * * * * 第4章:虹――<スイング> 02  翔子の困惑など素知らぬげに、庭の青紅葉の枝で四十雀が甲高い鳴き声をしきりにあげていた。  いつもは深く濃く凪いでいる翔子の黒目がちの瞳が、視点が定まらずに泳いでいるのを、玲人は認めた。幼いころから翔子は動揺すると瞳が泳ぐ。翔子が何を懸念しているのか、胸のうちが手にとるようだと、玲人は思った。 「叔父さん、ここからは、僕が」  玲人が啓志に目くばせする。 「どの順で話したものか

小説『虹の振り子』18

第1話から読む。 前話(17)から読む。 * * * * * 第4章:虹――<スイング> 01  翌日は、朝から晴れていた。  縁側の端から、朝の光の束が細い筋となってハープの弦のように並び、居間まで射し込んでいる。光の音色が聞こえてきそうだと翔子は思った。  ――昨日、梅雨入りが発表されたというのに、空も気まぐれね。  広縁から庭に下りて、空を見あげる。  刷毛ではいたような薄い雲がたなびいていた。築山の裾で紫陽花が白くまるい顔を輝かせている。  翔子は、うーんと大きく

小説『虹の振り子』17

第1話から読む。 前話(16)から読む。 <登場人物>  翔子:主人公 芳賀啓志:翔子の父      芳賀朋子:翔子の母           芳賀登美子:啓志の母、翔子の祖母       芳賀仁志:啓志の父、翔子の祖父         ジャン:翔子の夫(イギリス人)  鳥越玲人:翔子の従兄  * * * * * 第3章:帰宅――<ホーム> 09 「いい機会だから、私からもひとつ謝っておこう」  翔子の視線を受け止めると、父がまるで世間話でもする気軽さで言う。  雨があが

小説『虹の振り子』16

第1話から読む。 前話(15)から読む。 <登場人物>  翔子:主人公 芳賀啓志:翔子の父      芳賀朋子:翔子の母           芳賀登美子:啓志の母、翔子の祖母       芳賀仁志:啓志の父、翔子の祖父         ジャン:翔子の夫(イギリス人)  鳥越玲人:翔子の従兄  * * * * * 第3章:帰宅――<ホーム> 08  タクシーは切妻屋根のある門の前で停車した。  門をくぐると、竹林の小径を思わせる小柴垣に守られた竹がエントランスまで続く。縦

小説『虹の振り子』15

第1話から読む。 前話(14)から読む。 * * * * * 第3章:帰宅――<ホーム> 07  竹林の小径の入り口でタクシーを降りた。  まだわずかにそぼ降る雨が残っていた。  小柴垣に囲われまっすぐ天に伸びる竹が、高い先をしならせ両側からなびき、小径を天蓋のように覆う。このくらいの雨なら傘は要らない。笹が微小な雨粒のヴェールをまとい、下から見あげる緑はいっそうあでやかで清冽だった。  映画やドラマの撮影でなじみの竹林の小径は、野宮神社からはじまり大河内山荘へと抜ける。

小説『虹の振り子』14

第1話から読む。 前話(13)から読む。 <登場人物>  翔子:主人公 芳賀啓志:翔子の父      芳賀朋子:翔子の母           芳賀登美子:啓志の母、翔子の祖母       芳賀仁志:啓志の父、翔子の祖父         ジャン:翔子の夫(イギリス人)  鳥越玲人:翔子の従兄 * * * * * 第3章:帰宅――<ホーム> 06  翌日は、朝から細い雨が降っていた。  軒を跳ねる規則的な雨音で翔子は目を覚ました。  朝食の準備を手伝うつもりでいたのだが、

小説『虹の振り子』13

第1話から読む。 前話(12)から読む。 <登場人物>  翔子:主人公 芳賀啓志:翔子の父      芳賀朋子:翔子の母           芳賀登美子:啓志の母、翔子の祖母       芳賀仁志:啓志の父、翔子の祖父         ジャン:翔子の夫(イギリス人)  鳥越玲人:翔子の従兄 * * * * * 第3章:帰宅――<ホーム> 05 「いいかい、翔子。人は揺れながら生きているんだよ。現代と過去、未来との間を、振り子のように」  ――えっ?   翔子は膝に抱えた

小説『虹の振り子』12

第1話から読む。 前話(11)から読む。 <登場人物>  翔子:主人公 芳賀啓志:翔子の父      芳賀朋子:翔子の母           芳賀登美子:啓志の母、翔子の祖母       芳賀仁志:啓志の父、翔子の祖父         ジャン:翔子の夫(イギリス人)  鳥越玲人:翔子の従兄 * * * * * 第3章:帰宅――<ホーム> 04 「暑くなってきたね」  陽は射しこまずとも、ぬるく居座る熱気はすべりこむ。  父は立ち上がると、書斎机の前の窓を閉め、エアコンの

小説『虹の振り子』11

第1話から読む。 前話(10)から読む。 <登場人物>  翔子:主人公 芳賀啓志:翔子の父      芳賀朋子:翔子の母           芳賀登美子:啓志の母、翔子の祖母       芳賀仁志:啓志の父、翔子の祖父         ジャン:翔子の夫(イギリス人)  鳥越玲人:翔子の従兄     鳥越貴美子:玲人の母、啓志の姉 * * * * * 第3章:帰宅――<ホーム> 03  盆に茶菓子をのせ居間に戻ると、父の講義は途切れることなく続いていた。  庭の築山の裾で

小説『虹の振り子』10

第1話から読む。 前話(09)から読む。 <登場人物>  翔子:主人公 芳賀啓志:翔子の父      芳賀朋子:翔子の母           芳賀登美子:啓志の母、翔子の祖母       芳賀仁志:啓志の父、翔子の祖父         ジャン:翔子の夫(イギリス人)  鳥越玲人:翔子の従兄     鳥越貴美子:玲人の母、啓志の姉 * * * * * 第3章:帰宅 ―― <ホーム> 02  「ただいま」と声をかけながら、翔子は玄関の格子戸を引く。  低く剪定され、古色蒼