伝統に頼らず、自らの言葉で思想を語る
宮本武蔵が著わした『五輪書』は、『私の人生観』の当時はまだ評価が定まっていなかった。それでも小林秀雄は宮本武蔵という人物像を読み取った。
「仏法儒道の古語をもからず、軍記軍法の古きを用ひず」というのは、「仏教や儒教の古くから使われてきた言葉を借りることなく、軍記や軍学の故事を引用することもせずに」(『ビギナーズ日本の思想 宮本武蔵「五輪書」』魚住孝至現代語訳)という意味である。有名な格言や、定評ある先人の言葉をもって、自分の考えを権威づけたり、飾り立てようとせず、自分の言葉