『葉隠』、宮本武蔵、そしてスティーブ・ジョブズへたゆたう
戦争中に、従軍記者をしたり、兵士相手に講演をした小林秀雄は戦後、軍国主義プロパガンダに加担したとして、ずいぶん叩かれた。同様に、宮本武蔵の言葉や、『葉隠』における武士道の考え方が戦争中の美徳として語られたことから、戦後はいずれも非難の的となった。
『葉隠』が書かれる約70年前、宮本武蔵は『五輪書』で、すでにその危険性を指摘している。
徳川の時世になって40年あまり。合戦がなくなり、武士は官僚となり、剣術は武芸となった。実戦の経験がない若い武士は、戦いや死を観念的に考えがち