小林秀雄の“講演文学”が心地よい
例に漏れず、受験勉強の評論文で小林秀雄にほとほと懲りて、不惑をはるかに過ぎてからようやく味読できるようになった「遅い」読者である。それでも、どこか読後にざらつきがあり、繰り返し手に取っては読んでいる小林秀雄の作品が三つほどあることに気付いた。『美を求める心』『信ずることと知ること』そして『私の人生観』である。
どうしてだろうと考えてみたところ、いずれも講演録に後から加筆した文章なのだ。道理で自分に語りかけてきて、鈍い頭にも染み入るような響きがある。のちに講演CDも全巻入手し