大人の「現代文」……『羅生門』12『檸檬』との比較
『檸檬』との比較
いずれ触れるつもりでしたがちょっと梶井の『檸檬』を見てみましょう。『檸檬』の冒頭に有名な?「えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧えつけていた」という一文があります。主人公は、日々その「塊」に精神的に苦しめられていると告白するのですが、すぐに、その「不吉な塊」は二日酔いでもなく、肺病の憂鬱からくるものでもなく、いわんや大量の「借金」のせいでもないと宣言します。この「不吉な塊」は、そんな具体的な理由に拠らない、もっと「抽象的な」苦悩だぞ!すなわち「高貴な