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大人の「現代文」55……『こころ』始めます。はじめに……。


「人間の関係」が読みの基軸なんです。


  これは、あまり(というか殆ど)指摘されないのですが、『羅生門』をはじめ『舞姫』『こころ』『山月記』など、高校の「現代文」で伝統的に教えられてきた「小説」には、ある特徴があるんです。

 どういう特徴かというと、どの作者もものすごく真面目に「人間とは何か」という問題意識を持って作られているのは言うまでもないのですが、その問題意識が「倫理」にわかりやすく表現されているということです。

 『羅生門』の下人、『舞姫』の豊太郞、『こころ』の先生、『山月記』の李徴、『檸檬』』の主人公、いずれも作家が「人間=日本人」の心の「あり方」を深く見つめ、その「葛藤」を描いているのですが、その「葛藤」が漠然としたものではなく、「倫理」に関する葛藤ということです。

 ただし、私の言う「倫理」とは、人間のあらゆる行動に伴う倫理と言った広い意味ではなく、また、西洋由来のいかめしい「倫理学」ではなく、我々が日々、無意識に当たり前に意識している、「人間同士どう関わるべきか」という意味での「人間関係の倫理」ということです。

 この「人間関係の倫理」を基軸に読むと、上記の作品群はすべて一本の糸でつながるように解明されるということは、実は『羅生門』『舞姫』ですでに説明しているのですが、おわかりになりましたか?生徒が文学作品を読む際、まずこの視点で読むんです。生徒は、基本的にその小説に表現されている、人間の関係の仕方、そこに反応するのです。そしてそれは当然、多くの日本人の基本的な読み方になると思うのです。

 そんなことを意識して『こころ』読解に進んでみましょう

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