虎井春&蜂芳弌

高校生詩人の虎井春、蜂芳弌の公式アカウントです。 読みは『とらいはるアンドはちほういち…

虎井春&蜂芳弌

高校生詩人の虎井春、蜂芳弌の公式アカウントです。 読みは『とらいはるアンドはちほういち』。 特に断りがない限り、作品の名義は『虎井春&蜂芳弌』になります。 詩を通じて皆さんに自分の思いを正直に伝えていくことが目標で、 その中で、皆さんの人生にささやかな何かを届けられたら幸いです。

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詩『私』

臍の緒が断たれた瞬間から 生命は自意識を押し付けられる。 羊皮紙を被った狼のように 虚無の骸に閉じ込められて。 夏場に冷房の効いた部屋で風鈴の音を聴くように 居心地の良い場所と言葉で身を護る。 蚊に刺され腫れた左腕を掻き毟るように 傷つけられたら躍起になって抗う。 本当は何も持っていないのに。 そこに舞い降りたのは 天使でも妖精でもなく貴方だった。 納屋の奥に眠っていた缶詰が開くように 私の心に亀裂が走った。 体温の優しさと 感情の鮮やかさを知った。 でも 冬場にド

    • 詩『b-side aquamarine』

      湿らせた両手の指先で擦る玻璃製の器の縁 電気水母のアウフヘーベン 躄蟹のアンチテーゼ 添え物程度の劇伴を奏でる誰のためでもなく。 不確かな両足の爪先で蹴飛ばす二酸化ケイ素の飛礫 藤壺のニヒリズム 鯨影のポリリズム 付属品程度の讃歌を口遊む誰に聞かせるでもなく。 飛び込めば泡に包まれる白む視界には海の冒頭 貝殻を押し当てた鼓膜の向こう寄せては返す記憶。 湿らせた両手の指先で擦る玻璃製の器の縁 電気水母のアウフヘーベン 躄蟹のアンチテーゼ 添え物程度の劇伴になりすます誰のた

      • 詩『生憎』

        温存していた体力の限りをはみ出して飛び出した少量の日焼け止め 血の気のない左掌を撃ち抜いて中身のなくなった容器を捨てる。 代替品で満ちた店頭の棚 必需品っていうのは性格の悪い言葉だ 生理用品の棚の前で肌を焼く切れかけの蛍光灯を見上げた。 生活を憎んだとしても太刀打ちできるほど頑丈じゃない心 河原の石を流れに投げ込んだ沈んだ波は荒ぶっては流れに負けた。 想像していた景色は疾うに限りをはみ出して破裂した少量のマヨネーズで 銀色で無機質なシンクを撃ち抜いて中身のなくなった容器を

        • 詩『sugarfree violet』

          瞳孔に宿る光がざわめく瞬間ばかりに囚われていたみたいだ 粘土細工に魂を分け与えることで偶像を創り出してきた若気の至りだ。 退屈で灼けた野生の断片にそう言い聞かせて宥めた。 満員電車に立ち籠めた防虫剤の匂いに踏み躙られたみたいだ 気泡が浮かぶ端末の表面と抹茶ラテで暇を持て余した痛みは忘れた。 蝉時雨で剔れた理性の胚軸を失わぬように抱き締めていた。 喉の奥まで痺れるような苦味を貴方は注いでくれた 糖質含有量はゼロのすみれ色の絶望を。 瞳孔に宿る光がざわめく瞬間ばかりに囚われ

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        • note創作大賞応募作品
          37本
        • 作品
          50本
        • 連作『逢魔が時』
          6本
        • Poem English Version
          2本
        • 連作『青春は密室だ』
          7本

        記事

          雑談⑩(創作について)

          こんにちは、蜂です。 突然ですが、私は創作という行為は特殊な行為だと思っています。創る、というと何だか無の海原の中に色彩を溢して新たな世界を想像することのように聞こえますが、どちらかというと私にとっての創作は、泥濘の中から蓮の地下茎を引っこ抜くような行為なのだと思います。 無から何かを生み出すなんて物理学上は無理な話です。勿論、仮にこの世に神と呼称できる存在がいるのであれば話は別ですが、今のところ私は基本的に無神論者としての立場を貫いているので、この話は今回はなしにします

          雑談⑩(創作について)

          詩『存在』

          Error 404 not found when i came back to that place you could not be found there was only a white scenery had you been there until that time however you could not stand anymore i was too late because of my foolishness please give me one m

          連作の最後に『逢魔が時』

          酉の刻 サイレン。 鉄塔 烏の群れ。 夕陽 自転車の前照灯。 点滅信号 監視カメラ。 松葉杖 緑雲。 欺瞞 猜疑心。 街灯 踏切。 素因数分解。 逢魔の世界で影を見る。 さよなら。

          連作の最後に『逢魔が時』

          連作詩⑤『鹿鳴の宴』

          毎朝 見慣れた景色から日に日に消えていく 電子辞書 参考書の束あとは寝台の下に隠した百合漫画。 端末に溜まっていた哲学めいた贈答も塵箱にぽいっして。 雨垂れで塗料が剥げ落ちた骨董店の前で 舐める氷菓 物語の悪戯それに選択洗剤の詰替え用。 端末が鳴いて届いた皮肉めいた独り言も既読スルーして。 虚勢を張って伸ばした角も切り落とす時だ 別離は世の常だから復た巡り逢えたなら。 毎朝 見慣れた景色から日に日に消えていく 電子辞書 参考書の束または寝台の下に隠した百合漫画。 端末に

          連作詩⑤『鹿鳴の宴』

          今まで言っていませんでしたが私はOfficial髭男dismの大ファンです。好きな曲は『parade』(というか全部?笑)です。音楽の話も好きなのでなにかの話でフォロワーの皆様とでお話できたら嬉しいです。詩も勿論続けていきますので、改めてよろしくお願いします!それじゃ夢の中で!

          今まで言っていませんでしたが私はOfficial髭男dismの大ファンです。好きな曲は『parade』(というか全部?笑)です。音楽の話も好きなのでなにかの話でフォロワーの皆様とでお話できたら嬉しいです。詩も勿論続けていきますので、改めてよろしくお願いします!それじゃ夢の中で!

          連作詩④余桃の罪

          深夜に帰宅後ひとりで温めた晩御飯は薄味で物足りない 不満を羅列するのだけ得意で貴方の陰で憩う祝日の夕暮れ時。 零れ落ちた果実を齧って片付けもせず眠る毎日に。 早朝の出勤前シャツが皺くちゃで見るに耐えない 鎮痛剤で誤魔化した愛情の搾取が交感神経を刺激する朝焼け時。 自己嫌悪に気付いた時には果実は腐敗しきっていた。 喉元に溜め込んでいた ごめんねは 欺瞞に過ぎないと自覚していた。 深夜に帰宅後ひとりで温めた晩御飯は薄味で物足りない 言い訳を羅列するのだけ得意で貴方の陰で溜飲

          連作詩④余桃の罪

          同級生の中に共感してくれる人が居ない、『ウルトラセブン』の素晴らしさについて。円谷の特撮作品の中でも視覚効果・劇伴・プロットの全てが群を抜いていると私は思います。まあ、多少無理のあるエピソードもありますが笑。いずれにせよ興味深い作品ですので、是非よしなに(宣伝とかではないです)。

          同級生の中に共感してくれる人が居ない、『ウルトラセブン』の素晴らしさについて。円谷の特撮作品の中でも視覚効果・劇伴・プロットの全てが群を抜いていると私は思います。まあ、多少無理のあるエピソードもありますが笑。いずれにせよ興味深い作品ですので、是非よしなに(宣伝とかではないです)。

          星野源さんの曲『ばらばら』が好きなのですが、ばらばらの世界で生きていくことって難しくて自分自身嫌気が差してしまいます。実際、アメリカ社会には修復可能なほど大きい亀裂が随所に走っています。ばらばらな世界で、ひとつになれない世界で、私達は生きていく。不安と幸福を抱えながら。

          星野源さんの曲『ばらばら』が好きなのですが、ばらばらの世界で生きていくことって難しくて自分自身嫌気が差してしまいます。実際、アメリカ社会には修復可能なほど大きい亀裂が随所に走っています。ばらばらな世界で、ひとつになれない世界で、私達は生きていく。不安と幸福を抱えながら。

          連作詩③『梨園の弟子』

          舞台裏で照明のスイッチを握り締めて貴方を見送る 私達は暗黙の了解で刻まれた台本を開いて一字一句澱みなく 奥歯にこびり付いた青海苔を隠しながら読み続ける。 舞台袖の代役の背中を無責任に押し出して見送る 私達は不可避の宿命が綴られた脚本を棄てて一挙手一投足迷いだらけで 棘の如く傷む刺青を胸に彫り出したまま駆け出していく。 月並みな演技で覆われた予定調和の世界に 即興演奏の隕石を投げ込む汚れ役くらいがお似合いだ。 舞台裏で照明のスイッチを握り締めて貴方を見送る 私達は暗黙の了

          連作詩③『梨園の弟子』

          連作詩②『盃中の蛇影』

          疑心暗鬼に食い潰された臓器が不調をきたして眠りに就くのもひと苦労だ 盃の水面に揺れる弦音は網膜に波打つ白鷺の彫刻を穿つだけ。 飲みかけを渡されて複数種の二重螺旋が絡まるカフェラテのボトルと 妙に神経質な指先は鍵盤を弾く振りでもしていないと落ち着いてくれない。 頭蓋骨に張り巡らされた血管を鋭い速度で駆け抜ける蛇を 飼い慣らす術もなく暴走していく跳梁跋扈していく体躯。 葉書を彩る郵便切手みたいに隅の方で蹲っていなきゃ後ろ指が恐けりゃ 盃の水面に揺れる弦音は網膜に波打つ鵲の彫刻

          連作詩②『盃中の蛇影』

          連作『逢魔が時』を始めました。note創作大賞に応募するつもりですが期限的に難しいかもしれません...。とりあえずアニメで元気を出します笑。二度目にはなりますが今季最もお薦めのアニメのリンクを張っておきます。青春は謎解きだ! https://shoshimin-anime.com/

          連作『逢魔が時』を始めました。note創作大賞に応募するつもりですが期限的に難しいかもしれません...。とりあえずアニメで元気を出します笑。二度目にはなりますが今季最もお薦めのアニメのリンクを張っておきます。青春は謎解きだ! https://shoshimin-anime.com/

          連作詩①『亡羊の嘆』

          布団を捲っても蛻の殻で白髪が数本 卓上に並べられていた 枝分かれした闇路に溶けた貴方を探すため部屋を漁る。 玉石混交の格言集に惑わされ根拠もなく道の梢を目指した 錆びた鎖で繋ぎ留めていただけの羊雲は八つ裂きになった。 食欲が減退していたとか耳にしたようなしていないような 暖かく抱き締めてくれた貴方の腕に嚙みついていたような。 扉を開いても伽藍堂で口紅が数本 鏡台に並べられていた 破砕された記憶に揺れる貴方を探すため部屋を漁る。 信憑性のない都市伝説に掻き立てられ意味もなく

          連作詩①『亡羊の嘆』