虎井春&蜂芳弌

高校生詩人の虎井春、蜂芳弌の公式アカウントです。 読みは『とらいはるアンドはちほういち…

虎井春&蜂芳弌

高校生詩人の虎井春、蜂芳弌の公式アカウントです。 読みは『とらいはるアンドはちほういち』。 特に断りがない限り、作品の名義は『虎井春&蜂芳弌』になります。 詩を通じて皆さんに自分の思いを正直に伝えていくことが目標で、 その中で、皆さんの人生にささやかな何かを届けられたら幸いです。

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詩『私』

臍の緒が断たれた瞬間から 生命は自意識を押し付けられる。 羊皮紙を被った狼のように 虚無の骸に閉じ込められて。 夏場に冷房の効いた部屋で風鈴の音を聴くように 居心地の良い場所と言葉で身を護る。 蚊に刺され腫れた左腕を掻き毟るように 傷つけられたら躍起になって抗う。 本当は何も持っていないのに。 そこに舞い降りたのは 天使でも妖精でもなく貴方だった。 納屋の奥に眠っていた缶詰が開くように 私の心に亀裂が走った。 体温の優しさと 感情の鮮やかさを知った。 でも 冬場にド

    • 詩『挿絵』

      異様に白く煌めく朝の冷蔵庫と 無駄に塩辛い明太子パスタ、 脇のあたりが濡れたままの苺柄の寝間着と 首の凝りを解す扇風機。 充電切れ間近の電子辞書で調べる単語 電波の悪さを推測で補填したラジオ、 庭から湧き出し壁に黒線を描く蟻の列 賞味期限切れの二本の辣油。 この景色は誰が読んでいる書籍の挿絵に過ぎない、 軽やかで柔らかな色彩に包まれて私達は毎日を指切りで誤魔化す。 誰も使わない電話帳の付箋と 駄菓子屋で買った氷菓のハズレ棒、 南風が擽る乾いた苺柄の寝間着と 黒猫のキーホル

      • 雑談⑧(七夕のお話)

        こんにちは、蜂です。 久方ぶりの雑談です。今日は七夕ということでお話をしたいと思います。 七夕といえば様々なことが思い浮かびます。織姫と牽牛の恋物語は一般的によく知られ、それぞれ こと座のベガ・わし座のアルタイルとして実際に星空観察でその存在を日本では身近に感じることが出来ます。 鵲が天の河を跨ぐように橋を架け、二人は年に一度の逢瀬を迎えます。恋という感情は夏の宇宙という壮大な舞台や冬の渡り廊下という日常的な舞台等あらゆる場所に潜在しているのだなあと実感します。 他にも

        • 詩『seventeen』

          独り法師の素数を肩に背負って 色紙の切れ端をぶら下げて 華が咲いたら枯れる運命を割り切りながら掌を月に翳した。 貴方の早歩きに走らされて節々が痛む体躯に鞭打って 猫の寝床の前を踵が地面と擦れる音さえ殺して通り過ぎて。 誰そ彼刻の虚空の色彩は空気遠近法で滑らかに溶けていた 貴方はミルフィーユの層みたいだとミント風味の吐息で囁いた。 鮮血流れる唇を重ね合わせて 柔らかな細胞を交換して 華が咲いたら枯れる運命を割り切りながら掌を月に翳した。 貴方の早歩きに走らされて節々が痛む体

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        • 作品
          39本
        • note創作大賞応募作品
          27本
        • Poem English Version
          2本
        • 連作『青春は密室だ』
          7本

        記事

          大変申し訳ありませんが、コメントへの返信を中断させて頂きます。近日の気象のためか体調が優れないことが続いています。皆様も百も承知でしょうが、本当にご自愛ください。詩の投稿は継続するつもりですが、無理のない範囲で行うのでよろしくお願いします。

          大変申し訳ありませんが、コメントへの返信を中断させて頂きます。近日の気象のためか体調が優れないことが続いています。皆様も百も承知でしょうが、本当にご自愛ください。詩の投稿は継続するつもりですが、無理のない範囲で行うのでよろしくお願いします。

          詩『shoegazer』

          誰も興味なんて湧かない根も葉もない噂話みたいに 見慣れて忘れ去られた靴底に糊付けされた影のように 無視されながら甘い夏を雲霞を掴むように追いかけている。 靴擦れて赤く腫れた踵を薬で塗り潰しても 熱量過多で焦がした鍋底をたわしで磨いて洗い流したとしても 俯く瞬間に瞳に映る幽霊は永遠に私達に付き纏い続ける。 種明かしのない奇術の舞台に茶化されているみたいだな 愚痴を垂れる腑抜けた心根に貴方が撒いた水で 根腐れしそうだよ 誰の所為でも過誤でもないけど。 記憶に残らない些細な

          詩『shoegazer』

          詩『生活』

          白湯みたいな朝陽が染み込む寝室 互いの心臓を重ねて眠る毎日、 苺柄の寝間着を纏う きみが小豆の枕を常夜燈に向かって高く投げる。 寒空が微苦い珈琲にざらめを注ぐ 香ばしく匂うメープル、 毎日の意味を忘れぬように指先を絡める儀式を済まして口づけ。 天気予報曰く本日快晴なり。 如雨露を洗う朝に ただいまが重なる。 蜜柑みたいな夕陽が溶かす煙突 互いの履歴を探り合う毎日、 惣菜を飾る値引きシール きみは緑黄色野菜の健康ジュースを籠に入れる。 湯煙の中 恥じらい泡だらけにな

          詩『副作用』

          希望の錠剤を過剰摂取して興奮状態に突入したら、 感覚器官を縛る箍を引き裂いて晩餐饗宴の始まりだ。 燕尾服には発泡酒の残り香 靴下の中指の穴から油混じりの砂、 充電中の携帯端末に降り積もる着信拒否の記録。 関係ない で中途半端に刃を振り翳した糸電話の生命線、 未曾有の災厄や天変地異を待つ腐敗した密室。 絶望の錠剤を過剰摂取して鎮静状態に陥ったら、 精神機関に宿る夢に酔い痴れて入眠幻覚のお祭りだ。 流し台には麦酒の残り香 暴れる親知らずが妨害する言葉、 蓄積済みの文庫本を

          詩『副作用』

          詩『鼻濁音』

          溜息で曇る公衆電話の玻璃に薬指で似顔絵を描く、 受話器越しに響く鼻濁音がくるりと鼓膜を叩く。 風邪気味なんだね 無機質に唇を震わす台詞、 銅製硬貨で購入する五十六秒間の執行猶予。 闇の緞帳で覆われた公園の中で 異様に白く光る私的会話の部屋。 革靴で躙る公衆電話の砂礫に爪先で渦巻を描く、 受話器越しに響く鼻濁音がかちりと感情を敲く。 本当は泣いてたでしょ 無機質に喉を震わす台詞、 銅製硬貨が底をつき五十六秒間の静寂が幕を開ける。

          詩『鼻濁音』

          詩『embrace』

          凋む風船に息を吹き込んで膨らますように 海藻に金魚が産み落とした卵を見守るように、 深夜の即席麺に静かに熱湯を注ぐように 寝癖に気付かない人を見て黙って微笑むように。 極彩色の蠟燭を誕生日ケーキに並べるように 月面探査記が撮影した写真を壁にピンで貼るように、 役目を終えた鍵盤楽器の蓋を静かに閉じるように 残し物だらけ弁当箱を黙って片付けるように。 私達は互いに抱擁する 邂逅のときも惜別のときも。 太陽に温められた洗濯物を小さく畳むように 軒先に芽吹いた氷柱の体細胞分裂を

          詩『紙一重』

          故障した照度感知器のせいで取り残された光の隙間、 深煎り珈琲の表面に牛乳の泡沫が白雲のように浮かぶ。 円盤の海を泳ぐ蓄音機の針が増幅する録音スタジオの雑音、 翠玉色のマスカットの果皮を齧るとき溢れるあまい潮。 目障りな光線に癒やされる日と、 平穏の毎日に苛立つこと。 蓋を閉め忘れた清涼飲料水で滲んだ鞄の中身と予定表、 未開封の避妊器具が横たわる抽斗に相合い傘の落書き。 球鎖の輪廻に絡まる別邸用の鍵が再生する幼少期の騒音、 煉瓦色のアーモンドの果皮を齧るとき拡がるにがい空。

          詩『紙一重』

          記念と言っては何ですが、フォロワーさんの数が二桁になりましたので、ご報告します。より沢山の人に見てもらえるのは嬉しいことですし、何よりも詩を創作し それを読んでくださる人がいらっしゃることで、私の詩の世界は成立しているものと思われます。これからも宜しくお願いします。

          記念と言っては何ですが、フォロワーさんの数が二桁になりましたので、ご報告します。より沢山の人に見てもらえるのは嬉しいことですし、何よりも詩を創作し それを読んでくださる人がいらっしゃることで、私の詩の世界は成立しているものと思われます。これからも宜しくお願いします。

          詩『先行配信』

          新曲の先行配信を世界で最初に再生した人類になれたら 大衆の前衛に立って誇らしく死ねるような気がした。 新曲の先行配信を世界で最初に聞き終えた人間になれたら 銀河系の対蹠点にも手が届くような気がした。 ただ垢抜けたいだけなのに 直ちに蛻の殻となりたいだけなのに、 目眩く遊星の殻は単位時間ごとに破れ 数多の破片が鳩尾に突き刺さる。 新曲の先行配信を世界で最初に再生した人類になれたら 両肩を腫らした重荷が霧同然となる気がした。 新曲の先行配信を世界で最初に聞き終えた人間になれず

          詩『先行配信』

          個人的百人一首 ①

          蜂です。私が好きな短歌を百首紹介してみようと思います。 掲出歌その1解説・感想 日露戦争の開戦を憂えた明治天皇の御製。「はらから」は兄弟・同胞の意。現代語に意訳すると「四方の海を みな同胞だと思うこの時代に何故 波風は立ち騒いでいるのだろうか」といった意味となる。  御前会議(天皇・閣僚などが国政の方針について議論する場)において詠まれた作と伝わる。自身の本意とは裏腹に暴力に訴える時勢を止めることの出来ない、無力感が窺える。当時の天皇は『君臨すれども統治せず』という立場に

          個人的百人一首 ①

          雑談⑧

          こんにちは、蜂です。 驚いたことに本アカウントで発表した作品の合計が詩『生きる』で30本目に到達したらしく、光陰矢の如しと実感してる今日この頃です。次は50本投稿目指して邁進していきたいと思います。でも結局のところは、あまり気負わず、地道に詩を書けたら幸せだなあと思います。 と言いつつも、日常的に四六時中 詩のことを考えているかと言うと、そういう訳でもなく創作に行き詰まる日のほうが多くなりつつあります。 これから投稿頻度が少なくなっていく可能性もあるので、そのときは事前に

          詩『生きる』

          甘く酸っぱく色付いた葡萄の実が零れて紫の雨を注ぐように 無意識に蒔かれた種子は みどり色の産声を庭に根付かせる。 朝陽に浮かぶ飛蚊症の影が真白な世界を不完全にするように 言葉や記号の並ぶ紙束は 時間の蟲に喰われ焼け野原となる。 雨垂れの夜に稲光に遅れて鼓膜を刺激する雷鳴のように 無気力に泡立つ後悔は 祭りの帰路で眼から吹き溢れる。 夕陽に映える防災無線の夢が真黒な世界に帰宅を促すように 感情や記憶の混ざる脳髄は 制御装置に操られ機能停止となる。 暴れ狂う地面が自転車の銀色