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連作詩①『亡羊の嘆』

布団を捲っても蛻の殻で白髪が数本 卓上に並べられていた
枝分かれした闇路に溶けた貴方を探すため部屋を漁る。
玉石混交の格言集に惑わされ根拠もなく道の梢を目指した
錆びた鎖で繋ぎ留めていただけの羊雲は八つ裂きになった。

食欲が減退していたとか耳にしたようなしていないような
暖かく抱き締めてくれた貴方の腕に嚙みついていたような。

扉を開いても伽藍堂で口紅が数本 鏡台に並べられていた
破砕された記憶に揺れる貴方を探すため部屋を漁る。
信憑性のない都市伝説に掻き立てられ意味もなく道の梢を目指した
運命という名の首輪で軽々しく縛り付けていただけの羊雲は燃えた。

耳鳴りが酷いとか口にしていたようなしていないような
眠れるまで馬鹿話に付き合ってくれた貴方を無下にしていたような。

選択次第で世界は変わると誰かが言った
点滅信号が僕を急かすように頷いた。

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