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渡航危険レベル1の地域に行ったらこうなった

皆さんは2019年に行われていた香港のデモを覚えているでしょうか。
私はそのデモ真っ最中の2019年8月に香港に1週間弱滞在し、現地を見てきました。当時の危険レベルは1(注意してください)でした。

今更ながら、当時の現地がどうだったのかいくつかに分けて紹介していきます。
ニュース報道では語られない、一般市民目線ではどうだったのか。

※当記事は渡航制限地域への移動・旅行を推奨するものではありません。また渡航禁止や自粛でなくとも、行く場合は自己責任です。

現在の渡航制限情報(外務省Webより)
地球規模で見れば多くが渡航注意の危険地帯です

8月は膠着状態にあった時期

香港デモは2019年前期と2019年後半から2020年にかけての後期に大きく分けられ、その間となる8月は今となって考えれば比較的小康状態の時期でした。

私たちが到着する数日前に国際空港がデモ隊に占拠される事件があり、全便欠航していたりと、渡航できるか不透明でした。デモの内容の是非と関係なくすれば、香港政府(中国側)が空港警備を厳重化したため、私たちは無事香港に到着できました。

私たちは現地の知人の案内を受けて過ごすことを期待していましたが、諸事情で知人は動けなくなったので市内ビジネスホテルを拠点にあくまで旅行として過ごしました。

市内の生活

小康状態だったこともあり、市民生活からはデモの影響はほとんど感じられないほどでした。
そもそもデモが半分違法の扱いでもあったこともあり、日中は少なくとも全くデモの影もありません。

一方で痕跡は至るところにあります。例えば街中の至るところにデモのビラがびっしりと貼られていました。
ビラの内容は政府の残虐性を示すもの、連帯を求めるものなど。A4サイズくらいのビラが歩道橋や地下鉄駅前に大量に貼られており、異様な雰囲気を漂わせていました。

そういったもの以外は、デモがあるのか無いのかすら分からないくらいいつもの香港で、飲食店、商業施設、観光地など通常通り機能しています。
公共施設跡を改装したような小規模なショッピング施設から、大規模なショッピングモールに至るまで、営業は通常通りで何も変化はありません。

夜は公園で大人たちが壁登りに興じていたり、夜景を撮影していたりと、平和そのものの光景です。
通りひとつ超えれば大規模なデモが連日実施されているにも関わらず、通りから外れればまるで別世界。デモは特定の地点でのみ、比較的秩序だって行われていて、暴動やテロのようなものではありませんでした。

ディズニーランド

いつもと違う点としては、ディズニーランドがものすごく空いていたことです。
香港ディズニーランドといえば、スタッフにやる気がないことで有名ですが(日本のキャストが本気すぎるだけとも)いずれにしてもそれも含めていつも通り。
デモの雰囲気はまるでなし。通常の運営をしていました。

ところが客が全くいない。
香港ディズニーには日本やアメリカのように巨大な城がありません(今は改装され巨大化された)でした。
そしてそのなけなしの小さな城が巨大化のために改装されており存在せず、ARで見るだけという何とも肩透かしの状況です。

世界最小パーク、スタッフやる気なし、城なし、デモあり!という、観光客をお断りするすべての要素を詰め込んだ状態だったので、8月のバカンスシーズンという最も混むであろう時期にも関わらず、パークは列なし、乗り物乗り放題の状況に。
香港では数少ない絶叫系アトラクションであるスペースマウンテンは貸し切りかというくらい乗りまくりました。

特定のキャラクターとのグリーティングには列ができたものの、キャストもキャラクターも会いたい放題です。
しかしさすがはディズニーランド。このような状況下でも並ばないだけで客はそれなりにいて、日本のバブル期の失敗遊園地よりも多くの人がいました。地元民はラッキーと思っていたとのことで、シンセンあるいは地元民にとっては通いやすい時期だったのかもしれません。

国境でデモに巻き込まれた

香港は国ではないものの中国本土と違う統治がなされているということで、一応国境らしきものと検問所があります。
少なくとも中国とベトナムの国境よりも色々としっかりとしていて、さながら外国に渡る気分になります。

香港はマカオと直接結ぶ巨大な海上橋が出来て以降、高速路線バスで簡単にマカオと往復できるようになりました。
簡単にとは言いますが、出入国審査相当のものが必要。それらはバスターミナルにあり、そこはそこらへんの国際空港やフェリーターミナルより巨大で立派な建造物です。

マカオに行く理由も予定もなかったのですが、香港での予定も無くなったのでとりあえずマカオへ。
出発した昼は何事もなかったのですが、マカオから帰ってくると喧騒に包まれているではありませんか。

バスから降りた途端に群衆と騒ぎまくる治安要員がいて、すべてが封鎖されていました。
どうやら、デモそのものではなく、デモを行う人間を街に入れまいと、封鎖が行われているようです。

暴動というようなものではなく、ガヤガヤしていること以外は比較的秩序だっていて、日本のラッシュの方が暴力的なのは間違いないくらい平和進行です。
とはいえ、足止めされるとターミナルで寝泊まりすることになりそうだしで、とりあえず封鎖している治安要員に訳を話して説明します。

治安要員も別に衝突しに来ているわけでもないし、そもそも忙しいのか、説明してパスポート見せたら横から通してくれました。
香港はマカオと違って英語が通じるので助かりましたが、もし中国語とポルトガル語オンリーだったらどうなっていたか。

案外ふつう

ニュースでは日々、凄惨な光景やショッキングな表現が目立っていた当時ですが、行ってみれば至って普通でした。もちろん一部にデモの影響を感じたし、そもそも巻き込まれましたがふつうに生活をすることを望めば巻き込まれるほうが難しいくらいです。

逮捕者が出るレベルの大衝突をしている横ではふつうの市民生活が営まれており、どこ吹く風という雰囲気です。

もちろん、そういった危険なデモの場所には身分が保証されない非メディア員や観光客は近づかないようにお触れも出ていたし、私たちも近づかないようにはしていましたが、そこまで大きな危険はありませんでした。

この「ふつう」を実現していたのは、安全にデモをしようと秩序立って運営されたデモ側と、香港を崩壊させないよう生活の安全を守ろうとした香港政府の努力によるものです。
その点、軍事クーデターや革命、発展途上国の問答無用の衝突とは訳が違うようでした。

国によっては、平時ですら香港デモ時よりも危険ということも沢山あります。
住人の治安が高いレベルの国や地域は、こういった時に差が出るのかもしれません。


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