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【映画レビュー/ネタバレ】REMEMBER―本当の被害者は誰なのか。




― 本日の映画 ―
REMEMBER(手紙は覚えている)


この映画をみるきっかけになったのは

ナチスという言葉が紹介文にあったからです。


戦争を題材にした映画って気持ちが重たくなるイメージで

失礼かもしれませんが見るのを拒んでいました。


今回自粛期間があって、時間もあったので

これを機に思い切って見てみようと。


それが大はまりでした!


結末も相まって、見返したほど面白かったです。

今日もレビューしていきます!!

あらすじ・キャスト監督


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☞あらすじ

最愛の妻ルースが死んだ。だが、90歳のゼヴはそれすら覚えていられない程もの忘れがひどくなった。ある日彼は友人のマックスから1通の手紙を託される。「覚えているか?ルース亡き後、誓ったことを。君が忘れても大丈夫なように、全てを手紙に書いた。その約束を果たしてほしい―」2人はアウシュヴィッツ収容所の生存者で、大切な家族をナチスの兵士に殺されていた。そしてその兵士は身分を偽り、今も生きているという。犯人の名は“ルディ・コランダー”。容疑者は4名まで絞り込まれていた。体が不自由なマックスに代わり、ゼヴはたった1人での復讐を決意し、託された手紙とかすかな記憶だけを頼りに旅立つ。だが、彼を待ち受けていたのは人生を覆すほどの衝撃の真実だった―


☞キャスト監督

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監督:アトム・エゴヤン


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ゼヴ・グットマン役:クリストファー・プラマー
アウシュビッツ収容所からの生還者で、友人マックスと同じくナチスに大切な家族を殺された。
復讐のためマックスからの手紙をもとに”ルディ・コランダー”という容疑者4人を探す旅にでる。

クリストファー・プラマーは、『ゲティ家の身代金』にて第90回アカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、88歳では演技部門でのノミネート最高齢記録を更新した。


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ルディ・コランダー#1役:ブルーノ・ガンツ
容疑者4人のうち1人目の男。

ブルーノ・ガンツは2004年、『ヒトラー 〜最期の12日間〜』では、アドルフ・ヒトラー役のヨーロッパ映画賞男優賞を受賞するなど高い評価を得た。

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ルディ・コランダー#4役:ユルゲン・プロホノフ
容疑者4人のうち4人目の男。

ユルゲン・プロホノフは、1960年代後半から自主制作映画を中心に活躍をはじめ、1975年の『カタリーナ・ブルームの失われた名誉』、1978年『地獄のライトスタッフ』、1981年『U・ボート』のヒットで知名度をあげた。

ルディ・コランダー#2役:ハインツ・リーフェン
容疑者4人のうち2人目の男

マックス・ザッカー役:マーティン・ランドー
アウシュビッツ収容所からの生還者で、ゼヴと同じくナチスに家族を殺されている。

ジョン・コランダー役:ディーン・ノリス
容疑者4人のうち3人目の男の息子


チャールズ・グットマン役:ヘンリー・ツェニー
ゼブの息子



ナチス・ドイツ

本作ではユダヤ人迫害の差別を受け、苦しみ傷ついた人々その後を描いた物語です。

歴史の知識がなくても理解ができる作品になっています。

知っているとより悲惨な状況下にいたことが理解できるかと思うので、当時の歴史をご紹介しますね。

ナチス・ドイツは、アドルフ・ヒトラー及び国家社会主義ドイツ労働者党による支配下の、1933年から1945年までのドイツ国に対する呼称である。
1933年に首相に指名され、1年程度で指導者原理に基づく党と指導者による一極集中独裁指導体制を築いたため、独裁者の典型とされる。その冒険的な外交政策と人種主義に基づく政策は、全世界を第二次世界大戦へと導き、ユダヤ人などに対する組織的な大虐殺「ホロコースト」を引き起こした。敗戦を目前にした1945年4月30日、自ら命を絶った。
1942年1月に開催されたヴァンゼー会議では「ユダヤ人問題の最終的解決策」が策定されたとされる。
何千人もの人が毎日強制収容所に送られ、多くのユダヤ人、ほぼ全ての同性愛者、身体障害者、スラブ人、政治犯、エホバの証人の信者を系統的に虐殺する計画が立てられ実行された。
また、戦争捕虜や占領国国民を含む1,000万人以上が強制労働に従事させられ、劣悪な環境下に置かれた人々が次々と犠牲になった。



残虐な描写なしにホロコーストを描く

※ネタバレ含む


映画内ではグロテスクで目を背けたくなるシーンはほとんどありません。

それでも人類をここまで変えてしまうのかと痛感させられる心理描写。

戦争映画などの重たい雰囲気が苦手な私でも見入ってしまいました。


私はもちろん戦争経験はありません。

経験した彼らにしか分からない当時の痛みは必ずあります。

本作は、その痛みが伝わったかのような錯覚に陥るほど私たちに訴えかけてきます。


マックスの苦しみからの決断

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マックスが最後に語ります。

―――――
ゼヴが殺した男。あの男は「クニベルト・シュトルム」という男。

ゼヴの名も本名じゃない「オットー・ヴァリッシュ」。

あの二人の男は私の家族を殺した。
―――――

マックスはゼヴが自分の家族を殺した張本人であることを知っていました。

なのに本人は認知症を患い同じユダヤ人であると思い込んでいます。

それを知ったマックスの心の中は憤怒、恐怖、嫌悪....どれほどの苦しみだったことでしょう。


ずっと殺したくて、恨んできた相手が目の前にいつでも殺せる姿で現れたこと。

どうしても記憶が戻らないまま最期を迎えてほしくない。

だから、自身が犯してきた罪を思い出させる旅に出すことを決断。



ゼヴの苦しみからの決断

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認知症という設定になっていましたが、解離性健忘の可能性があります。

解離性健忘とは、いわゆる記憶喪失の病症です。

その中でも記憶の失い方には様々ありますが「全般性健忘」が濃厚。

全般性健忘はまれです。これは戦闘を体験した退役軍人、性的暴行の被害者、極度のストレスや葛藤を経験している人で比較的多くみられます。通常は突然発症します。
外傷的体験やストレスになる出来事の直後には健忘が現れないこともあります。数時間ないし数日間、さらに長い期間がかかることもあります。
記憶障害が生じた直後は、混乱しているように見える人もいます。大きな苦痛を感じる人もいます。奇妙なほど無関心になる人もいます。
解離性健忘の人の多くでは、記憶に1つまたは複数の空白期間がみられます。空白期間の長さは、通常は数分から数時間または数日間までですが、数年、数十年、さらには過去の人生すべてを忘れることもあります。大半の患者は、自分の記憶に空白期間があることに気づいていないか、部分的にしか気づいていません。その場合は、記憶がよみがえったり、覚えがないのに自分がしたことの証拠を示されたりして、後になってようやく失われた時間(空白期間)に気づきます。
まれに、極端な解離性健忘を起こした人が突然家を飛び出し、一定期間を戻ってこない場合もあります。その間は、自分が誰なのか(自己同一性)など、それまでの人生の一部または全部を思い出すことができません。


ゼヴは、戦前にピアノの教師があげたピアニストの名前

「メンデルスゾーン(Mendelssohn)」
「マイアベーア(Meyerbeer)」
「モシュコフスキ(Moszkowski)」

この3人はユダヤ系の音楽家です。


このことから、ゼヴはユダヤ人に対し嫌悪感はなかったと推測できます。

おそらく彼もナチス・ドイツ時代の犠牲者で被害者と言わざるおえない。

言葉巧みに操られ、虐殺が正義でかっこいいことなのだと。

それを信じ従っていた。


そして戦争が終わり最愛の妻ができたゼヴは今までの過ちを悔やみ、思い出すことを拒んでいたのではないでしょうか。


だから最後自殺することを選んだのだと。



潜在的に残る後悔の念


ゼヴがもしナチス・ドイツ時代の別の意味での犠牲者なのだとしたら、

容疑者2人目の人物への謝罪は「疑ってすまない」ではないでしょう。


同性愛者というだけで捕虜として捉えていた事実。

自分は許されないことをしてしまったが、誤ることしかできない。


”傷つけて申し訳ない”


どうしようもできない後悔の気持ちがここに現れています。






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