初めておばあちゃんの介護が嫌になった日
夫は知っていた
在宅緩和ケア中のおばあちゃん(姑)の命は残りわずかだと思う。
「人に言えない悪いこともしてきたけど、たおたおは私のすべてを許してくれる、そんな人や...」
人に言えない悪いこと?
聞かないでおこうと決めていたのに、突然夫が電話で私に...
夫はウスウスわかっていたそうだ。
おばあちゃんと出会う前の、もう40年以上も前のことだったが、
思いもかけない内容にショックを受けた。もちろん犯罪ではない。
自分でもビックリしたのだが、正直なところ、
一瞬で大好きなおばあちゃんが嫌いになっていた。
ラブラブの恋人が、ふとした言動や行動で嫌いになってしまうのと同じなのかどうかはわからない。が、あんなに大好きで尊敬していたおばあちゃんに対して「嫌い」という感情が芽生えるなんて!
めまいがした。
介護は待ったなし
昨晩のおばあちゃんはトイレが近かった。
2時間以内に必ず目を覚まして「おしっこ」と訴えた。
ポータブルトイレに必死で座らせながら初めて思った。
「なんで私はこんなことしなければならないんだろう?」
それまでは「たおたお、いつもすまないね~」と言われたくなくて、
笑顔で「大丈夫、大丈夫!気にせんとって」と答えていた。
大好きだから心は辛くなかった。おばあちゃんに家で過ごしてほしかった。
やはり介護は好きな人に対してでないと、心からできないことを自分で知った。
もしも実家の母だったら?
姑とは何でも話せる仲になっている。
亡くなった実家の母のほうが私は気を遣っていて、いつも「いい子」でいた。悩んでいることを打ち明けたことは1度もない。
しかし、もし「人に言えない悪いこと」を実家の母がしたならどう思ったのだろう?
...嬉しくはないけど、それでも受け入れていたと思う。
なんなんだ!?この違いは?血のつながりっていうことなのか?
初めはそう思った。
イヤ、違う。
おばあちゃんが何でも話せる一番心を開いていたひとだっただけに、余計にショックが大きかったのだと思う。
「自分のことは棚に上げて...」と、おばあちゃんを、暫く軽蔑の眼で見てしまった。
朝になって決めたこと
何度もトイレ介助を経て、朝を迎えた。
ベッドの上でスースー寝息をたてているおばあちゃんのやせ細った寝顔を見て思った。
「すべてを忘れよう」
「イヤ、忘れるというよりも、私の心の奥底に沈めよう」
「一生、心の奥底で凍結させて、出さないでおこう!」
そう決めた。
やっぱり、私の一番の味方である大好きなおばあちゃんだもの!!
何事もなかったように、笑顔でおばあちゃんに接することにしよう。
もうそんなに長くはない、大切な時間だから...
生きていると色々ある。
消え去りはしないけど、心の奥底に凍結しているものが一つや二つ、あってもいいんじゃないかな?
今おばあちゃんに、好きな煎茶を少し冷まして飲んでもらった。
「たおたお、いつも本当にありがとうね…」
私はちょっと泣きながら、
「大丈夫、大丈夫(^^)」と答えた。
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